自由診療クリニックの「返金に応じないとネットに書く」脅迫への対応

【本記事の監修者】
弁護士 井上 正人(大阪弁護士会所属 / 登録番号:第43449号 / 夕陽ヶ丘法律事務所 代表弁護士)
※本記事は、ネット上の誹謗中傷削除・発信者情報開示命令(IPアドレス特定)・仮処分裁判実務に基づき、プロバイダ責任制限法および最新の判例に沿ってわかりやすく解説しています。

Q 自由診療クリニックで「返金しないとネットに悪評を書く」と患者に脅された場合、要求に応じず拒否しても法的問題はありませんか?
A 【法的判断基準】返金要求に応じる必要は一切ありません。「ネットに悪口を書く」と告げて金銭や返金を要求する行為は、刑法上の恐喝罪(第249条)や、クリニックの業務を妨害する威力業務妨害罪に該当する可能性が極めて高い明確な犯罪行為です。恐怖心から安易に応じると、さらなる標的にされる危険性があります。
【弁護士による解決】要求には一切応じず、脅迫のやり取りや音声などの証拠を保全した上で、直ちに警察へ被害相談を行いましょう。また、実際に悪質な口コミが投稿された場合は、弁護士を通じて投稿の削除仮処分申立て、発信者情報開示請求によるIP・氏名の特定、さらに慰謝料請求などの損害賠償請求を行うことが最も効果的かつ安全な解決策です。

自由診療のクリニックを経営、あるいは勤務されている方にとって、患者様とのトラブルは最も避けたい問題の一つです。しかし、中には施術の効果や費用に納得がいかないとして、理不尽な要求を突きつけてくるケースも存在します。

特に、「返金に応じなければ、Googleマップの口コミやSNSに悪口を書き込む」「ネットで晒して営業できなくしてやる」といった言葉で脅される被害が後を絶ちません。

このような悪質な要求に対して、クリニック側が恐怖心から安易に金銭を支払ってしまうと、さらなる要求の標的にされるだけでなく、医療機関としての信頼や秩序を大きく揺るがすことになりかねません。

本記事では、自由診療クリニックが直面する「ネット書き込みをちらつかせた脅迫」に対し、法律の観点からどのように毅然と対応すべきか、具体的なステップを交えて詳しく解説します。

「ネットに書くぞ」という要求が犯罪に該当する理由

患者様が施術に不満を感じた場合、正当なクレームを述べること自体は権利の範囲内といえます。しかし、その手段として「ネットへの悪評の投稿」をちらつかせ、金銭や不当な利益を得ようとする行為は、単なるクレーマーの域を超え、明確な犯罪行為となります。

恐喝罪の成立

刑法第249条に定められる恐喝罪は、人を恐喝して財物を交付させたり、財産上不法の利益を得たりすることで成立します。

「返金しないとネットに悪口を書く」という発言は、クリニック側に「ネット上で風評被害を受け、経営に重大な打撃を受けるかもしれない」という恐怖心を抱かせるものです。その恐怖心に乗じて金銭(返金)を要求する行為は、まさに恐喝そのものです。実際に金銭のやり取りが行われ未遂に終わった場合であっても、恐喝未遂罪が成立します。

威力業務妨害罪の成立

実際にネット上に事実無根の悪評や誹謗中傷を書き込まれた場合や、書き込むぞと脅して業務を混乱させた場合には、刑法第233条の威力業務妨害罪が成立する可能性があります。

「威力」とは、人の意思を制圧するに足りる勢力を指します。インターネット上で拡散力のある悪評を流布すると脅す行為は、まさにクリニックの正常な営業活動を妨害する威力に他なりません。

脅迫を受けたときにクリニックが取るべき初期対応

実際に患者からこのような脅迫を受けた際、パニックになってその場で返金してしまうのは最も避けるべき対応です。冷静に、かつ迅速に以下のステップで証拠の保全と防衛を行ってください。

  • 要求に応じない姿勢を明確にする:その場で曖昧な返事をしたり、恐れ入ったりせず、不当な要求には応じられない旨を毅然と伝えます。
  • 証拠を徹底的に残す・保全する:やり取りが電話や対面である場合は、可能な限り録音を行います。メールやSNSのメッセージ、LINEなどであれば、画面のスクリーンショットを必ず保存してください。発言日時、相手の氏名や連絡先も記録しておきますカルテの記録とも照らし合わせられるようにしておきましょう。
  • 院内での情報共有と安全確保:スタッフ全員が同様の脅迫を受けないよう情報を共有し、危険を感じる場合は速やかに警察に通報できる体制を整えます。

警察への被害届・告訴と、弁護士による法的アプローチ

証拠が揃ったら、警察への相談と弁護士への依頼を並行して進めることが、根本的な解決につながります。

警察への相談と被害届の提出

「ネットに書く」という脅迫は、私人間の民事トラブルではなく、立派な刑事事件です。最寄りの警察署にこれまでの経緯と証拠を持参し、相談を行ってください。

ただし、警察が直ちに捜査に動いてくれないケースも現実には存在します。「民事不介入」を理由に消極的な姿勢をとられることもありますが、弁護士が代理人として介入することで、事件性の高さを的確に伝え、警察の迅速な対応を引き出しやすくなります。

弁護士による警告書の送付と法的措置

弁護士に依頼する最大のメリットは、クリニックの代理人として相手に直接プレッシャーをかけられる点です。

弁護士名義で「恐喝罪や威力業務妨害罪に該当する可能性があるため、これ以上の脅迫およびネット上の誹謗中傷行為は直ちにやめるよう求める」旨を記載した警告書を内容証明郵便で送付します。これにより、感情的になっていた相手も冷静さを取り戻し、不当な要求を取り下げるケースが多々あります。

また、万が一実際にネット上へ悪質な書き込みをされてしまった場合でも、弁護士であれば以下の対応を速やかに行うことができます。

  • 発信者情報開示請求:書き込んだ人物のIPアドレスや住所・氏名を特定し、法的責任を追及する準備を進めます。
  • 投稿の削除請求:プラットフォームの管理者やプロバイダに対し、風評被害を生む書き込みの速やかな削除を求めます。
  • 損害賠償請求(民事訴訟):クリニックが受けた営業上の損害や精神的苦痛に対する慰謝料を請求します。

泣き寝入りせず、専門家への相談を

自由診療クリニックを標的にした「返金要求とネット晒しの脅迫」は、医療機関の社会的信用を人質にとる卑劣な行為です。恐怖心から要求を受け入れてしまうと、相手の要求はエスカレートし、さらなる被害を招く温床となります。

クリニックのブランドやスタッフの安全を守るためには、個人の判断で解決しようとせず、ネット誹謗中傷や医療トラブルに精通した弁護士へ早期に相談することが何よりも確実な解決策です。

夕陽ヶ丘法律事務所では、自由診療クリニックの皆様が直面する悪質な風評被害や脅迫トラブルに対し、証拠保全から警察対応、法的措置まで総合的なサポートを提供しております。理不尽な脅迫にお悩みの方は、どうぞ一人で抱え込まず、お気軽にご相談ください。

弁護士 井上正人

この記事の監修

弁護士 井上 正人
(いのうえ まさと)

大阪弁護士会所属(登録番号:43449)
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

相続や遺産分割、借金問題、既婚者との男女トラブルなど、日常の不測の事態に直面した皆様の心理的なご負担を少しでも和らげ、円満な解決を導くためのサポートを徹底して行っています。どんな小さなお悩みでも、まずは当事務所の事務スタッフがLINEのチャットにて丁寧にお話をお伺いいたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。

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