【迅速な特定から法的措置への移行が不可欠であるため、今すぐ弁護士へご相談ください】相手が海外へ住民票を移してしまうと、訴状などの法的書類の送達に時間がかかるなど実務上のハードルが上がります。泣き寝入りを避けて確実に損害賠償金を回収するためには、発信者情報開示請求の完了後、一刻も早く弁護士を通じて法的な保全手続きや損害賠償請求を進めることが極めて重要です。
ネット上の誹謗中傷や風評被害において、発信者情報開示請求によってようやく加害者の身元が特定できたとします。これから損害賠償請求を行うというタイミングで、加害者から「海外に引っ越すから払えない」「もう日本にはいない」などと告げられたり、実際に住民票を海外に移して逃亡を図ろうとしたりするケースがあります。
被害者としては、「せっかく特定したのに、海外に行かれたら泣き寝入りするしかないのだろうか」と非常に不安になるでしょう。
しかし、法律上、海外へ引っ越すこと自体で借金や損害賠償義務が消えるわけではありません。また、日本国内にある財産を差し押さえるための法的な防衛策もきちんと用意されています。ここでは、加害者が海外逃亡を図った場合の具体的な法的リスク、そして被害者が泣き寝入りを避けるために今すぐ講じるべき対策について詳しく解説します。
海外逃亡しても損害賠償義務は消えない
まず大前提として、加害者が日本から海外へ転居したとしても、過去に犯したネット上の誹謗中傷による不法行為の責任が消滅することはありません。
損害賠償請求権の消滅時効(通常は損害および加害者を知った時から3年、不法行為の時から20年)が完成していない限り、加害者がどこに住んでいようと請求する権利は法的に存在し続けます。
ただし、現実問題として、相手が海外に居住してしまうと以下のような実務上のハードルが跳ね上がります。
- 日本の裁判所から送達される書類が海外に届きにくくなり、裁判の進行が遅れる
- 相手の海外での居場所や勤務先を特定することが困難になる
- 日本で勝訴判決を得たとしても、外国で強制執行(財産の差し押さえ)を行うには相手国の法律や国際条約に基づく複雑な手続きが必要となる
つまり、「海外に逃げ得」を許さないためには、相手が日本国内に財産を保有している段階、あるいは海外へ本格的に逃亡する前のタイミングでいかに素早く差押えの準備を完了させるかが勝負の分かれ目となります。
逃亡を防ぐ最強の手段「仮差押え」とは
加害者が「海外に引っ越す」「財産を隠す・処分する」といった動きを見せたとき、弁護士が最も強力な武器として活用するのが「仮差押え(かりささおえ)」という裁判所の手続きです。
通常の裁判と何が違うのか
通常の損害賠償請求訴訟は、訴状を提出してから判決が出るまでに数ヶ月から半年、場合によってはそれ以上の時間がかかります。その間に加害者が資産を海外送金したり、預金を全額引き出して隠したり、日本国内の不動産を売り払ってしまったりすると、いざ勝訴判決を取っても「差し押さえる財産が何もない(ない袖は振れない状態)」になってしまいます。
これを防ぐための緊急避難措置が「仮差押え」です。
仮差押えのメリット
- 財産の処分禁止: 裁判所の命令により、加害者は日本国内の預金口座からの引き出しや、保有不動産の売却などが一切できなくなります。
- スピーディーな発令: 通常の裁判よりも短い期間で決定が出るため、相手の逃亡準備に先手を打つことができます。
- 心理的プレッシャー: 資産が凍結されることで、加害者は逃げ続けることの重大な不利益を直感し、和解や任意の賠償金支払いに応じるケースが多々あります。
この仮差押えを行うためには、「加害者が財産を隠そうとしている、あるいは海外へ逃亡しようとしている緊急性(保全の必要性)」を裁判所に疎明(証明の簡易版)する必要があります。そのため、相手の言動(「海外に引っ越すから払わない」といったメールやメッセージ、SNSの書き込みなど)の証拠をしっかりと保存しておくことが極めて重要です。
加害者の国内資産を特定する方法
仮差押えやその後の強制執行を成功させるためには、加害者が日本国内にどのような財産を持っているかを把握しなければなりません。相手が引っ越し準備を進めている中でも、以下のような方法で財産を調査・特定することが可能です。
- 発信者情報開示請求の過程で得た情報: プロバイダ等に対する開示請求のなかで、登録されている氏名、住所、連絡先、場合によっては勤務先や口座情報のヒントが得られていることがあります。
- 預金口座の特定(弁護士会照会など): 加害者が利用していそうな金融機関の見当がついている場合、弁護士会を通じた照会手続き(23条照会)を利用して口座情報を調査できるケースがあります。
- 勤務先からの給与差し押さえ: まだ日本国内の企業に勤めているのであれば、退職前や海外転出前であれば給与債権を仮差押え・差し押さえることが非常に効果的です。
特に「給与」や「預貯金」は、加害者の生活に直結するため、差し押さえられた場合のダメージが大きく、早期の解決金回収につながりやすい特徴があります。
もし本当に海外へ逃亡してしまった場合の対応
万が一、仮差押えが間に合わず、加害者が海外へ移住してしまった場合でも、法的な手段が完全に絶たれるわけではありません。
日本で裁判を起こし、相手の海外の住所へ書類を送達(国際郵便や外交ルートを利用)して判決を得ることができれば、国際的な枠組みを利用して相手の居住国の財産に執行を試みる道も理論上は存在します。しかし、費用対効果や言語・法律の違いを考慮すると、時間的・金銭的コストが非常に大きくなってしまいます。
だからこそ、「相手がまだ日本にいるうちにいかに素早く動くか」がすべての鍵を握ります。
ネット誹謗中傷の加害者が「海外に逃げる」とほのめかしたり、実際にそのような兆候が見られたりした場合は、タイムリミットが迫っているサインです。一刻も早く、ネット被害や強制執行の実務に精通した弁護士へ相談し、緊急の仮差押えを含めた保全処置を検討してください。
夕陽ヶ丘法律事務所では、加害者の特定から、迅速な財産保全(仮差押え)、そして損害賠償金の回収に至るまで、ワンストップで強力にサポートいたします。「逃げ得」を絶対に許さないために、どうぞお早めにご相談ください。