【弁護士を通じた法的手続きの重要性】ただし、親が適切な監督を行っていたと主張・立証された場合は責任が阻却されることもあるため、発信者情報開示請求から損害賠償請求までを確実に遂行するには、弁護士へ早期に相談・依頼することが不可欠です。
インターネット上の掲示板やSNSで悪質な誹謗中傷を受けた際、発信者情報開示請求によって特定された加害者が「15歳未満の未成年者」であったというケースが増加しています。
スマートフォンやタブレットの低年齢化に伴い、中学生や小学生が軽い気持ちで行った書き込みが、重大な名誉毀損や信用毀損に発展する事例が後を絶ちません。
このような場合、被害者はまだ資力のない子ども本人ではなく、その親に対して損害賠償を請求できるのでしょうか。
本記事では、夕陽ヶ丘法律事務所の弁護士が、未成年者による誹謗中傷における法的責任と親権者への賠償請求の仕組みについて、実務的な視点から分かりやすく解説します。
未成年者が加害者である場合の法的責任の基本
ネット上で他人を誹謗中傷する行為は、民法上の不法行為(民法709条)に該当します。しかし、加害者が未成年である場合、その年齢や判断能力によって責任の所在が大きく変わります。
日本の民法では、未成年者が他人に損害を与えた場合、その子ども自身が賠償責任を負うかどうかの判断基準として「責任能力」という概念を設けています。
一般的な目安として、15歳未満の子どもは、自分の行為が法律的にどのような結果をもたらすかを正しく弁識する能力(責任能力)を備えていないと判断されることが多く、これを法律上「責任無能力者」と呼びます。
民法714条に基づく「親権者(監督義務者)」の責任
加害者が15歳未満であり「責任無能力者」に該当する場合、子ども自身は被害者に対して直接の損害賠償責任を負いません。
その代わり、民法714条の規定により、その子どもを監督する法的な義務を負う者、すなわち親権者(父親や母親などの監督義務者)が、子どもに代わって損害賠償責任を負うことになります。
これを法律用語で「監督義務者責任」と呼びます。
親権者が責任を免れるケース(免責事由)
親権者であれば常に100%の賠償責任を負うかというと、必ずしもそうではありません。民法714条には、監督義務者が損害賠償責任を免れるための規定(免責事由)も存在します。
具体的には、以下のいずれかの条件を満たしていることを親権者側が証明できた場合、賠償責任が否定される可能性があります。
- 監督義務者として、日頃から十分な注意を払っていたこと
- たとえ通常必要な注意を尽くしていたとしても、損害が発生してしまったであろうと認められること
しかし、実務上、子どもがスマートフォンやパソコンを使ってネット上に違法な誹謗中傷を書き込んだ場合、親が「ネットの利用について一切予見できず、注意しようがなかった」と主張して責任を免れるのは極めて困難です。
端末を与えている以上、日頃の利用状況を把握し、不適切な投稿を防止する監督義務があったとみなされるケースがほとんどです。
15歳以上(概ね15歳〜19歳)の未成年の場合
参考までに、加害者が15歳以上(高校生年代など)の場合はどうなるでしょうか。
裁判例上、15歳以上の未成年者であっても、事理を弁識するに足りる知能(責任能力)を備えていると判断されるのが一般的です。
そのため、15歳以上の未成年者が行った誹謗中傷については、原則として未成年者本人に損害賠償責任が発生します。
もっとも、未成年者本人には十分な財産や収入がないことが多いため、被害者は未成年者本人に対して請求を行うと同時に、監督義務を怠ったとして親権者の責任(民法709条の一般不法行為責任など)を併せて追及することが実務上の常道となっています。
親権者へ損害賠償請求を行う際の流れと注意点
15歳未満の子どもによる誹謗中傷に対して、親権者へ損害賠償を請求する場合、一般的な大人を相手にする裁判や示談交渉とは異なるポイントに注意する必要があります。
1. 発信者情報開示請求の手続きは同様に行う
投稿者が未成年であるかどうかは、プロバイダ等に対する発信者情報開示請求を行い、契約者情報を取得するまで判明しないことがほとんどです。
開示された契約者情報(氏名や住所)が親の名義であった場合、それが親自身の書き込みなのか、同居する子どもの書き込みなのかをまず切り分ける必要があります。
2. 任意交渉(示談交渉)での解決を目指す
弁護士を通じて親権者に対し、子どもの投稿内容の違法性を指摘し、損害賠償請求の通知を送付します。
多くの親御さんは、我が子がネット上で深刻な誹謗中傷を行っていた事実を知ると大きなショックを受けますが、問題の重大性を理解し、早期解決のために示談に応じるケースが多く見られます。
慰謝料の金額や弁護士費用、将来的な再発防止策などを盛り込んだ示談書を交わすことで、裁判を回避して解決を図ることができます。
3. 訴訟提起における被告の特定
任意の交渉で親権者が支払いに応じない場合や、責任を認めない場合には、裁判所に損害賠償請求訴訟を提起します。
この際、訴訟の被告(請求の相手方)を誰にするのか(子ども本人とするか、法定代理人および監督義務者である親とするか)については、子どもの年齢に応じた正確な法的構成が必要となります。
ネット誹謗中傷の被害は夕陽ヶ丘法律事務所にご相談ください
ネット上の誹謗中傷は、被害を受けた方の名誉や精神的平穏を深く傷つける許されない行為です。
投稿者が子どもや未成年であった場合、「相手が子供だから仕方ない」「親に請求できるのか分からない」と泣き寝入りしてしまう方が少なくありません。
しかし、法律上認められた正当な手続きを踏むことで、親権者に対して責任を追及し、損害賠償や慰謝料を獲得することは十分に可能です。
夕陽ヶ丘法律事務所では、悪質なネット誹謗中傷・風評被害に関するご相談を多数承っております。
発信者情報開示請求から、未成年者の親権者に対する損害賠償請求、示談交渉・訴訟代理まで、経験豊富な弁護士がトータルでサポートいたします。
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