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夕陽ヶ丘法律事務所ブログ

2021/11/12

判例(歩合給の方法で計算した賃金を残業として支払うことについての判例)

問題

(1)「基本給 + 残業代」という形の給与体系とします。残業代の計算方式を、労働時間×割増賃金で計算するのではなく、売上×会社で決めてた計算式で支払うことは有効でしょうか。

(2)売上×会社で決めてた計算式で計算されるとは、売上に比例して一定割合の金額を定めるののであり、一般的には歩合給そのもです。
(3)「上記の賃金体系は、固定給+歩合給を支払払っているだけで、残業代を全く支払っていないと計算されるべきではないか。」という考え方もありえます。
(4)「残業代の計算が独自の計算式で計算されていても残業代の支払いとしては有効である。」「あくまで、法律上の計算式で計算し直した場合に不足がある場合にはその不足額を支払えば足りる。」という考え方もあるようでしょう。

最判平成29年2月28日(民集255号1頁、判タ1436号85頁)

(1)最判平成29年2月28日(民集255号1頁、判タ1436号85頁)は、売上高等の一定割合に相当する金額を残業手当相当の支払いとする規定は一律に無効とはいえない。通常の労働時間の賃金に当たる部分と労働基準法37条の定める割増賃金に当たる部分とを判別することができるか否か等を考慮して、残業代の支払いにあたるかどか、考慮すべきである、と判断しています。
(2)つまり、上記の例の給与の残業代の支払いも可能であるかのように読めます。
(3)最判平成30年7月19日(民集259号77頁、判例タイムズ1459号30頁)は、「(固定残業手当を含む)当該手当の支払いが、時間外労働等に対する対価として支払われていたといえるか、については契約の内容(当事者の合意)によって決まること」、「契約の解釈は、契約書等の記載のほか、会社の説明、従業員の勤務内容等その他を考慮して認定されること」を示した判例と言われており、上記の解釈と整合的です。
(4)あくまで、当該手当の支払いが、当事者の合理的解釈(契約の解釈)として、「時間外労働等に対する対価として支払われていた。」と評価できる場合には、残業代の支払いとして、計算して良いことになります。

最判平成30年7月19日(民集259号77頁、判例タイムズ1459号30頁)

https://yuhigaoka-law.com/%e6%ae%8b%e6%a5%ad%e4%bb%a3/%e5%88%a4%e4%be%8b%e3%82%bf%e3%82%a4%e3%83%a0%e3%82%ba%ef%bc%91%ef%bc%94%ef%bc%95%ef%bc%99%e5%8f%b7%ef%bc%93%ef%bc%90%e9%a0%81%e4%bb%a5%e4%b8%8b%ef%bc%88%e5%9b%ba%e5%ae%9a%e6%ae%8b%e6%a5%ad%e3%81%8c/

令和2年3月30日判決(判例タイムズ1746号49頁)

1 結論

 令和2年3月30日判決(判例タイムズ1746号49頁)は、以下 の賃金体系について、残業代の支払いに当たらない、と判断しました。

2 賃金体系

 問題となった賃金設計は以下のとおりです。(なお、実際の事例より簡略化させている。)

支給額 =  基本給等
      +割増賃金
      +歩合給(=対象額A-割増賃金)
      なお、対象額A=売上高等の一定割合に相当する金額

     つまり、実質的な支払額は、基本給等 + 対象額Aとなる。

3 賃金の問題点

(1)問題点としては、残業手当が発生しても、その分だけ歩合給が減る仕組みとなっており、支払額は、対象額A(歩合給の計算式で計算された額)を支払ったのと変わらない、仕組みになっていることです。
(2)令和2年3月30日判決(判例タイムズ1746号49頁)は、「本件賃金規則の定める上記の仕組みは,その実質において,」「元来は歩合給として支払うことが予定されている賃金(対象額A)を,その一部につき名目のみを割増金に置き換えて支払うこととするものというべきである」と評価して、判別要件(明確区分性)、対価性の面からも、残業代の支払いにあたるといえない、と判断しました。

4 判別要件(明確区分性)、対価性

判例タイムズ1459号30頁以下(固定残業が有効になるための要件を示した判例・その解説)

私見

 では、どのような賃金設計にすればよかったのか、私見を述べる。

(1)事例1
 「基本給 + 残業代」という形の給与体系とします。残業代の計算方式を、売上×会社で決めてた計算式で支払うシンプルな形で規定すれば問題にならかかったかもしれません。

 運送業等の場合、労働時間の把握が困難であり、このような賃金設計も必要でしょう。

 もっとも、この形の残業代の支払いついて、裁判所がどのように考えるかについて未確定な部分が多く、賃金体系としてお勧めできるわけではありません。

(2)事例2

 例えば、歩合の比率が売り上げの5%だったのを1%に下げるようして下記のように訂正すればよいと思われます。

支給額 = 固定給
     +固定給の割増賃金
     +歩合給
     +歩合給の割増賃金

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