漫画家・イラストレーターに対する「AIトレス」「トレス疑惑」デマ削除

【本記事の監修者】
弁護士 井上 正人(大阪弁護士会所属 / 登録番号:第43449号 / 夕陽ヶ丘法律事務所 代表弁護士)
※本記事は、ネット上の誹謗中傷削除・発信者情報開示命令(IPアドレス特定)・仮処分裁判実務に基づき、プロバイダ責任制限法および最新の判例に沿ってわかりやすく解説しています。

Q SNSで「AIトレス」「盗作」という事実無根のデマを流されて仕事がキャンセルされました。名誉毀損として加害者を特定し、損害賠償を請求できますか?
A 【法的責任と該当する権利侵害】根拠のない「AIトレス」や「トレス疑惑」の拡散は、クリエイターの社会的評価を著しく低下させる行為であり、刑法上の名誉毀損罪や民事上の不法行為(名誉毀損・業務妨害)に該当します。表現の自由や正当な批評の範疇を逸脱した悪質なデマによる営業損害は、法的責任を追及できる明確な根拠となります。
【弁護士による解決手段と法的措置】泣き寝入りせず、プラットフォーム事業者に対する迅速な削除請求を行うとともに、発信者情報開示請求(IPアドレス等の特定・仮処分申請)を経て投稿者を特定し、損害賠償請求を行うことが有効な解決手段です。連載の打ち切りや仕事のキャンセルといった実害を防ぐためにも、専門知識を持つ弁護士への早期相談をおすすめします。

SNSやインターネット上で、漫画家やイラストレーターといったクリエイターを標的にした「AIトレス疑惑」や「無断トレスの告発」という名目のデマが拡散するトラブルが後を絶ちません。

表現の自由や作品への批評の範疇を超えて、事実無根の情報を執拗に浴びせる行為は、クリエイターにとって生命線である「信頼」を失わせる重大な人権侵害であり、営業上の大いなる損害を生み出します。

夕陽ヶ丘法律事務所には、日々多くのクリエイターから誹謗中傷や風評被害に関する深刻なご相談が寄せられています。本記事では、悪質なトレスデマに対する法律上の問題点や、具体的な削除請求・法的措置の流れについて詳しく解説します。

漫画家・イラストレーターを狙う「トレスデマ」の脅威

近年、生成AIの急速な普及に伴い、イラストや漫画の制作プロセスに対する世間の目が厳しくなっています。この状況に便乗し、何ら客観的な証拠がないにもかかわらず、既存の作品や写真素材を「そのままAIでトレスした」「盗作である」と決めつける悪質なデマが投稿されるケースが急増しています。

このようなデマが一度拡散してしまうと、以下のような取り返しのつかない実害が生じるおそれがあります。

  • 連載の打ち切りや仕事のキャンセル:クライアントや出版社が風評リスクを恐れ、契約の解除や見合わせを余儀なくされる。
  • ファンや読者の離反:不当なバッシングや炎上により、長年築き上げてきたファン層との信頼関係が損なわれる。
  • 精神的苦痛による創作活動の停止:執拗な誹謗中傷や人格否定のコメントにより、うつ病などの精神疾患を発症し、ペンを握れなくなる。

創作活動において「盗作」や「不正」のレッテルを貼られることは、社会的社会生命を断たれるに等しい死活問題です。匿名の悪意ある投稿に対しては、毅然とした態度で法的対応を取ることが不可欠です。

「AIトレス」「トレス疑惑」投稿が成立させる法律上の罪

SNS上の心無い書き込みやデマは、単なる「個人の感想」では済まされません。法律上、以下のような明確な違法性が認められるケースが多く存在します。

名誉毀損罪および民事上の名誉毀損

公然と事実を適示し(または事実を摘示して)、他人の社会的評価を低下させた場合、刑法上の名誉毀損罪(刑法230条)が成立する可能性があります。また、民法上の不法行為(民法709条)にも該当するため、損害賠償請求の対象となります。 「トレスした」「パクった」という行為は、プロの創作者としてのモラルや倫理観を根本から否定するものであり、社会的評価を著しく低下させる発言に他なりません。

