【具体的な対処法】表現の自由の範囲を超える悪質な誹謗中傷に対しては、プロバイダ責任制限法に基づく口コミ削除の仮処分申請や、IPアドレスの開示請求を行って発信者を特定し、慰謝料請求を行うことが可能です。
インターネット上の口コミサイトやGoogleマップ、SNSなどで、病院やクリニックに対して「ヤブ医者」、店舗やビジネスに対して「詐欺師」といった心無い書き込みをされる被害が後を絶ちません。
このような誹謗中傷を受けたとき、経営者や医師の多くは「これは単なる個人の感想なのだろうか」「警察や弁護士に相談しても相手にされないのではないか」と悩まれます。
結論からお伝えすると、「ヤブ医者」「詐欺師」という表現は、単なる悪口として片付けられないケースが多く、法的な名誉毀損や侮辱に該当する可能性が高いです。
この記事では、主観的な「意見や感想」と、法律で処罰・賠償の対象となる「名誉毀損」の境目がどこにあるのか、具体的な判断基準や対処法を法律の観点から分かりやすく解説します。
1. 「ヤブ医者」「詐欺師」と言われたときの法的リスク
インターネット上に書き込まれた言葉が法的にどのような責任を問えるのか、主に「名誉毀損」と「侮辱罪」の2つの側面から見ていきます。
名誉毀損(民事上の損害賠償・刑事上の名誉毀損罪)
刑法第230条における名誉毀損罪は、「公然と事実を指摘し、人の社会的評価を低下させた場合」に成立します。
ここで問題になるのが、「ヤブ医者」「詐欺師」という言葉が単なる「事実の摘示」にあたるのかどうかという点です。
単に「気に入らない」「嫌いだ」という感情の吐露であれば名誉毀損には直結しませんが、「この医者はまともに診察もせず薬を大量に出すだけだ(ヤブ医者)」「この業者は契約金を持ち逃げする(詐欺師)」といった、具体的な事実を想起させる文脈や背景が含まれている場合、社会的評価を低下させる「事実の摘示」とみなされます。
侮辱罪(厳罰化された刑事罰)
事実を具体的に示さなくても、公然と人を侮辱した場合には侮辱罪(刑法第231条)が成立します。
近年の法改正により侮辱罪は厳罰化されており、「ヤブ医者」「詐欺師」といった強い侮蔑的表現をネット上で不特定多数に向けて発信した場合、立派な刑事事件の対象となり得ます。
「ネット上の悪口だから警察は動かない」というのは過去の話であり、現在では侮辱罪や名誉毀損での立件・検挙事例も数多く存在します。
2. 意見・感想と名誉毀損の境目を見分けるポイント
裁判や法律実務において、「これは表現の自由の範囲内の意見・感想(論評)なのか」、それとも「違法な名誉毀損なのか」は、以下のポイントを総合的に考慮して判断されます。
- 基礎となる事実の有無と真実性: 書き込みの前提となっている事実が本当にあるのか、あるいは全くの虚偽や誇大なゆがめ方をしていないか。
- 表現の目的・公益性: 社会的な警告や公益を図る目的ではなく、単なる嫌がらせや鬱憤晴らし、営業妨害の意図がないか。
- 言葉の攻撃性・相当性: 人格を攻撃するような過激な表現(「詐欺師」「犯罪者」「悪徳」など)が使われていないか。
「単なる感想」が違法になる瞬間
例えば、「施術の料金が少し高いと感じた(個人の主観的な感想)」という書き込みであれば、表現の自由として保護される余地があります。
しかし、「カウンセリングと称して高額なサプリメントをだまし取るように売りつけられた。まさに詐欺師だ」という書き込みはどうでしょうか。
これは、実際に詐欺行為を行っているという客観的な事実(またはそれに近い事実)を告げるものであり、客観的信用を著しく傷つけるため、「意見や感想」の枠を逸脱した違法な名誉毀損と判断される可能性が極めて高くなります。
