ネット中傷の加害者が「逮捕・勾留」された場合の刑事手続きの流れ

【本記事の監修者】
弁護士 井上 正人(大阪弁護士会所属 / 登録番号:第43449号 / 夕陽ヶ丘法律事務所 代表弁護士)
※本記事は、ネット上の誹謗中傷削除・発信者情報開示命令(IPアドレス特定)・仮処分裁判実務に基づき、プロバイダ責任制限法および最新の判例に沿ってわかりやすく解説しています。

Q ネット上の誹謗中傷で加害者が逮捕・勾留された場合、刑事手続きや今後の流れはどのように進むのですか?
A 【刑事手続きの流れと法的期限】加害者が逮捕されると警察で最大48時間の取調べが行われ、検察官送致後に裁判官が勾留を認めれば原則10日間、延長を含めて最大20日間の身柄拘束が続きます。その期間内に、検察官が正式な起訴、略式起訴、または不起訴の処分を決定します。
【被害者が取るべき法的アプローチと対応】名誉毀損罪や侮辱罪での刑事責任追及と並行し、弁護士を通じて発信者情報開示請求による加害者の特定や、損害賠償請求を行うことが有効です。悪質な風評被害や精神的苦痛に対する法的措置について、早期に弁護士へご相談ください。

インターネット上の掲示板やSNSへの誹謗中傷、悪質な口コミによる風評被害は、個人や企業の信用を大きく損なう深刻な問題です。警察に被害届や告訴状が受理され、加害者が特定されて逮捕に至った場合、刑事手続きはどのようなステップで進んでいくのでしょうか。

被害に遭われた方やそのご家族にとって、加害者がどのように処罰されるのか、そのプロセスを知ることは法的措置の全体像を把握する上で非常に重要です。ここでは、逮捕から起訴・裁判に至るまでの具体的な流れを分かりやすく解説します。

ネット中傷における逮捕の要件とは

インターネット上の書き込みによる名誉毀損罪や侮辱罪、業務妨害罪などで加害者が逮捕されるのは、主に以下のようなケースです。

  • 悪質性が高く、被害が深刻である場合
  • 証拠隠滅や逃亡の恐れが認められる場合
  • 警察からの度重なる出頭要請を正当な理由なく拒否し続けた場合

ネット中傷の事案では、パソコンやスマートフォンといった証拠が容易に隠滅・改ざんされる可能性があるため、逃亡の恐れと合わせて逮捕の必要性が判断されやすい傾向にあります。

逮捕後の刑事手続きの具体的な流れ

加害者が逮捕されてから処分が決定するまでの間、刑事訴訟法に定められた厳格なタイムリミットに従って手続きが進められます。

1. 警察による取調べと送検(逮捕後 48時間以内)

逮捕された加害者は、警察署に連行されて取調べを受けます。警察官は、ネット上の書き込みが本人の手によるものか、どのような意図で行ったのか、動機や経緯について集中的に追及します。

警察は、逮捕から48時間以内に、事件に関するすべての書類と証拠、そして被疑者(加害者)の身柄を検察庁へ引き渡さなければなりません。これが「送検(送致)」と呼ばれる手続きです。

2. 検察官による勾留請求(送検後 24時間以内・計72時間以内)

検察庁に送られた加害者は、今度は検察官による取調べを受けます。検察官は、被疑者と対面して事情を聴いた上で、さらに身柄拘束を継続する必要があるかどうかを判断します。

身柄の釈放をせず、引き続き拘束して捜査を続ける必要があると判断した場合、検察官は裁判官に対して「勾留(こうりゅう)」を請求します。この請求は、送検されてから24時間以内(逮捕から通算して72時間以内)に行われなければなりません。

3. 裁判官による勾留決定(原則 10日間、延長で最大 20日間)

検察官からの請求を受けた裁判官は、被疑者と面接(勾留質問)を行い、勾留するかどうかを決定します。裁判官が勾留を認めると、そこから原則として10日間の身柄拘束が始まります。

さらに、捜査が尽くされていないなどの正当な理由がある場合、検察官の請求によりさらに最大10日間の勾留延長が認められます。つまり、逮捕・勾留された場合、加害者は最長で23日間にわたり、社会から隔離された状態で取り調べを受けることになります。

4. 起訴・不起訴の決定

勾留期間の満了する日までに、検察官は被疑者を刑事裁判に掛けるかどうかを最終決定します。選択肢としては主に以下の3つがあります。

  • 正式起訴(公判請求):公開の法廷で本格的な刑事裁判を開き、正式な懲役刑や罰金刑を求める手続きです。事案が極めて悪質な場合に選択されます。
  • 略式起訴(略式命令):被疑者が罪を認めており、事案が比較的軽微な場合、正式な裁判を開かずに書面審理のみで100万円以下の罰金刑などを科す手続きです。ネット中傷事案では、この略式起訴で決着することが多く見られます。
  • 不起訴処分:嫌疑不十分や起訴猶予(反省の色が見られる、被害者との示談が成立した等)を理由に、裁判にかけない処分です。

被害者が刑事手続きのなかで取るべき対応

加害者が逮捕・勾留された後、被害者側としてもただ結果を待つだけでなく、適切なアプローチを行うことが重要です。

  • 示談交渉の検討:加害者側から弁護士を通じて示談の申し入れや謝罪、慰謝料の支払い打診がなされることがあります。早期に精神的・金銭的な解決を望む場合は、条件を慎重に協議します。
  • 厳罰を求める意思表示:被害届や告訴状を提出する際、あるいは捜査の過程において、加害者の行為がいかに悪質であったか、厳重な処罰を望む旨を検察官や警察にしっかりと伝えておくことが大切です。

ネット中傷の法的解決は専門の弁護士へ

ネット中傷の加害者を特定し、刑事責任を追及するプロセスは、法的な知識と警察との綿密な連携が不可欠です。発信者情報の特定から刑事告訴、さらには民事上の損害賠償請求に至るまで、被害者が単独ですべてを対応するのは大きな負担となります。

当事務所では、インターネット上の風評被害や誹謗中傷トラブルに関する豊富な解決実績を持つ弁護士が、被害回復に向けたトータルサポートを提供しております。お一人で悩むことなく、まずは専門家までお気軽にご相談ください。

弁護士 井上正人

この記事の監修

弁護士 井上 正人
(いのうえ まさと)

大阪弁護士会所属(登録番号:43449)
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

相続や遺産分割、借金問題、既婚者との男女トラブルなど、日常の不測の事態に直面した皆様の心理的なご負担を少しでも和らげ、円満な解決を導くためのサポートを徹底して行っています。どんな小さなお悩みでも、まずは当事務所の事務スタッフがLINEのチャットにて丁寧にお話をお伺いいたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。

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