【弁護士による解決アプローチ】海外裁判所の手続き(USC 28 U.S.C. Section 1782等)や国内外の法的措置を適切に組み合わせることで、開示を実現できるケースがあります。泣き寝入りせず、CDN対策に精通した弁護士へ早急に相談し、仮処分や損害賠償請求に向けた証拠保全を行うことが不可欠です。
ネット上の誹謗中傷や悪質な風評被害への対策を進める中で、相手を特定しようと発信者情報開示請求を行った際、大きな壁となるのが「Cloudflare(クラウドフレア)」をはじめとするCDN(コンテンツ・デリバリー・ネットワーク)サービスの存在です。
近年のウェブサイトや個人運営の掲示板では、セキュリティ強化やアクセス高速化を目的としてCloudflareなどのCDNを利用することが標準的になっています。しかし、この仕組みが導入されていると、通常の国内手続きだけでは投稿者のIPアドレスを特定できないという深刻な問題が生じます。
この記事では、Cloudflare等のCDNサービスを経由した掲示板に対して、どのように発信者情報開示請求を行い、投稿者を特定していくのか、その実務的なアプローチを専門の弁護士が分かりやすく解説します。
1. Cloudflare等のCDNとは何か?なぜ特定が難しくなるのか
まずは、CDNの基本的な仕組みと、なぜそれが発信者情報開示請求の障壁となるのかを理解する必要があります。
CDN(コンテンツ・デリバリー・ネットワーク)の仕組み
CDNとは、世界中に配置されたキャッシュサーバーを活用し、ウェブサイトへのアクセスを分散・高速化させる仕組みです。代表的なサービスであるCloudflareは、数多くのサイトで導入されています。
通常、ユーザーが掲示板に書き込みを行うと、その通信は直接掲示板のサーバー(オリジンサーバー)に届き、サーバーのアクセスログに投稿者のIPアドレスが記録されます。
しかし、Cloudflareを導入しているサイトの場合、ユーザーの通信は一度Cloudflareのサーバーを経由します。掲示板のサーバー側から見ると、アクセスしてきたのは「投稿者本人」ではなく、Cloudflareのサーバーということになってしまうのです。
サーバーログに本当のIPアドレスが残らない
掲示板の運営者に対して「発信者情報開示請求」を行い、サーバーのアクセスログを開示してもらったとしても、そこに記録されているのはCloudflare側のIPアドレスであるケースが大半を占めます。これでは、日本国内のプロバイダ責任制限法に基づく通常の開示請求を進めても、肝心の投稿者まで辿り着くことができません。
2. Cloudflareを経由するサイトに対する特定のアプローチ
Cloudflareを経由しているからといって、誹謗中傷の投稿者特定を諦める必要はありません。実務上は、以下のようなステップや手法を検討して解決を目指します。
- ステップ1:掲示板運営者への任意請求、または訴訟を通じた情報収集
- ステップ2:Cloudflare(アメリカ法人)に対するログ開示請求の検討
- ステップ3:米国裁判所の手続(28 U.S.C. § 1782など)の活用
それぞれのステップについて詳しく見ていきましょう。
掲示板の運営者が隠し持っている情報の確認
CDNを経由している場合でも、掲示板のシステムや設定によっては、Cloudflareが提供する専用ヘッダー(例:CF-Connecting-IPなど)を利用して、オリジンサーバー側に本来の訪問者のIPアドレスが転送・記録されている場合があります。
まずは、国内の弁護士会照会(弁護士法第23条の2に基づく照会)や、裁判所を通じた発信者情報開示命令・訴訟手続きを利用して、掲示板の運営者からログを取得し、本当のIPアドレスが残っていないか慎重に精査します。
Cloudflare社に対する直接の開示請求
もし掲示板のサーバーログに真のIPアドレスが残っていない場合、次に標的となるのはCDN事業者であるCloudflare社そのものです。Cloudflare社はアメリカに本社を置く外国法人であるため、日本の法律や裁判所の手続きをそのまま適用することはできません。
アメリカの企業に対して法的請求を行う場合、原則としてアメリカの法律や裁判所の管轄に従う必要があります。そのため、海外法人の実務に精通した弁護士のサポートが不可欠となります。
3. 外国法人(Cloudflare社等)を相手にする際の実務と難易度
海外のIT企業に対して法的措置を講じるには、国内の手続きとは異なる特有のハードルが存在します。
- 言語と法律の壁:すべでのやり取りが英語で行われ、米国法に関する専門知識が求められます。
- 管轄と準拠法:Cloudflare社の利用規約やサービス提供国(米国)の法律に則った手続きが必要になります。
- 証拠保全のスピード:海外企業に対して請求を行っている間にも、ログの保存期間が経過してしまうリスクがあるため、迅速な対応が求められます。
特に「28 U.S.C. Section 1782(連邦法典第28条第1782項)」というアメリカの制度を利用することで、外国の法的手続き(日本での訴訟の準備などを含む)のために、アメリカ国内の企業に対して証拠開示(ディスカバリー)を申し立てることができる場合があります。この法的手続きを活用することで、Cloudflare社が保有するアクセスログ等の開示を引き出せる可能性が開けてきます。
4. 掲示板の匿名性に隠れた悪質な投稿を放置しないために
「海外のCDNを経由しているから特定できないはずだ」と高をくくって、誹謗中傷や名誉毀損、プライバシー侵害の書き込みを続ける悪質なユーザーが存在します。しかし、技術や法律の進化、そして実務経験豊富な弁護士のノウハウによって、かつては困難だった海外サービス経由の特定も現実的なものになりつつあります。
誹謗中傷の被害に遭った場合、泣き寝入りをする必要はありません。大切なのは、時間が経過してログが消失してしまう前に、一刻も早く専門の法律事務所に相談することです。
夕陽ヶ丘法律事務所では、国内外の複雑なネットワーク構造や、Cloudflare等のCDNサービスを挟んだ掲示板に対する発信者情報開示請求、IPアドレス特定の実績を多数有しております。風評被害やネット上の誹謗中傷でお悩みの方は、どうぞお気軽にご相談ください。