相手が海外のVPNを使って書き込んでいる場合、特定は諦めるしかないですか?

【本記事の監修者】
弁護士 井上 正人(大阪弁護士会所属 / 登録番号:第43449号 / 夕陽ヶ丘法律事務所 代表弁護士)
※本記事は、ネット上の誹謗中傷削除・発信者情報開示命令(IPアドレス特定)・仮処分裁判実務に基づき、プロバイダ責任制限法および最新の判例に沿ってわかりやすく解説しています。

Q 海外のVPNや匿名化ツールを使って誹謗中傷された場合、発信者の特定や損害賠償請求は諦めるしかないのでしょうか?
A 【結論と法的判断】海外のVPNを悪用した書き込みであっても、名誉毀損や侮辱罪に該当し、法的アプローチを尽くすことで特定できる可能性があります。プロバイダ責任制限法に基づき、国内の通信事業者やアクセスログを複合的に解析することが重要です。
【弁護士に依頼するメリット】専門弁護士がVPNサービスの特性やデジタル証拠を見極め、国内外の事業者に対する発信者情報開示請求や仮処分申立てを迅速に行うことで、損害賠償請求や刑事告訴へ繋げるための確実な道筋を切り拓くことができます。

はじめに:海外VPNによる誹謗中傷の増加と絶望感

インターネット上の掲示板やSNS、口コミサイトにおいて、悪質な誹謗中傷や事実無根の風評被害に悩まされる個人や企業が後を絶ちません。こうした被害に直面したとき、多くの被害者は発信者情報開示請求を行って相手の身元を特定し、損害賠償請求や刑事告訴を行おうと試みます。

しかし近年、加害者が自分の足跡を隠すために、海外のVPN(仮想プライベートネットワーク)やTorなどの匿名化ツールを悪用するケースが急増しています。

「海外のサーバーを経由しているから、日本の法律や警察では太刀打ちできないのではないか」 「海外企業を相手に裁判なんてできるわけがないから、特定は諦めるしかないのではないか」

このように絶望感を抱いてしまう相談者様が非常に多くいらっしゃいます。しかし、結論から申し上げますと、海外VPNを使われているからといって、特定を直ちに諦める必要はありません。技術的・法的なハードルは確かに高くなりますが、適切な手順を踏むことで、投稿者の身元にたどり着ける可能性は残されています。

本記事では、夕陽ヶ丘法律事務所の弁護士が、海外VPNを利用した誹謗中傷に対する法的な対抗手段と、特定に向けた実務上のアプローチについて詳しく解説します。

海外VPNとは何か?なぜ特定が難しいとされるのか

まずは、相手が利用している「海外VPN」の仕組みと、なぜそれが特定を困難にさせているのかという基本構造を整理しておきます。

VPNとは、インターネット上に仮想的な専用線を構築し、通信を暗号化してプライバシーを保護する技術です。本来は企業のセキュリティ向上や、個人のプライバシー保護のための正当なツールとして広く利用されています。

しかし、この仕組みを悪用すると、以下のような状態を作り出すことができます。

  • 日本のユーザーが、あたかもアメリカやヨーロッパなどの海外からアクセスしているかのようにIPアドレスを偽装できる。
  • 通信内容が暗号化されるため、プロバイダであっても実際の通信の中身や元のIPアドレスを容易には把握できないように見える。
  • VPNサービス提供会社(事業者)が海外の法域に存在する場合、日本の裁判所命令や弁護士会照会が容易に届かない、あるいは応じてもらえないことがある。

このような理由から、「海外VPN=完全な匿名化、特定不能」という誤った神話が広まってしまっているのです。

海外VPNを経由していても特定が可能な理由

では、なぜ海外VPNを使っていても特定を諦める必要がないのでしょうか。そこには、デジタル社会における通信の仕組みと、法的実務のノウハウがあります。主な理由は以下の3点です。

1. VPN接続前の「素のIPアドレス」やログが残っているケースがある

すべてのVPNユーザーが完璧な匿名化に成功しているわけではありません。設定の不備、ブラウザの脆弱性、あるいはVPN接続が一時的に切断された際に、本来の日本のIPアドレス(ISPから割り当てられたIP)がそのままサイト側に記録されてしまうことがあります(これをIP漏洩やDNSリークと呼びます)。

