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夕陽ヶ丘法律事務所ブログ

ハラスメントの調査(全体的な流れ)

2021/04/05

相談者の話を聞く

(1)相談者からハラスメントの申告があれば、企業としての対応が必要です。
(2)まずは、相談者の話を辛抱強く聞くことが大切です。
(3)カウンセリングのスキルが有効ですが、必須ではありません。話を聞くことで相談者が救われることもあります。
(4)相談者が女性の場合には、聞き取り手も女性を加えましょう。

相談者の落ち度の検討・相手方に対する調査の要否の検討

(1)相談者の落ち度が見つかることもあります。
(2)働きやすい職場を作るためには、メンバー全員の成長が必要です。相談者に落ち度がある場合や、大人としての対応力が求められることもあります。
(3)相談者の落ち度や反省点を説明し、相談者の納得を得るにも、先に相談者の話を聞いて信頼を得ることが必要です。
(4)仮に、相談者の落ち度が大きいと思われるケースでは、その旨を説明して、相手方に対する調査をしないことがありえます。

再発防止策

(1)加害者に落ち度が見つかることを前提としても、会社としての対応としては、以下のものに限られます。
 ①加害者に注意する。
 ②相談者と加害者を場所的にもしくは仕事のオペレーションとして切り離す。
 ③加害者を処分する。

(2)加害者に過失が認められたとしても、会社が加害者を懲戒解雇できるケースはまれです。現実的には、被害者も加害者も会社内に残るケースが多いでしょう。調査によって、両者の関係がさらに悪化することもありえます。この点を踏まえて対応することが必要です。

(3)相談者には 「相談者も加害者も会社内に残るケースが多い」ことを説明します。したがって、調査の進捗や、加害者の落ち度の有無とは関係なく、再発防止をどうするか、相談者と相談する必要があります。

(4)例えば、加害者に落ち度がない場合でも、「相談者からの要望」として理解して、職場を分ける対応も可能です。

 相談者が、職場について苦情申し立てをしている以上は、それがパワハラにあたるか、セクハラにあたるかは別にして会社としての対応することが必要です。

相談者の欠勤と病院の証明

(1)相談者が体調を崩し、欠勤することがあります。
 この場合には、会社としては欠勤理由を確認するためにも、相談者に医師の診察を受けて診断書を出してもらうようにお願いします。
(2)その際には、医師より以下のことも聞いてもらいましょう。
 ①病名、具体的な症状は何か。
 ②短時間勤務なら可能なのか、就労不能なのか。就労制限の程度はどの程度か。
 ③相談者が働き続けるとして、会社として配慮すべきことは何か。
 ④復職はいつ頃になるのか。

相談者の欠勤と傷病手当

(1)相談者が体調を崩し、欠勤することがあります。
(2)会社としては、まずは、健康保険の傷病手当の手続を検討します。
 傷病手当は、業務とは関係ない怪我に対する保障です。
 治療費は本人負担となります。(例えば、健康保険の本人負担が3割なら3割負担となります。)
 休業補償もありますが、下記の労災申請よりは金額は低くなります。

(3)相談者本人が希望すれば、次に、労災の申請もします。
 労災は、業務とは関係ある怪我に対する保障です。
 治療費の本人負担はありません。
 休業補償だけでなく、後遺症の補償もあります。
 精神疾患を原因とする労災の申請は、ハードルが高く、認定に時間もかかります。
 会社としては、労災(業務とは関係ある怪我)にあたるのか、調査の上で会社としての意見書を出すことになります。

相談者の出勤

(1)相談者が体調を崩しながらも、出勤を続ける場合もあります。
(2)相談者が、精神疾患を抱えている状態では、状態を悪化させることにもなります。しかし、相談者を欠勤させれば、給与の補償をどうするかも問題となります。
(3)判例では、相談者がうつ病にかかっていることを知りながら管理職が適切な対応をせずに相談者が自殺したケースで、事業主の責任を認めた判例もあります。
(4)相談者が出社を希望する場合、合理的な理由がない限り、会社として出社停止を命じられません。もっとも、相談者の体調を考慮して医師への受診とその報告をさせること命じることまでは許されます。
(5)相談者の体調不良を感知した場合には、会社には、相談者の体調等を管理する義務があります。

