【示談書締結における重要ポイント】法的な強制力を持たせるためには、掲載期間、謝罪文の正確な文面、表現の自由との兼ね合いに配慮した緻密な合意書の締結が不可欠です。感情的になりがちな条件交渉や文面作成は、トラブルを防ぐためにもネット誹謗中傷に精通した弁護士へ代理人を依頼することが確実です。
インターネット上の掲示板やSNS、口コミサイトにおいて、いわれのない誹謗中傷やデマを書き込まれた場合、被害を受けた企業や個人にとって最大の関心事は「いかにして名誉を回復するか」という点にあります。発信者情報開示請求や刑事告訴などを通じて加害者を特定した後、民事上の示談交渉に移行する際、金銭的な損害賠償(慰謝料等)の請求だけでなく、「謝罪文の交付」や「SNS上での謝罪・訂正動画の投稿」を加害者側へ求めるケースが増加しています。
この記事では、弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所の実務経験に基づき、ネット誹謗中傷の特定後に加害者が謝罪動画や謝罪文を出す際の実務手順、法的な留意点、示談交渉における重要なポイントを詳しく解説します。
1. 誹謗中傷の加害者に「謝罪」を求める法的意義と目的
裁判や示談交渉において、金銭賠償とは別に謝罪を求めることには、実務上非常に重要な二つの目的があります。
- 被害者の名誉回復と風評被害の払拭: 拡散されてしまった誤った情報や悪質なデマに対し、同じプラットフォーム上で「事実無根であったこと」「謝罪する旨」を掲示させることで、世間に対する信用を回復させます。
- 加害者の反省と再発防止: 自身の行為が重大な法違反であり、刑事・民事上の責任を負う重みを自覚させ、将来にわたる同種の加害行為を防ぎます。
特に企業経営者や医療機関、飲食店などの場合、ネット上の悪評が売上や信頼に直結するため、金銭の支払い以上に「事実の訂正と謝罪」の表明が名誉回復の有効な手段となります。
2. 謝罪の具体的な形式:謝罪文の交付から動画投稿まで
示談の場において合意される謝罪の形式には、いくつかのバリエーションが存在します。被害の深刻度や加害者の発信力に応じて適切な形式を選択します。
書面による謝罪(示談書・謝罪文)
もっとも一般的な形式です。加害者が自筆またはパソコンで作成した謝罪文に署名押印し、被害者側に直接交付します。この謝罪文には、以下の要素を盛り込むのが一般的です。
- いつ、どの媒体で、どのような誹謗中傷を行ったかの特定
- 当該書き込みが虚偽であり、被害者の名誉や信用を著しく傷つけたことへの謝罪
- 今後一切、同様の行為を行わない旨の誓約
- 万が一違反した場合の違約金条項
SNSやネット上のプラットフォームにおける謝罪投稿・誤り訂正
加害者が自身のアカウントを用いて拡散した場合、同じアカウント上で「謝罪および事実の訂正」を投稿させることがあります。実務上は、単に投稿させるだけでなく、一定期間(例:1ヶ月間など)プロフィール欄の直下やタイムラインの最上部に「固定表示(ピン留め)」させることを条件とします。これにより、過去の誹謗中傷を見たユーザーに対しても、訂正された事実を確実に認識させることが可能になります。
謝罪動画の投稿に関する実務
近年、YouTubeやTikTok、X(旧Twitter)などの動画プラットフォームを利用した誹謗中傷に対して、「謝罪動画の公開」を条件に求めるケースが見られます。しかし、動画による謝罪の要求には、実務上慎重な判断が求められます。加害者の顔や音声が露出するため、過度なプライバシー侵害や私刑(リンチ)と受け取られかねないリスクがあり、表現の自由や人格権のバランスを考慮した合意内容にしなければなりません。弁護士が代理人として交渉し、客観的かつ社会通念上相当な範囲に留める文面・構成を指定することが重要です。
3. 示談交渉における実務上の重要なポイントと注意点
加害者に謝罪文や謝罪投稿を行わせる場合、口約束や曖昧な合意では実効性が担保されません。トラブルを防ぐため、以下のポイントに留意した合意書(示談書)の締結が必要です。
掲載期間と削除の可否に関する取り決め
SNS上での謝罪投稿や訂正文を掲載させる場合、「いつまで掲載し続けるか」を明確に定めます。期間を定めずに半永久的な掲載を強制することは、法的紛争の蒸し返しや過剰な制裁と評価されるおそれがあるため、通常は1週間から数ヶ月程度の妥当な期間を設定します。また、期限経過後の削除方法についてもあらかじめ合意しておきます。
文面の内容に関する事前確認
加害者が勝手に作成した不十分な謝罪文や、被害者を逆なでするような不誠実な文面では意味がありません。示談書の締結前に、弁護士間で謝罪文の文面や投稿内容のドラフト(原案)を厳密にチェックし、合意した正確なテキストをそのまま実行させることが鉄則です。
違反時のペナルティ(違約金条項)の設置
「謝罪投稿をしたが、数日で勝手に削除してしまった」「謝罪文を出した後に裏アカウントで再び中傷を始めた」といった事態に備え、合意事項に違反した場合は違約金(損害賠償とは別枠の金銭ペナルティ)を即座に支払う旨の条項を盛り込みます。このペナルティの存在が、確実な履行を担保する強い抑止力となります。
4. ネット誹謗中傷の解決は弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所にご相談ください
インターネット上の誹謗中傷や風評被害において、加害者を特定した後の示談交渉は、法的な専門知識と綿密な実務ノウハウが求められるデリケートなプロセスです。
金銭的な賠償請求はもちろんのこと、「いかにして実効性のある謝罪や訂正を行わせ、失われた名誉を回復するか」については、個別の事案に応じた戦略的なアプローチが必要となります。
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所では、多数のネット誹謗中傷・風評被害対策を手がけてきた専門チームが、加害者の特定から、示談条件の策定、謝罪文・謝罪投稿の履行管理に至るまで、依頼者様の利益と名誉回復を最優先にサポートいたします。ネット上の風評被害や誹謗中傷でお悩みの企業経営者様、医療機関、個人のお客様は、どうぞお気軽にご相談ください。