対話(ダイアログ)
2022/07/03
対話(ダイアログ)
(1)組織におけるコミュニケーションとして、対話(ダイアログ)が注目されています。
(2)対話(ダイアログ)は、立場・意見の対立を前提しながらも、その相違を乗り越えて問題を解決するための話し合いです。
(3)対話についてはいろいろな定義、作法があります。以下は私見です。
対話(ダイアログ)の重要性
(1)組織においては、それぞれの立場・意見の相違が存在します。その相違を克服しなければ組織は前進することができません。
メンバー間の意思伝達の場合にも、送り手と受け手のメンタルモデルの違いによって、齟齬が発生する場合もあります。
これらを本音トークで解決するのが対話です。
対話は技術である。習得には覚悟が必要である。
(1)対話は、意見の対立を明確するものです。双方に対話の技量がなければ、不適切な発言を引き出すことにもなります。
(2)したがって、時間をかけて双方がスキルを磨く必要があります。
対話(ダイアログ)のルール・テクニック
(1) 具体的な解決策の決定を目的とする。
抽象的な解決策は、問題の先送りにしかならない。
(2)責任の所在を議論の対象としないことを明確にする。
(3)お互いの立場・メンタルモデルを確認する。
「なぜ」「なぜ」と聞いて、相手の立場・考え方(メンタルモデル)を確認する。
相手に自分の立場を説明して、自分の努力だけでは課題を解決できないことを説明する。
相手に自分の立場に立ったうえで、どうすればよかったか考えてもらう。
(4)お互いの立場についてネーミングをつけて、その内容を相互に確認する。
(5)お互いの立場・メンタルモデルの違いを前提に具体的な解決策を考える。
(6)人格非難的な発言を禁止する。
対話のスキルアップとして、これらの発言を見つけたら最後に、これらの発言を除いてコミュニケーションすることを確認する。
事例
上司
この文書を会議前に取引先に送ってくれるように頼んだはずです。
しかし、「〇〇さん(部下)は、当日の会議に書類を持っていく」という取り扱いをしましたよね。
事前に文書を送らずに、当日持っていくという取り扱いをしたのはなぜなのでしょうか。
部下
別の文書の件と勘違いしていました。
申し訳ありません。すべて私の責任です。
上司
責任の所在を確認したいのではありません。
例えば、仮に、〇〇さん(部下)が100%悪いとしても、会社としては同じミスを出すわけにはいかないのです。
同じミスをしないために、私の方でできること、周りの方でできること、もちろん、〇〇さん(部下)できることを確認し、それをルール化させたいと思っています。
ルール
(1)具体的な解決策の決定を目的とする。
抽象的な解決策は、問題の先送りにしかならない。
(2)責任の所在を議論の対象としないことを明確にする。
部下
そうおっしゃるのであれば、メモ等に記載して渡してほしかったです。
上司
メモ等に書くという一つの解決策かもしれません。しかし、私もややこしい指示を出すときには、メールで送る等の工夫をしています。
仮に、「書類を送る」という、レベルでメモを残すと、メモだらけになりかえって分かりにくくなると思いませんか。
上司
例えば、会議資料を事前に送るというのはビジネス上の常識です。これを事前に送るということが認識できなかったのでしょうか。
そうであれば、そのことを「〇〇さん(部下)に改めて認識してもらう」ということになると思います。
ルール
お互いの立場・メンタルモデルを確認する。
「なぜ」「なぜ」と聞いて、相手の立場・考え方(メンタルモデル)を確認する
部下
無茶をいうのですが、私は新人です。その立場で、指導してもらうと助かります。
上司
もちろん、私も、〇〇さん(部下)の立場に立って指示する、ことを心掛けたいですす。
しかし、こういう指示の場合には、〇〇する、という形で具体的に提案してもらうとありがたいです。
ルール
具体的な解決策の決定を目的とする。
抽象的な解決策は、問題の先送りにしかならない。
上司
私も新人教育は初めてであり、不慣れな部分があるのは事実です。逆に、〇〇さん(部下)が私の立場だとして、「新人の立場を理解して指導してほしい。」という指摘を受けて、何か行動を変えることは可能でしょうか。
テクニック
お互いの立場・メンタルモデルを確認する。
相手に自分の立場を説明して、自分の努力だけでは課題を解決できないことを説明する。
部下
「相手の気持ちを考えれば、できることは変わる。」と思います。
上司
私としても、〇〇さん(部下)の立場を無視して、指示を出しているわけではないのです。
確かに、私は、「事前に」書類を出してください、とは指示してませんでした。書類を出してください、としか指示してませんでした。
しかし、「事前に」という言葉のやりとりを改善策として考えるのは意味がないと思います。
〇〇さん(部下)さんの立場で、私が、どういう指示だったら、ミスがなかったと思いますか。
テクニック
お互いの立場・メンタルモデルを確認する。
相手に自分の立場に立ったうえで、どうすればよかったか考えてもらう。
部下
そう言われると難しいです。
確かに、私も〇〇さん(上司)から、自分で考えろと常に指示を受けていました。
もちろん、会議の前に、会議事項を整理したのは、会議の事前準備です。
そして、そのときに、〇〇さん(上司)から、この資料を渡すように言われたのであれば、事前に送るという意味だと理解してもよかったと思います。
上司
例えば今回のギャップの原因は以下のことですかね。
私は、新人さんが持っている前提知識についての経験不足がある。
〇〇さん(部下)は、ビジネスの前提レベルにつついての経験不足がある。
お互いの経験不足が原因だと考えますが、どうでしょうか。
テクニック
お互いの立場を入れ替えて、立場・見解の相違を確認する。
ルール
お互いの立場についてネーミングをつけて、その内容を相互に確認する。
上司
経験則の問題であれば、経験を積めばお互いのコミュニケーションのロスもなくなるかもしれません。
その他に、今回のミスの大前提として、資料の準備が遅れたというのもあると思います。
事前にやっていれば、誰かが気づいた可能性が高いです。
部下
そうですね。
ルール
お互いの立場・メンタルモデルの違いを前提に具体的な解決策を考える。
上司
最後に一つだけお願いしてもいいでしょうか。
〇〇さん(部下)の「相手の気持ちを考えれば、できることは変わる。」という言葉には、私が人の気持ちを考えられない人というニュアンスの言葉を含んでいます。
これは、人格非難的なニュアンスを含みますので、対話では使用を禁止されています。
この言葉を使わずにコミュニケーションをする手段を考えてほしいです。
部下
そんなつもりで言った言葉ではないのですが。
上司
それはもちろん分かっています。
しかし、そのような言葉が本音トークの障害になることは理解するとともに、そのような言葉を使わずに表現する能力をつけてもらいたいと思います。
部下
はい。
ルール
人格非難的な発言を禁止する。
対話のスキルアップとして、これらの発言を見つけたら最後に、これらの発言を除いてコミュニケーションすることを確認する。
参考
小田理一郎 「マンガでやさしくわかる学習する組織」188頁以下
抽象論ではあるが、対話を理解する上でのヒントが記載されている。
田村 次朗 、 隅田 浩司 「リーダーシップを鍛える「対話学」のすゝめ: 誰も知らない対話力の秘密」64頁以下
いろいろな対話のルールが記載されている。対話を理解する上でのヒントが記載されている。
中村和彦「「組織開発」を推進し、成果を上げる マネジャーによる職場づくり 理論と実践」72頁以下
コミニケーションの齟齬に対話の必要性を説明している。
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