ネットの誹謗中傷で「相手が謝罪文を掲載すること

【本記事の監修者】
弁護士 井上 正人(大阪弁護士会所属 / 登録番号:第43449号 / 夕陽ヶ丘法律事務所 代表弁護士)
※本記事は、ネット上の誹謗中傷削除・発信者情報開示命令(IPアドレス特定)・仮処分裁判実務に基づき、プロバイダ責任制限法および最新の判例に沿ってわかりやすく解説しています。

Q ネットで受けた誹謗中傷の加害者に、裁判や示談で「謝罪文の掲載」を強制することはできますか?
A 【法的根拠と裁判での要件】民法第723条に基づき、裁判所が名誉回復の適当な処分として謝罪広告や謝罪文の掲載を命じることは法的に可能です。ただし、判決で認められるには社会的信用の低下などの厳格な要件や慎重な判断が必要となり、裁判のみで強制するのはハードルが高いのが実情です。
【示談交渉による解決のメリット】裁判の手続きを経ず、弁護士を通じた示談交渉を行うことで、相手の合意を引き出して任意のWebサイトやSNS上での謝罪文掲載を約束させることが実務上は有効です。早期の精神的救済や名誉回復を目指す場合は、弁護士への相談が最善の選択肢となります。

ネット掲示板やSNSで心ない誹謗中傷を受けたとき、被害を受けた方が最も望むことの一つが「相手からの謝罪」ではないでしょうか。誤った情報を拡散され、社会的信用を傷つけられたのですから、投稿者本人から謝罪文を掲載させたいと考えるのは当然のことです。

しかし、感情的には「謝ってほしい」と強く願う一方で、法律や裁判的手続において、相手に謝罪文の掲載を強制できるのかどうか、疑問に思われる方も多いでしょう。

この記事では、夕陽ヶ丘法律事務所の弁護士が、ネット誹謗中傷における謝罪文掲載の法的根拠や、裁判で強制できるケース、そして示談による解決の実態について詳しく解説します。

謝罪文の掲載を求める法的根拠(民法723条)

日本の法律では、名誉を毀損された被害者を保護するため、加害者にどのような処分を科すことができるかを定めています。その代表的な規定が民法第723条です。

民法第723条(名誉毀損における原状回復)では、以下のように定められています。 「他人の名誉を毀損した者に対しては、裁判所は、被害者の請求により、損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができる。」

この「名誉を回復するのに適当な処分」の中に、いわゆる謝罪広告や謝罪文の掲載が含まれます。つまり、法的な枠組みとしても、裁判所を通じて相手に謝罪文を掲載させる道は閉ざされていません。

裁判で「謝罪文の掲載」を強制できる条件とは

民法723条を根拠に、裁判官に謝罪文の掲載を命じてもらう(強制する)ことは理論上可能ですが、実際の裁判実務において、どのようなケースでも認められるわけではありません。

裁判所が謝罪広告や謝罪文の掲載命じる判断において、主に以下の点が考慮されます。

  • 名誉毀損の程度が非常に大きく、金銭賠償(慰謝料)だけでは被害が回復されないと認められるか
  • 謝罪文の掲載が、被害者の名誉回復のために必要かつ相当な手段であるか
  • 表現の自由や内心の自由に対する配慮(憲法上の権利とのバランス)

特に、最高裁判所の過去の判例では、加害者に強制的に謝罪の意思表示をさせることは、憲法で保障された「良心の自由」や「精神的自由」を制約する側面があるため、単に名誉毀損が認められたというだけでは、当然には謝罪広告の掲載を命じられないという立場がとられてきました。

そのため、裁判を起こして強制的に謝罪文を出させるハードルは、実務上、決して低くありません。

ネット上での謝罪文掲載が認められた裁判例

裁判による強制はハードルが高いものの、インターネット上の誹謗中傷や風評被害において、Webサイト上での謝罪文や謝罪広告の掲載を命じた裁判例が存在します。

特に以下のような状況下では、名誉回復の有効な手段として認められやすくなります。

  • 会社のホームページや影響力の大きいSNSアカウントで、悪質なデマや嘘の評判が長期間にわたって拡散されたケース
  • 被害を受けた企業や個人の社会的評価が著しく低下し、金銭の支払いだけでは失われた信用が戻らないと裁判所が判断したケース
  • 加害者が自身の過ちを全く反省せず、被害を拡大させ続けているような悪質なケース

このような裁判例があることから、弁護士が代理人として訴訟を提起する際に、損害賠償請求や削除請求とあわせて、謝罪文の掲載を求める請求をセットで行うことは有効な戦略の一つとなります。

裁判以外の解決策:示談交渉による謝罪文の掲載

裁判で強制判決を得るハードルが高い一方で、「裁判外の示談交渉」において、相手に謝罪文を掲載させる合意を取り付けることは、実務上非常によく行われる解決方法です。

裁判になると時間や費用、精神的負担が大きくなりますが、弁護士が間に入って発信者情報開示請求を行い、加害者を特定した上で「示談に応じなければ裁判を起こし、高額な損害賠償請求や刑事告訴を行う」というプレッシャーをかけることで、相手が任意で謝罪に応じることが多くあります。

示談による解決のメリットには、以下のようなものがあります。

  • 裁判よりも早期に解決することができる
  • 当事者間の合意に基づいているため、相手が自発的な形式(指定期間のWeb掲載など)で謝罪文を出しやすい
  • 謝罪文の掲載内容や掲載期間、文面について、被害者側の希望を細かく反映させることができる
  • 示談書の中で「今後一切の誹謗中傷を行わないこと」や「違反した場合の違約金」などを定めることで、再発防止策も同時に講じることができる

相手から「これ以上大事にしたくないので謝るから許してほしい」という申し出があった場合、感情的にただ怒りをぶつけるのではなく、弁護士を通じて適切な内容の謝罪文を作成・掲載させることが、名誉回復への近道となります。

まとめ:ネット誹謗中傷の謝罪文要求は専門家へご相談を

ネットの誹謗中傷で相手に謝罪文の掲載を強制することは、法的な根拠(民法723条)が存在するものの、裁判だけでこれを実現しようとすると厳格な要件や法的なハードルが存在します。

しかし、弁護士を代理人として立て、法的措置を視野に入れた交渉を行うことで、示談という形で相手に謝罪文を掲載させ、名誉を回復することは十分に可能です。

夕陽ヶ丘法律事務所では、ネット上の誹謗中傷や風評被害に関するご相談を数多く承っております。相手に謝罪させたい、失った信用を取り戻したいとお考えの方は、泣き寝入りする前に、ぜひ一度当事務所の弁護士までご相談ください。

弁護士 井上正人

この記事の監修

弁護士 井上 正人
(いのうえ まさと)

大阪弁護士会所属(登録番号:43449)
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

相続や遺産分割、借金問題、既婚者との男女トラブルなど、日常の不測の事態に直面した皆様の心理的なご負担を少しでも和らげ、円満な解決を導くためのサポートを徹底して行っています。どんな小さなお悩みでも、まずは当事務所の事務スタッフがLINEのチャットにて丁寧にお話をお伺いいたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。

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