もし、サイト運営者やサーバーに対して迅速にログの保全を行わせることができれば、VPN経由のアクセスであっても、その背後にある国内の本当の接続元情報にヒットする可能性があります。

2. 国内の携帯キャリア回線や固定回線との複合的な足跡

加害者が普段から海外VPNを完璧に使いこなしているとは限りません。ある時はVPNを切り忘れて自宅のWi-Fiからアクセスし、ある時は別のアカウントで海外VPNを使うといった「運用のほころび」が生じることが多々あります。

弁護士が複数の投稿履歴やアカウント情報を分析することで、同一人物による一連の犯行であることが判明し、VPNを使用していない別の書き込みから足取りがつかめるケースも珍しくありません。

3. 海外VPN事業者に対する法的手続の可能性

海外に拠点があるVPNサービスであっても、米国の裁判所におけるディスカバリー制度(証拠開示手続)の活用や、現地の弁護士を通じた交渉・法的手続を行うことで、ログの開示を引き出せる余地があります。

すべての海外事業者が非協力的なわけではなく、名誉毀損や脅迫といった明らかな違法行為に対しては、適切な法的要請を行うことでログを開示する方針をとっている企業も存在します。

夕陽ヶ丘法律事務所が実践する具体的な解決ステップ

海外VPNが絡む誹謗中傷案件において、個人や一般的な対応力では太刀打ちできないケースが多いのは事実です。だからこそ、ネット被害や発信者情報開示請求に精通した弁護士法人による総合的なアプローチが必要となります。

当事務所では、以下のようなステップで実務に対応しています。

  1. 迅速な証拠保全と発信者情報仮処分・訴訟の提起
    時間が経つと、国内の通信プロバイダやSNS事業者のログが消去されてしまいます。海外VPNの影に怯える前に、まずは国内で取得可能なアクセスログやIPアドレスを迅速に保全するための法的措置を講じます。
  2. 通信経路の技術的解析
    専門的な知見を持つ調査機関やエンジニアと連携し、対象となったIPアドレスがどのVPNサービスのものか、どの程度の匿名性が保たれているのかを精緻に分析します。
  3. 国内プロバイダへの開示請求から特定へ
    分析の結果、国内の通信事業者のログに行き着いた場合は、通常の裁判手続と同様に発信者情報開示請求を行い、契約者の氏名・住所・メールアドレスの特定を目指します。

「諦めるしかない」と悩む前に、まずは専門家へご相談を

ネット上の誹謗中傷や風評被害において、相手が海外VPNを使っているという情報は、加害者が自らを防衛するために誇張している場合や、単なる憶測である場合も少なくありません。

「海外だから無理だ」と自己判断して投稿を放置してしまうと、消去されては困る重要なアクセスログの保存期限が切れてしまい、本当に特定が不可能になってしまうという最悪の事態を招きかねません。

相手がどのような技術を使っていようとも、法律とデジタル実務の双方に通じた専門家であれば、突破口を見つけ出すための最善のルートを導き出すことができます。

夕陽ヶ丘法律事務所では、海外VPNや匿名化ツールが悪用された複雑な誹謗中傷・風評被害の対策実績を多数有しています。「うちのケースでも特定できるだろうか」「どこに相談すればいいか分からない」とお悩みの方は、ぜひ一度、当事務所の初回法律相談をご利用ください。あなたの名誉と平穏を取り戻すため、私たちが全力でサポートいたします。

弁護士 井上正人

この記事の監修

弁護士 井上 正人
(いのうえ まさと)

大阪弁護士会所属(登録番号:43449)
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

相続や遺産分割、借金問題、既婚者との男女トラブルなど、日常の不測の事態に直面した皆様の心理的なご負担を少しでも和らげ、円満な解決を導くためのサポートを徹底して行っています。どんな小さなお悩みでも、まずは当事務所の事務スタッフがLINEのチャットにて丁寧にお話をお伺いいたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。

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