ジョブ型雇用の基本
2022/01/15
ジョブ型雇用が注目されている理由
イノベーション、経営の高度化に対応すべく専門家を確保する必要性が語られています。
専門職の確保の方法として、ジョブ型雇用が注目を集めています。
メンバーシップ型雇用(日本型企業)
1 本質
(1)会社は強い支配権をもって、社員の職種の変更を命じる。
(2)会社は、新卒社員を採用し、いろいろな職種を経験させて育てる。
2 温情主義
(1)会社は、定年まで社員の雇用を保障する。
(2)会社は、年功序列での給与アップを保障する。
3 給与水準
社員の給与水準は、会社独自の枠組みで決める。
4 社員の入れ替わりと、ベテラン社員
(1)社員の入れ替わりがなく、経験豊富なベテラン社員が育つのには適している。
(2)社員は、愛社精神を抱きやすい。
5 採用権限
人事部が採用を一括で行う。
ジョブ型雇用
1 本質
(1)仕事内容を契約時に明確に定めておく。職種の変更は本人の希望に基づく。
(2)中途入社を前提として、会社は経営戦略に応じて、必要な能力を持つ社員を採用する。
2 給与水準
社員の給与水準は、市場原理で決まる。
3 福利厚生
社員の入れ替わりが前提となります。会社は、社員をつなぎとめるべく、社員が働き続けることを希望する職場環境、新しい人が入社したいと思う職場環境づくりが必要です。
4 採用権限
採用は基本的には欠員の補充である。したがって、現場が採用権限を持ちます。
ジョブ型雇用が注目されている理由は何か。
(1)会社は経営戦略に応じて、必要な能力を持つ専門家を採用する必要性があるからです。
(2)その解決策としてジョブ型雇用が注目されています。しかし、日本では、終身雇用が前提となっています。ジョブ型雇用を採用したからといって、優秀な人材を採用できるとは限りません。
また、少子高齢者(労働者人口の減少)や、グローバル化の対策になるわけではありません。
ジョブ型雇用では、難しい評価基準が必要になるか。
(1)ジョブ型では、市場原理にて仕事の給与が決まります。その後の社員の成績は、その仕事を遂行するのに問題があるかどうかだけです。難しい評価基準は必要ありません。
(2)むしろ、メンバーシップ型雇用の方が、評価基準が難しいといえます。同じ仕事をしていても、エリートコース等の社員と、それを外れた社員では給与が異なってきます。実際の仕事とは関係なく、将来性等を含めた会社独自の評価基準を作る必要があるからです。
人事査定にジョブ型雇用の考え方を応用できるか。
(1)そもそも、ジョブ型雇用は、人事査定と直結する制度ではありません。
(2)専門家を社内で育てるという観点から、モチベーション策として検討する余地はあるかもしれません。
ジョブ型雇用をするには、再教育(リカレント教育)が必要か。
(1)ジョブ型雇用の場合には、社員を教育するために投資するではなく、専門家を採用するための人件費として投資します。
(2)社員のスキルアップは、自分の負担で勉強して、職種のアップによって回収することになります。
ジョブ型雇用の方が優れているのか。
(1)ジョブ型雇用の方が優れているとはいえません。
(2)ジョブ型雇用は昔からある雇用形態です。高度経済成長期には、「メンバーシップ型雇用(日本型企業)の方が優れている。」と言われていたこともあります。
つまり、日本企業で導入するには、日本独自の形にカスタマイズする必要があります。
全社員をジョブ型雇用にした方がよいのか。
(1)全社員にジョブ型採用をすることは、目的(専門家を採用する)と手段が一致していないともいえます。
(2)また、単純にジョブ型雇用が優れているわけではなく、職種によって採用を分けるのがベストでしょう。
ジョブ型雇用で採用すべき専門家とは何か。
(1)以下は私見です。
(2)①外注するよりも、社員として雇用するメリットがでる職種、②今までの方法では育成できない高度なレベルの知識、経験が必要な職種、③将来、経営課題となっている分野の職種となります。
(2)①複雑化する法律規制に対する職種、②ITに対応する職種(複雑なITだけでなく、情報システム部)、③イノベーション(新規事業の立ち上げ)、④採用、⑤社員教育、⑤データサイエンス、⑥事業計画の策定等があげられるでしょう。
ジョブ型雇用の本質は何か。
以下は、私見による回答になります。
(1)会社独自のやり方を排除し、中途採用した専門職に依頼しやすい形に、仕事のやり方・仕事の内容を明確化・区分化させる必要があります。
(2)職種の変更(異動)は、本人の希望に基づくこと。
(3)給与水準を労働市場に合わせること
(4)経営戦略に応じて、必要な能力を持つ専門家を採用すること。
参考文献
マーサージャパン 編集 「ジョブ型雇用早わかり」
内藤琢磨「ジョブ型人事で人を育てる: 人的資本経営の実践書 」44頁
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