【開示拒否された場合の対応と損害賠償請求】投稿者が意見照会書に対して「開示拒否」の回答をしたり無回答であったりした場合でも、正当な理由や違法性阻却事由がないと判断されれば、最終的に裁判所の命令によって強制的に情報が開示されるケースがほとんどです。情報開示が認められた後は、特定された投稿者に対して弁護士費用を含む損害賠償請求や刑事告訴を行うことが可能です。
Googleマップ(Googleビジネスプロフィール)に、事実無根の悪質な低評価や、名誉毀損にあたる誹謗中傷の口コミを書き込まれたとき、店舗や企業が取るべき最大の自衛手段の一つが「投稿者の特定と法的責任追及」です。
投稿者を特定するためには、裁判手続きなどを経て通信事業者(プロバイダ)から契約者の情報を取り寄せる必要があります。そのプロセスにおいて非常に重要な役割を持つのが「プロバイダ意見照会書」です。
この記事では、夕陽ヶ丘法律事務所の弁護士が、プロバイダ意見照会書が投稿者のもとへ届く仕組みや、相手が「開示拒否」した場合のその後の展開について、実務的な視点から分かりやすく解説します。
Googleマップの口コミ投稿者を特定する全体像
Googleマップに書き込まれた口コミの投稿者を特定する作業は、匿名性が高いインターネット上の発信者を割り出すため、いくつかの厳格な法律手続きを経る必要があります。大きく分けると、以下のステップで進行します。
- ステップ1:Googleに対する発信者情報開示請求(任意または裁判) 投稿された口コミのIPアドレスやタイムスタンプなどのログを開示してもらうため、アメリカのGoogle社に対して開示請求を行います。
- ステップ2:アクセスログの保有期間の保全 プロバイダが持つ通信ログは数ヶ月で消去されてしまうため、ログが消されないよう裁判所を通じて「発信者情報消去禁止の仮処分」を申し立てます。
- ステップ3:プロバイダの特定と意見照会書の発送 判明したIPアドレスから、投稿者が利用しているインターネットサービスプロバイダ(ドコモ、ソフトバンク、各光回線業者など)を特定し、そのプロバイダに対して契約者の情報開示を請求します。ここでプロバイダから投稿者本人へ向けて「意見照会書」が発送されます。
- ステップ4:開示請求訴訟・任意の開示 投稿者からの意見をもとに、プロバイダが情報の開示・非開示を判断します。非開示となった場合や裁判が必要な場合は、開示を命じる裁判を起こして情報を取得します。
このように、意見照会書は「投稿者を特定するための法的手続きの最終段階(プロバイダ段階)」において、極めて重要な位置を占めています。
「プロバイダ意見照会書」はどのように投稿者の自宅に届くのか
プロバイダ意見照会書とは、プロバイダが保有している契約者の個人情報(氏名、住所、メールアドレスなど)を、被害者側に開示してもよいかどうかを契約者本人に確認するための文書です。
実務上、この書類は以下のような形で投稿者のもとに届きます。
1. 郵送による通知
プロバイダ意見照会書は、基本的には契約者の自宅住所宛てに、郵便(多くは簡易書留や本人限定受取郵便など、受領確認が取れる形式)で届きます。そのため、家族と同居している場合や、会社組織の回線から投稿した場合は、周囲に発信者情報開示請求を受けていることが知られてしまう可能性が高くなります。2. 書面に記載されている内容
意見照会書の中には、概ね以下のような内容が記載されています。- 「貴殿(貴社)の契約回線から、〇年〇月〇日頃にインターネット上の書き込みが行われました」
- 「被害者側から発信者情報開示請求がなされています」
- 「投稿された内容が権利侵害に該当するかどうかについて、あなたの意見を聴かせてください」
- 「開示に『同意』するか、『拒否』するか、期限内に回答書を提出してください」
- 「回答期限内に返答がない場合、あるいは拒否された場合でも、法律の要件を満たしているとプロバイダが判断したときは、情報を開示することがあります」
投稿者が「開示拒否」した場合どうなるのか
意見照会書を受け取った投稿者の多くは、自分が特定されるのを恐れて「開示に同意しません(拒否します)」という回答を選択しがちです。
しかし、単に「開示を拒否します」と書くだけで情報開示を免れるわけではありません。ここから法的な攻防が本格化します。
1. 開示拒否の理由が問われる
意見照会に対する回答書には、「なぜ開示を拒否するのか」の理由や、自身の書き込みが誹謗中傷や権利侵害にあたらないとする主張を記載する欄があります。 ここで客観的かつ合理的な理由(例えば「そもそもその日時にその場所でインターネットを利用していない」「正当な論評であり社会的相当性がある」など)が示されれば、プロバイダが「権利侵害が明白とは言えない」と判断し、任意の開示が見送られるケースもあります。ただし、単なる「特定されたくない」「恥ずかしい」「悪口を書いた覚えがない(しかし証拠がある)」といった主観的な理由では、拒否の正当な理由とは認められません。
2. プロバイダによる判断と「裁判所命令」
投稿者が開示を拒否したとしても、被害者側の主張や証拠から「明らかに名誉毀損や侮辱などの権利侵害に該当する」とプロバイダが判断した場合、プロバイダは投稿者の反対を押し切って情報を開示することがあります。しかし、多くの大手プロバイダは、プライバシー保護の観点や、誤って情報を開示した際の責任問題を懸念するため、投稿者が拒否した段階で「任意の開示には応じられない(裁判所の判断を仰いでほしい)」という対応をとる傾向があります。
この場合、被害者側はプロバイダを相手取って「発信者情報開示請求訴訟(裁判)」を提起する必要があります。裁判において、裁判所が「当該口コミは違法な権利侵害にあたる」と認めれば、プロバイダに対して開示命令(または開示を命じる判決)が下されます。裁判所の命令が出れば、プロバイダは投稿者の意向に関係なく、強制的に契約者情報を開示せざるを得なくなります。
意見照会書が届いた後の具体的な流れとタイムライン
プロバイダ意見照会書が発送されてから、実際に投稿者の情報が被害者側に開示されるまでの大まかなスケジュール感は以下の通りです。
- 意見照会書の発送(1〜2週間):プロバイダが内容を精査し、契約者宛に書類を発送します。
- 回答期間(通常2週間〜1ヶ月程度):契約者は指定された期日(消印有効など)までに、同意・拒否の回答書を返送します。
- プロバイダの最終判断(2週間〜1ヶ月):返送された意見をもとに、プロバイダが開示・非開示の判断を下します。
- 任意開示 または 裁判手続き(数ヶ月〜半年):任意の開示が行われれば数週間で情報が届きます。拒否された場合は裁判手続きへ移行するため、解決までに数ヶ月の時間を要します。
このように、プロバイダ意見照会書が届いた時点ですでに法的手続きはかなり進んでおり、投稿者側にとっては法的責任を免れるのが非常に難しい状況にあります。
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Googleマップの口コミは、お店の売上やブランドイメージに直結する極めて重要な要素です。「面白半分で書いた」「匿名だからバレないだろう」という軽い気持ちで行われた誹謗中傷であっても、適切な法的措置を踏むことで、投稿者を特定し、損害賠償を請求することは十分に可能です。
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