ネット風評被害で特定された元社員が「お金がない」と拒否した時の対応

【本記事の監修者】
弁護士 井上 正人(大阪弁護士会所属 / 登録番号:第43449号 / 夕陽ヶ丘法律事務所 代表弁護士)
※本記事は、ネット上の誹謗中傷削除・発信者情報開示命令(IPアドレス特定)・仮処分裁判実務に基づき、プロバイダ責任制限法および最新の判例に沿ってわかりやすく解説しています。

Q 転職会議やOpenWorkに嘘の口コミを書き込んだ元社員を特定し損害賠償請求したところ「お金がない」と拒否されました。本当にお金がないのか見極める方法や、企業が取るべき回収の法的手段はありますか?
A 【元社員の「お金がない」という主張への対応と財産調査の重要性】相手の言葉をうのみにせず、本当に資力がないのかを客観的に見極める必要があります。意図的に支払いを逃れようとしているケースも多いため、弁護士を通じた財産調査や、預貯金・給与などの財産差し押さえ(強制執行)の手続きを進めることが効果的です。
【弁護士を通じた法的なプレッシャーと回収の実務】給与や預貯金口座の差し押さえだけでなく、刑事告訴への切り替えをちらつかせた交渉や、確実に回収するための分割払いの合意書締結が重要となります。泣き寝入りせず、専門の弁護士に依頼して毅然とした法的対応を取ることで、実効性のある賠償金回収を目指しましょう。

転職会議やOpenWorkでの風評被害と元社員の特定

企業の採用活動において、転職会議やOpenWork、Lighthouse(旧en Lighthouse)などの企業口コミサイトの影響力は計り知れません。これらのプラットフォームに「残業代が一切出ない」「パワハラが常態化している」といった事実無根の悪質な書き込みをされると、企業のブランドイメージは大きく傷つき、採用機会の損失に直結します。

このような風評被害に対して、企業が発信者情報開示請求を行い、犯人が「自社の元社員」であったというケースは決して少なくありません。退職時のトラブルや私怨、あるいは面白半分で行った書き込みが、企業の信用を失墜させる原因となっているのです。

裁判手続きを経て相手を特定し、いざ損害賠償請求(弁護士費用や慰謝料など数十万円から数百万円)を行ったところ、元社員から決まって返ってくるのが「現在無職で、本当にお金がないから払えない」という言葉です。本当に資力がないのか、それとも支払いを逃れたいための口実なのか、企業側としてはどのように対応すべきか頭を悩ませる瞬間です。

元社員の「お金がない」は本当か?見極めと財産調査

相手が「お金がない」と主張したからといって、それをうのみにして請求を諦めてしまうのは早計です。法的な責任を免れようと、意図的に資力がないように見せかけているケースは多々あります。

まずは、本当に支払い能力がないのかどうかを客観的に見極める必要があります。弁護士を通じて裁判所の手続きを利用することで、相手の財産状況を調査することが可能です。

  • 勤務先の調査(給与差し押さえの前提):元社員が転職して別の企業で働いている場合、その勤務先を特定できれば給与を差し押さえることができます。SNSや退職後の動向から新しい勤務先が判明するケースも少なくありません。
  • 預貯金口座の調査:判決や和解調書などの債務名義を取得した後であれば、民事執行法に基づく財産開示手続や第三者からの情報取得手続を利用して、相手の預貯金口座や不動産、株式などの保有状況を法的に明らかにさせることができます。
  • 実家の経済状況や資産:本人が無収入であっても、実家に資産がある場合や、親族からの援助が期待できるケースでは、一括払いが難しくても分割払いであれば合意に至るケースがあります。

「お金がない」相手から賠償金を回収する2つの実務的アプローチ

調査の結果、本当に現在の預貯金が乏しい場合でも、企業としては泣き寝入りする必要はありません。実務上、有効とされる2つのアプローチについて解説します。

アプローチ1:給与や財産の強制執行(差し押さえ)

相手が現在アルバイトや正社員としてどこかに勤務している場合、最も確実かつ強力な手段が給与の差し押さえです。

民事執行法により、給与の一定割合(原則として手取り額の4分の一まで。標準的な給与を超える場合はより多く)を、会社側が毎月直接回収することが認められています。

給与の差し押さえが会社に通知されると、元社員にとっては現在の勤務先にトラブルが知られることになります。そのため、「会社に知られたくない」という心理から、一転して自分で何とかお金を用意して一括払いや現実的な分割払いに応じてくるケースが非常に多いのが実情です。

アプローチ2:刑事告訴への切り替えとプレッシャー

悪質な誹謗中傷や虚偽情報の拡散は、民事上の損害賠償責任だけでなく、刑法上の名誉毀損罪信用毀損罪に該当する犯罪行為です。

「お金がない」と開き直る元社員に対して、「これ以上誠実な対応が見られない場合は、警察に刑事告訴の手続きを進め、刑事罰(前科)を求める」旨を通知することは、非常に強いプレッシャーとなります。

刑事事件として扱われ、起訴されて罰金刑や執行猶予付きの有罪判決となれば、今後の社会生活や再就職において決定的なマイナスとなります。「お金はないが、前科や逮捕は絶対に避けたい」という心理が働くため、親族に頼み込むなどして何とかして賠償金を用意する原動力になり得ます。

分割払いや公正証書の活用による現実的な着地

相手がどうしても一括で支払えない場合、法的に追い詰めるだけでなく、現実的な回収プランに落とし込むことも企業のリスク管理として重要です。

例えば、以下のような条件で和解や示談を行うことが検討されます。

  • 公正証書の作成:合意内容を強制執行認諾文言付きの公正証書にします。これにより、万が一分割払いが途中で滞った際、改めて裁判を起こすことなく、即座に給与や財産の差し押さえ(強制執行)を実行できる状態を担保します。
  • 現実的な分割回数の設定:月々数万円程度の分割払いであっても、確実に支払わせる仕組みを作ることが、結果的に企業の損害を最も効率よく補填する手段となります。
  • 誓約事項の明記:金銭の支払いだけでなく、今後一切会社の風評を流さないこと、SNS等で接触しないこと、違反した際の違約金を定めておくことで、将来の再発防止を徹底します。

まとめ:元社員の風評被害は弁護士と連携した毅然とした対応を

転職会議やOpenWorkなどの口コミサイトにおける元社員からの誹謗中傷は、企業のブランド価値を不当に貶める許されない行為です。「お金がない」という相手の言葉を鵜呑みにせず、給与差し押さえの可能性や刑事告訴への切り替えを視野に入れた毅然とした態度を示すことが、適正な賠償金回収と今後の抑止力につながります。

夕陽ヶ丘法律事務所では、ネット上の風評被害対策から、特定された加害者に対する損害賠償請求、回収に至るまでの実務を総合的にサポートしております。泣き寝入りせず、まずは専門の弁護士までご相談ください。

弁護士 井上正人

この記事の監修

弁護士 井上 正人
(いのうえ まさと)

大阪弁護士会所属(登録番号:43449)
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

相続や遺産分割、借金問題、既婚者との男女トラブルなど、日常の不測の事態に直面した皆様の心理的なご負担を少しでも和らげ、円満な解決を導くためのサポートを徹底して行っています。どんな小さなお悩みでも、まずは当事務所の事務スタッフがLINEのチャットにて丁寧にお話をお伺いいたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。

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