3. 医療機関や事業者に対する誹謗中傷の特殊性
「ヤブ医者」「詐欺師」といった誹謗中傷は、特に医療機関(クリニック、歯科、病院)や、美容・スクール・各種サービス業の事業者にとって致命的なダメージを与えます。
- 新規顧客・患者の激減: Googleマップのレビューや口コミサイトの評価は、来店・来院前のユーザーが必ずと言っていいほど確認します。そこに「ヤブ医者」「詐欺師」と書かれていれば、信頼が失墜し、売上や患者数が急減します。
- スタッフの士気低下: 日夜真面目に業務に取り組んでいるスタッフや医師・技術者が不当な中傷に晒されることで、職場環境が悪化し、離職につながるリスクもあります。
- 悪質クレームの常態化: 一度このような書き込みを放置すると、別のクレーマーが次々と便乗し、さらにエスカレートした誹謗中傷の標的になるおそれがあります。
事業を守るためには、「たかがネットの書き込み」と放置せず、早期に法的手段を講じることが不可欠です。
4. 「ヤブ医者」「詐欺師」と書き込まれたときの正しい対処法
もしご自身の医院やビジネス、あるいはご自身個人がそのような誹謗中傷の被害に遭った場合、以下の手順で冷静かつ迅速に対処しましょう。
ステップ1:証拠の保全(スクショ保存)
投稿者は後から自分の都合が悪くなると、書き込みを削除したりアカウントを非公開にしたりして証拠隠滅を図ることがよくあります。
発見した段階で、日付、URL、投稿内容、アカウント名などが一目で分かるようにスクリーンショットや画面保存(PDF化など)を行ってください。
URLやタイムスタンプが欠けていると、後の法律手続きで証拠として採用されない場合があるため注意が必要です。
ステップ2:プラットフォームや管理者への削除依頼
Googleマップ、各種口コミサイト、SNSなどの運営会社、またはサーバーの管理者に対して、利用規約違反や権利侵害(名誉毀損)を理由に削除依頼を行います。
プラットフォームによっては独自の基準で削除を拒否されるケースも多々ありますが、弁護士名義で正式な削除要請や仮処分申し立てを行うことで、スムーズに削除が認められる可能性が飛躍的に高まります。
ステップ3:発信者情報開示請求(犯人の特定)
「誰がこのような嘘を書き込んだのか特定して責任を追及したい」「損害賠償を請求したい」という場合は、発信者情報開示請求を行います。
プロバイダ責任制限法に基づき、サイト運営者(経由プロバイダなど)に対してIPアドレスや氏名・住所の開示を求めます。
この手続きには裁判所を通した法的手続き(仮処分や訴訟)が必要となるため、誹謗中傷対策に精通した弁護士への依頼が必須となります。
ステップ4:損害賠償請求・刑事告訴
発信者が特定できた段階で、弁護士を通じて精神的苦痛に対する慰謝料や弁護士費用、営業損害についての損害賠償請求(示談交渉または民事訴訟)を行います。
悪質なケースでは、警察に対して刑事告訴を行い、刑事責任(罰金刑や前科)を追及することも選択肢に入ります。
5. まとめ:「ヤブ医者」「詐欺師」の誹謗中傷は弁護士にご相談を
「ヤブ医者」「詐欺師」といった表現は、単なる愚痴や意見・感想ではなく、医療従事者や事業者の社会的信用を地に落とす悪質な名誉毀損・侮辱行為です。
放置しておくと風評被害が拡大し、取り返しのつかない損失につながるおそれがあります。
夕陽ヶ丘法律事務所では、ネット上の悪質な口コミ・誹謗中傷の削除から、発信者の特定(IP特定)、損害賠償請求に至るまでワンストップでサポートしております。
「こんな書き込みでも削除できる?」「犯人を特定して賠償金を請求したい」とお悩みの方は、アクセスログが消去される前に、ぜひ当事務所の無料相談をご利用ください。