 この段階では、弁護士等への相談が必要です。

直接攻撃方

(1)例えば、結婚している上司が、未婚の部下を食事に誘うようなケースや、ある上司が特定の部下への指導が行き過ぎているようなケースでは、事実確認をすれば、加害者から見て相談者が誰かが分かってしまいます。
(2)このようなケースでは、相談者に対し調査する上でのデメリットを説明する必要があります。
  相談者には 「相談者も加害者も会社内に残るケースが多いこと」「加害者に相談者が会社に申告したことが判明すること」を説明します。
(3)仮に相談者が調査の断念を申し出た場合であっても、会社としては、再発防止策として「相談者と加害者を場所的にもしくは仕事のオペレーションとして切り離す。」等の対応を検討することになります。

(4)加害者には、「相談者が調査を申し出たことにについて不利益に扱ってはならないこと。」「相談者が調査を申し出たことを第三者に漏洩してはならないこと。」「憶測が飛び交えば社内で混乱が生じること。」「したがって、同義務に違反した場合にはヒアリング対象者が処分の対象にあること。」を説明して、守秘義務を負わせる必要があります。

迷惑加害者型

(1)例えば、誰に関しても威圧的に話す上司や、セクハラ発言を繰り返す上司のケースでは、相談者(被害者)独自の体験を調査対象にするか検討する必要があります。

(2)被害者の申し出を聞いて、職場全体に、パワハラ・セクハラの調査文書を送って、これによって発覚したということで、相談者の申告を伏せて調査することも検討します。

(3)その場合には時間がかかってしまうために、「相談者と加害者を場所的にもしくは仕事のオペレーションとして切り離す。」等の対応が劣後してしまいます。
 この点は、相談者と調査手法を相談することになります。

聞き取り調査

 調査方針にしたがって、加害者、第三者にも話を聞くことになります。
 二人程度の調査員が一組になって一人一人を呼び出して細かく聞くことです。客観的に聞き出すことは難しい作業です。一人の調査員で調査するのは難しいです。
 ヒアリングすれば、事実関係はある程度分かることが多いでしょう。

 ヒアリング対象者には、録音していることを告げながら録音します。同時にもちろん、ヒアリングした結果についても文章化し、後日、その文書をヒアリング対象者に見てもらって間違いがないかをチエックしてもらいます。

 ヒアリング対象者には、「(相談者の)捜しをしてはならないこと。調査及び調査に協力したことについての守秘義務を負うこと。」「事実が判明していないにも関わらず、犯人捜し等が始まれば、社内で混乱が生じること。」「したがって、同義務に違反した場合にはヒアリング対象者が処分の対象にあること。」を説明します。

加害者の弁明の機会

(1)セクハラ・パワハラを認定されれば、加害者とされる人は大きな不利益を受けます。
(2)会社としては、セクハラ・パワハラを認定する前に、加害者に対し会社としての調査結果を伝えて、反論の機会を設けるようにします。
(3)この段階では、加害者もセクハラ・パワハラ認定されうることを理解していると思われます。加害者が相談者に圧力をかけないように注意・警告する必要があります。

 加害者には、「被害者と連絡を取らないこと」「第三者に対し、被害者からハラスメントの申告があったことを話さないこと」を注意します。

調査後の対応

(1)調査結果の報告

 パワハラ・セクハラの調査結果について、相談者に告げます。

(2)働きやすい職場を作るための相談

 パワハラ・セクハラ認定とは別に、相談者にとって働きやすい職場について相談することになります。

 相談者が、職場について苦情申し立てをしている以上は、それがパワハラにあたるか、セクハラにあたるかは別にして会社としての対応することが必要です。

(3)加害者の処分

 パワハラ・セクハラ認定された場合には、加害者の処分を検討します。

 特に、加害者の処分については、重すぎる処分をすると、加害者側から訴えれる可能性があります。

 加害者の処分を決める際にも、弁護士に相談しましょう。

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