【弁護士による対応のメリット】個人間での直接交渉は感情的な対立や二次被害を生むリスクが高いため、弁護士を代理人に立てることで、法的に不備のない示談書の作成と確実な合意事項の履行を実現し、企業の信頼回復と迅速な問題解決が可能になります。
転職会議やOpenWork、Lighthouseといった転職系・企業口コミサイトに、退職した元社員が事実無根の悪質な書き込みを行い、企業の社会的評価が著しく低下させられるケースが後を絶ちません。
弁護士を通じて発信者情報開示請求を行い、ようやくその投稿者が「元社員」であると特定できた場合、企業側としてはどのような法的手続きを進めるべきでしょうか。
本記事では、特定した元社員と「示談(和解)」を行う際の実務的な手順や、示談書に必ず盛り込むべき重要事項、退職金や損害賠償の処理について詳しく解説します。
元社員によるネット風評被害と法的責任
退職した従業員が、会社の労働環境や待遇に対する不満、あるいは個人的な恨みから、匿名でインターネット上に誹謗中傷や虚偽の口コミを投稿する行為は、法的に重大な問題です。
これらは単なる愚痴の範疇を超え、民事上の不法行為(名誉毀損罪や信用毀損罪、業務妨害罪など)に該当する可能性が極めて高く、企業は投稿者に対して損害賠償を請求する権利を有しています。
元社員特定までの流れ
企業が風評被害への対抗措置として行う主なステップは以下の通りです。
- 発信者情報開示請求の実施:口コミサイトの運営会社やプロバイダに対し、投稿者のIPアドレスや氏名、住所の開示を求めます。
- 発信者の特定:裁判手続き等を経て、書き込みを行った元社員の個人情報を特定します。
- 法的責任の追及方針の決定:特定された元社員に対し、損害賠償請求訴訟を提起するか、あるいは訴訟前の段階で「示談(和解)」による解決を図るかを検討します。
訴訟は時間や費用がかかるだけでなく、社名が公開されることでかえって風評被害が二次的に拡大するリスクもあります。そのため、実務上は水面下で迅速に解決できる「示談」が選ばれるケースが多く見られます。
元社員と示談する際の実務的な4つのステップ
元社員と示談交渉を進めるにあたっては、感情的にならず、法的な根拠に基づいた冷静かつ厳格な手続きが求められます。以下の4つのステップに沿って進めていきます。
ステップ1:代理人弁護士を通じた連絡と内容証明郵便の送付
企業から直接元社員に連絡を取ると、さらなるトラブルや証拠隠滅、逆恨みによる過激な行動を誘発する恐れがあります。そのため、まずは弁護士を代理人として選任し、内容証明郵便等を用いて連絡を取るのが鉄則です。
内容証明郵便には、以下の内容を明確に記載します。
- 当該口コミ投稿が名誉毀損や業務妨害に該当することの指摘
- 特定に至った客観的な証拠の存在
- 会社が被った社会的信用の低下および損害の金額
- 任意の示談に応じない場合は、損害賠償請求訴訟および刑事告訴に移行する旨の通告
ステップ2:示談条件の交渉(謝罪・削除・賠償)
元社員から接触があり、示談交渉に応じる姿勢を見せた場合、具体的な条件のすり合わせを行います。企業側が最低限確保すべき条件は以下の通りです。
- 口コミの速やかな削除:該当するサイトからの投稿削除を確約させ、必要であれば自らの手で削除させます。
- 謝罪文の受領:反省の意を示した書面(謝罪文)を直筆または記名押印のうえで提出させます。
- 口外禁止条項の設定:今回の示談内容や事件の経緯について、第三者に一切口外しないことを誓約させます。
- 違約金の定め:今後再び同様の誹謗中傷を行った場合や、口外禁止条項に違反した場合には、ペナルティとして高額な違約金を支払う旨の条項を設けます。
ステップ3:損害賠償金と退職金・未払い賃金の精算
元社員との示談において、最も実務上複雑になるのが金銭面の清算です。会社が元社員に対して損害賠償金を請求する一方で、元社員側から未払い賃金や残余の退職金の支払いを求められるケースがあります。
ここで重要となるのが、債権の相殺(そうさい)に関する合意です。
- 損害賠償金と退職金の相殺:会社が被った損害額(調査費用、弁護士費用、企業イメージ低下による損失など)から、元社員に支払うべき退職金や未払い給与を差し引く、あるいは相殺する合意を書面に明記します。
- 差額の支払い・分割弁済:相殺した結果、元社員が会社に支払うべき金額が残る場合はその一括または分割での支払期日を定め、逆に会社が支払う必要がある場合はその清算方法を明確にします。
退職金の支給前に発覚した場合は、就業規則の懲戒解雇規定や退職金不支給・減額規定に照らし合わせ、適法に減額または不支給とした上で示談交渉に臨むことが有効です。
ステップ4:法的効力の高い「示談書(和解契約書)」の締結
交渉がまとまったら、口約束で済ませるのではなく、必ず法的効力の高い書面として「示談書(和解契約書)」を二通作成し、双方で署名押印します。
特に将来の未払い賃金や損害賠償の不払いを防ぐため、金額が大きくなる場合や相手の資力に不安がある場合には、公証役場において「強制執行認諾文言付公正証書」を作成することを強く推奨します。これにより、万が一元社員が示談金や賠償金を支払わなかった場合に、裁判を経ることなく即座に給与や財産の差し押さえ(強制執行)を行うことが可能になります。
夕陽ヶ丘法律事務所が提供するサポート
元社員によるネット上の風評被害は、企業の内部事情を知る人物であるがゆえに情報の信憑性が高く見えてしまい、放置すると優秀な人材の採用難や企業のブランド失墜に直結します。
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所では、ネット誹謗中傷・風評被害対策に特化した専門チームを擁しております。発信者情報開示請求による犯人の特定から、元社員との緊密な示談交渉、実効性のある示談書(公正証書)の作成、さらには損害賠償金の回収や退職金との相殺処理に至るまで、企業法務の観点からワンストップで全面的なサポートを提供いたします。
社内情報が外部に漏洩するリスクや、二次被害を防ぎながら迅速に解決を図りたい経営者様、人事ご担当者様は、どうぞお早めに当事務所までご相談ください。