【弁護士を介した適正な解決】示談書には、弁護士費用や慰謝料を含む損害賠償金の合意・支払い方法のほか、一切の接触や誹謗中傷の禁止を誓約させます。法的有効性を持たせ、実効性のある金額設定や明確な文面で相手と合意するためには、ネット上の風評被害や損害賠償請求に精通した弁護士へ速やかに相談することが解決への近道となります。
5chでの誹謗中傷発覚後、なぜ示談が選ばれるのか
5ch(旧2ちゃんねる)などの匿名掲示板に書き込まれた誹謗中傷について、発信者情報開示請求(裁判手続)を行い、投稿者の氏名や住所を特定することに成功した被害者が直面するのが、相手との話し合いによる解決、すなわち「示談(和解)」の選択です。
裁判を起こして損害賠償請求の判決を得るという方法もありますが、裁判には多くの時間と弁護士費用がかかります。一方、示談であれば、比較的早期に金銭的解決と将来の安心を得ることが可能です。この示談交渉の成否を握るのが、合意内容をまとめる「示談書(和解契約書)」の精度です。
特に、インターネット上の書き込みは、一度特定されても別のアカウントや匿名性を用いて再度攻撃してくるリスクがゼロではありません。そのため、実務上は、形だけの謝罪にとどまらず、法的拘束力を持たせたお詫び状の受領と、実効性のある違約金条項の設定が極めて重要になります。
示談書に盛り込むべき3つの重要要素
5chの投稿者との示談書を作成する際、被害者側の利益を守るためには、主に次の3つの要素を漏れなく記載する必要があります。
- 損害賠償金の合意と支払い方法:特定にかかった弁護士費用や慰謝料の総額、およびその支払期日を明確にする。
- 再発防止および再投稿禁止条項:今後一切、被害者に対する誹謗中傷、接触、関連情報の拡散を行わないことを誓約させる。
- 違約金(罰則金)の設定:上記の誓約に違反した場合、あるいは再度同様の書き込みを行った場合に支払うべき金額をあらかじめ定めておく。
これらに加え、反省の意を示させるための「お詫び状」を別途差し出させることが一般的です。それぞれの項目について、実務的なポイントを詳しく見ていきましょう。
お詫び状(謝罪文)の作成と実務上の意味
示談交渉の過程で、投稿者本人から被害者宛てに「お詫び状」を提出させることがよくあります。これは、単に被害者の精神的救済(溜飲を下げる)という意味だけではありません。
法律上の証拠としての価値もあります。「自分が5chにこのような権利侵害の書き込みをしたこと」「被害者に精神的苦痛を与えたこと」を自筆または署名・押印のうえで書面化させることで、後になって「そんな書き込みはしていない」「脅されて書かされた」といった言い逃れを完全に封じ込めることができます。
お詫び状には、以下の内容を具体的に盛り込ませるのが理想的です。
- いつ、どの掲示板のどのスレッドに、どのような趣旨の書き込みをしたのかの特定
- 自身の行為が違法な権利侵害(名誉毀損や侮辱など)にあたることの自覚
- 被害者に対する心からの謝罪と、二度とこのような行為を行わないという誓約
パソコンのタイピングによる文書ではなく、可能な限り手書きによる作成を求めることで、投稿者の反省の度合いを担保しやすくなります。
違約金条項の法的効力と設定のポイント
示談書において最もトラブルになりやすく、かつ重要なのが違約金条項です。
裁判を通じて損害賠償請求を行う場合、被害者が被った実際の精神的損害や弁護士費用を立証する必要があります。しかし、示談の段階で「今後二度とネットに書き込まない」という将来の約束に対する違反があった場合、損害額をその都度立証することは容易ではありません。
そこで、あらかじめ示談書の中に「本条項に違反した場合、違反者はお詫び金として金〇〇万円を直ちに支払うものとする」というペナルティを定めておきます。これが違約金条項です。
違約金を設定する際の注意点
違約金の金額については、高額すぎると法律上の問題が生じる可能性があります。日本の法律では、公序良俗に反するような過大な違約金は一部または全部が無効と判断されることがあるためです。
一般的には、特定にかかった費用や本来の慰謝料額を踏まえつつ、抑止力として十分機能する金額(数十万円から百万円程度など)に設定することが多いですが、事案の悪質性によって適切に判断する必要があります。
また、「二度と5chに書き込まないこと」という条件だけでなく、「他サイトやSNSでの拡散禁止」「第三者を通じた嫌がらせの禁止」など、派生するリスクも網羅的にカバーする文言にしておくことが、将来の安心に直結します。
示談交渉を弁護士に依頼するメリット
5chの投稿者との間でスムーズに示談をまとめるためには、法律の専門家である弁護士の存在が不可欠です。
発信者情報開示請求の段階から一貫して弁護士が代理人として動くことで、投稿者側に対して法的なプレッシャーを効果的に与えることができます。被害者本人が直接交渉しようとすると、感情的になってしまったり、相手から逆恨みされて二次被害に発展したりするリスクが否定できません。
また、インターネット上の誹謗中傷問題に精通した弁護士であれば、過去の裁判例や実務の相場を踏まえた適正な慰謝料額の算定や、将来の再発を防ぐための緻密な違約金条項のドラフト作成が可能です。
まとめ
5chの投稿者を特定した後の示談は、単に過去の慰謝料を受け取って終わりにするものではありません。「二度と同じ被害に遭わないための環境を作る」という意味で、極めて重要なプロセスです。
法的に有効なお詫び状の徴収や、実効性のある違約金条項の設定を確実に行うためには、個人で対応するのではなく、ネット風評被害に強い弁護士法人に相談し、適切に手続きを進めることを強くお勧めします。