偽計業務妨害罪および営業妨害

虚偽の風説を流布し、または偽計を用いて、人の業務を妨害した場合、偽計業務妨害罪(刑法233条)が成立します。商業誌での連載や同人活動、商業イラストの受注など、クリエイターの経済活動に直接的な悪影響を及ぼした場合には、厳重な刑事責任や損害賠償責任が問われます。

デマ被害に直面した際に行うべき初期対応

悪質なトレスデマを発見した場合、感情的になってSNS上で反論や口論をすることは、さらなる炎上(二次被害)を招くおそれがあるため推奨されません。冷静に以下のステップを踏むことが重要です。

  1. 証拠の保全(スクショ撮影):投稿のURL、アカウント名、投稿日時、該当する画像や文章を確実にスクリーンショットやPDFで保存します。のちほど削除されたりアカウントが非公開にされたりした場合でも、証拠が手元にあれば調査が可能です。
  2. プラットフォームへの削除申請:X(旧Twitter)、Pixiv、Bluesky、Instagramなどの各運営会社に対し、利用規約違反や権利侵害を理由として削除の申立てを行います。
  3. 弁護士への相談:証拠を持参の上、ネット中傷や著作権問題に強い法律事務所に相談し、法的措置の可能性を検討します。

法律事務所を通じた削除請求と発信者情報開示請求

運営会社への個人的な削除依頼では対応してもらえない場合や、投稿者を特定して法的責任を追及したい場合には、弁護士を通じた法的手続きを行います。

1. 投稿の削除請求(仮処分・任意交渉)

名誉毀損や業務妨害に該当する書き込みについて、弁護士名義で削除を求める通知書を送付するか、裁判所に対して「仮処分命令」の申し立てを行います。仮処分が認められれば、運営会社側も速やかに該当ポストやスレッドを削除せざるを得なくなります。

2. 発信者情報開示請求(特定電気通信役務提供者損害賠償制限法に基づく請求)

デマの投稿者を特定し、損害賠償請求や刑事告訴を行うためには、その人物が使用しているプロバイダ(携帯キャリアや光回線業者など)からIPアドレスや氏名、住所などの情報を引き出す必要があります。 近年の法改正により、裁判手続きの簡素化が進んだものの、通信ログが消去される前に迅速に保全・請求を行わなければならないため、時間との勝負になります。

3. 損害賠償請求および示談交渉

投稿者が特定できた段階で、弁護士を通じて慰謝料や弁護士費用の請求、今後の誹謗中傷の禁止などを定めた示談交渉を行います。悪質なケースでは、刑事告訴に踏み切ることも視野に入れます。

クリエイターが安心して創作活動に専念できる環境を守るために

「ネットで叩かれるのもプロの宿命」「スルーしていればそのうち収まる」と諦めてしまうクリエイターの方が少なくありません。しかし、根拠のないデマや誹謗中傷を放置することは、誹謗中傷をエスカレートさせ、あなたの心身とキャリアを深く傷つける結果につながります。

夕陽ヶ丘法律事務所では、クリエイターの皆様が抱えるデマ被害や風評被害の辛さに寄り添い、迅速かつ的確な法的手続きを通じてプライバシーと名誉を守り抜きます。

「これって名誉毀損にあたるのだろうか」「証拠はこれで足りているだろうか」といった不安をお持ちの方も、どうぞお気軽にご相談ください。あなたの創作活動の尊厳を守るため、私たちが全力でサポートいたします。

弁護士 井上正人

この記事の監修

弁護士 井上 正人
(いのうえ まさと)

大阪弁護士会所属(登録番号:43449)
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

相続や遺産分割、借金問題、既婚者との男女トラブルなど、日常の不測の事態に直面した皆様の心理的なご負担を少しでも和らげ、円満な解決を導くためのサポートを徹底して行っています。どんな小さなお悩みでも、まずは当事務所の事務スタッフがLINEのチャットにて丁寧にお話をお伺いいたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。

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