名誉毀損にならない例外「真実性の抗弁」とは?公共性・公益目的の要件

【本記事の監修者】
弁護士 井上 正人(大阪弁護士会所属 / 登録番号:第43449号 / 夕陽ヶ丘法律事務所 代表弁護士)
※本記事は、ネット上の誹謗中傷削除・発信者情報開示命令(IPアドレス特定)・仮処分裁判実務に基づき、プロバイダ責任制限法および最新の判例に沿ってわかりやすく解説しています。

Q ネット上の悪口や批判は「本当のこと」なら書いても名誉毀損になりませんか?真実性の抗弁の条件を知りたい
A 【真実性の抗弁が認められる3つの厳格な要件】他人の社会的評価を下げる投稿であっても、「公共の利害に関する事項」「専ら公益を図る目的」「内容が真実であることの証明」の3つをすべて満たす場合は違法性が阻却され、名誉毀損になりません。ただし、私的な事柄や個人攻撃、単なる嫌がらせ目的の場合は真実であっても違法となり、損害賠償請求や発信者情報開示請求の対象になります。
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インターネット上で他人の不祥事や批判的な情報を投稿した際、「これは事実だから名誉毀損にはならない」と考えてしまう方が少なくありません。しかし、どれほど本当のことであっても、表現方法や内容の性質によっては名誉毀損として法的な責任を問われる可能性があります。

一方で、正当な批判や告発まで一律に禁止されてしまうと、社会の健全な監視機能が失われてしまいます。そのため日本の法律では、一定の厳しい条件を満たした場合には、名誉毀損にあたる発言であっても処罰や損害賠償の対象外とする例外規定を設けています。

本記事では、名誉毀損の違法性を阻却する重要な法的概念である「真実性の抗弁」について、3つの成立要件や、万が一真実と完全に証明できない場合の救済ルールである「真実相当性の法理」も含めて分かりやすく解説します。

1. 名誉毀損が成立しても罰せられない「真実性の抗弁」とは

刑法第230条および民法上の不法行為において、公然と事実を指摘して他人の社会的評価を低下させた場合、原則として名誉毀損が成立します。

しかし、刑法第230条の2では、その表現が公共の利益に関するものであり、かつ真実であることが証明された場合には、処罰しない旨が定められています。民事上の損害賠償請求においても、この刑事の考え方がそのまま適用されます。

つまり、真実性の抗弁とは、名誉毀損の形をとっていても、社会的に価値があり、かつ真実である情報を発信した場合には、違法性が阻却されて責任を免れるという仕組みです。

2. 真実性の抗弁が認められるための3つの厳格な要件

真実性の抗弁が認められるためには、投稿者が以下の3つの要件をすべて満たしていることを証明しなければなりません。どれか一つでも欠けている場合、たとえ内容が真実であっても名誉毀損が成立してしまいます。

  • 公共の利害に関する事項であること(公共性)
  • 専ら公益を図る目的であったこと(公益目的)
  • 摘示した事実が真実であること(真実性)

それぞれの要件について、具体的な判断基準を詳しく見ていきましょう。

要件①:公共の利害に関する事項であること(公共性)

発信された情報が、社会一般の人々にとって関心がある事柄、あるいは社会的な影響が及ぶ事柄である必要があります。

  • 政治家や行政機関の不正、企業の不祥事やコンプライアンス違反
  • 犯罪行為や社会的影響の大きいトラブル
  • 医師や弁護士など、高い公共性が求められる職業の業務上の重大な過失

一方で、個人の私生活上の秘密や、特定の個人間の私的なトラブル、著名人のスキャンダルであっても単なるゴシップの域を出ないものは、「公共の利害に関する事項」とは認められにくい傾向にあります。

要件②:専ら公益を図る目的であったこと(公益目的)

情報の動機や目的に関する要件です。投稿の主な目的が、社会の利益を守ることや、不特定多数の人々に注意を促すことなど、公共の利益を図ることにあったといえなければなりません。

  • 悪質な詐欺被害を他の人に知らせて注意喚起するため
  • 行政や企業に対して正当な改善を求めるため

これに対し、個人的な恨みを晴らすため、相手を社会的に抹殺するため、あるいは面白半分や嫌がらせ目的で投稿した場合には、「公益目的」があったとは認められません。たとえ内容が真実であっても、動機が私怨である場合は真実性の抗弁の適用外となります。

要件③:摘示した事実が真実であること(真実性)

投稿内容の核心部分が客観的に真実であることを、発信者側が証拠をもって証明しなければなりません。

ここで重要なのは、「細かいディテールに多少の誇張や誤りがあっても、主要な部分が真実であれば足りる」という点です。しかし、根拠のない噂話を「本当だと思う」という主観的な確信だけで投稿した場合は、後述する真実相当性が認められない限り、真実性は否定されます。

3. 完全な真実と証明できなくても救済される「真実相当性の法理」

「事実であると信じて投稿したものの、裁判の段階で100%の証拠を揃えて真実であることを証明できなかった」というケースは少なくありません。

そのような場合でも、最高裁判所の判例(いわゆる「のぞき部屋事件」など)により確立された真実相当性の法理というルールが存在します。

  • 確実な資料・根拠の存在: 投稿者がその時に入手した資料や情報源を精査し、内容が真実であると信じるについて、相当な理由(根拠)があった場合。
  • 裏付け調査の有無: 情報を鵜呑みにせず、事実関係を確認するための相応の努力や調査を行っていた場合。

真実そのものを証明できなくても、「当時の状況下において、真実だと信じるに足りる相当な理由」があったと認められれば、違法性が阻却され、名誉毀損の責任を問われないケースがあります。

ただし、SNSや匿名掲示板で裏付けを取らずに「聞いた話」「おそらく本当」といったレベルの情報を拡散した場合は、真実相当性はほぼ認められません。

4. ネットの告発や口コミでやりがちな危険な誤解

インターネット上では、次のような誤解から誹謗中傷や名誉毀損トラブルに発展する事例が後を絶ちません。

  • 「個人のアカウントや鍵アカだから大丈夫」: 公開範囲が限定されているように見えても、第三者が閲覧可能な状態であれば「公然性」の要件を満たし、名誉毀損になり得ます。
  • 「本当のことを書いただけだから訴えられない」: 前述の通り、公共性や公益目的が認められない私的な悪口や暴露は、真実であっても違法となります。
  • 「匿名だから特定されない」: プロバイダ責任制限法に基づく発信者情報開示請求や、最近の法改正による新たな裁判手続を利用すれば、投稿者のIPアドレスや個人情報は高い確率で特定されます。

店舗の悪評や企業の不正告発などを行う際は、感情に任せて投稿するのではなく、法的な要件を満たしているか慎重に判断する必要があります。

5. ネットの誹謗中傷・風評被害でお困りの際は夕陽ヶ丘法律事務所へ

インターネット上での心ない書き込みや、事実無根の風評被害は、放置しておくと企業や個人の信用を大きく失墜させ、回復しがたい損害につながります。

「真実性の抗弁」を盾にして悪質な投稿を正当化するケースや、逆に自社や自身への誹謗中傷に対して法的措置を検討したい場合、法的な専門知識に基づく正確な判断が不可欠です。

夕陽ヶ丘法律事務所では、Googleマップの悪質な口コミ削除、掲示板・SNSの誹謗中傷対策、発信者特定から損害賠償請求に至るまで、豊富な実績を持つ弁護士がワンストップでサポートいたします。

ひとりで悩まず、まずは一度、当事務所の無料相談(LINE・電話・WEBフォーム)までお気軽にお問い合わせください。

弁護士 井上正人

この記事の監修

弁護士 井上 正人
(いのうえ まさと)

大阪弁護士会所属(登録番号:43449)
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

相続や遺産分割、借金問題、既婚者との男女トラブルなど、日常の不測の事態に直面した皆様の心理的なご負担を少しでも和らげ、円満な解決を導くためのサポートを徹底して行っています。どんな小さなお悩みでも、まずは当事務所の事務スタッフがLINEのチャットにて丁寧にお話をお伺いいたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。

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