【弁護士に依頼するメリットと法的対応】IPアドレスの保存期間は極めて短いため、ログが消失する前に迅速な発信者情報開示請求や発信者情報消去禁止の仮処分を行う必要があります。誹謗中傷や名誉毀損による精神的苦痛に対して損害賠償請求を検討している場合は、専門知識を持つ弁護士に早期に相談し、適切な証拠保全と法的手続きを進めることが不可欠です。
X(旧Twitter)上で誹謗中傷や名誉毀損の被害に遭ったとき、投稿者を特定して損害賠償請求や刑事告訴を行うためには、プロバイダ責任制限法に基づく「発信者情報開示請求」を行う必要があります。
この手続きの中で、しばしば問題となるのが「ログインIP」と「投稿IP」のどちらが開示対象となるのか、という点です。インターネット上の発信者特定において、この2つのIPアドレスの違いは非常に重要な意味を持ちます。
夕陽ヶ丘法律事務所の弁護士が、それぞれの違いや開示請求における実務上の取り扱いについて詳しく解説します。
IPアドレスとは?「ログインIP」と「投稿IP」の基本的な違い
IPアドレスとは、インターネット上の住所のようなものです。デバイスが通信を行う際に必ず割り振られる番号であり、これを確認することでどの通信回線からアクセスがあったのかを特定できます。
Xの特定手続きにおいて、これらは次のように区別されます。
- ログインIPアドレス: ユーザーがXのアカウントに「ログインした瞬間」に記録されるIPアドレスです。アプリを起動した際や、ブラウザからログインし直した際に記録されます。
- 投稿IPアドレス: 問題となっている特定の「ツイート(ポスト)を投稿した瞬間」に記録されるIPアドレスです。実際にその誹謗中傷文言を発信した通信の記録となります。
- タイムスタンプ: IPアドレスとセットで必要になるもので、その通信が行われた正確な日時(年月日、時分秒)を指します。
一見すると同じように思えるこの2つですが、「ログインしたからといって、その直後に必ず投稿したとは限らない」という点が、法的手続きにおいては大きな違いを生みます。
なぜ「投稿IP」の特定が重視されるのか
発信者情報開示請求を行う際、裁判所に対して「この投稿を行ったのは誰か」を立証しなければなりません。
裁判実務において、投稿者を特定するための最も強力な証拠となるのが「投稿IPアドレス」です。
- 確実な紐付け: 問題の投稿が行われた「その瞬間」の通信ログであるため、投稿行為とIPアドレスが1対1で直結します。
- プロバイダからの特定精度: プロバイダ(ドコモ、ソフトバンク、au、光回線各社など)は、日時とIPアドレスを元に、その時間にどの契約者がルーターを使用していたかを特定します。投稿IPであれば、その時間にその書き込みをした契約者を高い確度で割り出すことができます。
これに対して、ログインIPの場合、「朝にログインしたきり、数時間放置した後に別人が投稿したのではないか」「公共のWi-Fi等でログインした際のIPアドレスだった」といった反論の余地が生まれやすくなります。そのため、投稿そのものを特定するためには、可能であれば投稿IPを取得することが望ましいとされています。
近年の法改正と「ログインIP」をめぐる最新動向
令和4年10月に施行された改正プロバイダ責任制限法(現・情報流通プラットフォーム対処法)により、発信者情報開示請求の手続きは大きく変わりました。
従来は「裁判手続きを2段階(SNS事業者に対する仮処分・訴訟、その後のプロバイダに対する訴訟)で行う必要があり、数ヶ月から1年以上の時間がかかっていました。この間にSNS事業者がIPアドレス等のログを消去してしまうリスクが大きな課題でした。
しかし、新設された「発信者情報開示命令」という非訟手続(裁判よりも迅速な手続き)により、ログインIPや投稿IPの開示をスムーズに求めることができるようになりました。
この法改正以降、裁判所における判断の中で、以下のような実務運用が見られます。
- X側が保有するログにおいて、投稿時の正確なIPアドレス(投稿IP)が保存されている場合は、当然それが開示対象となります。
- 通信環境やX側のシステム仕様の変更により、投稿IPの保存期間が極めて短い場合や、ログインに関するログと一体で管理されている場合などにおいては、ログインIPアドレスの開示請求が認められるケースも増えています。
特に近年の裁判例では、アカウントにログインした状態での継続的な利用実態や、ログインから投稿までの時間的近接性を考慮し、ログインIPであっても発信者情報の特定に十分資ると判断される場合があります。
開示請求を行う際に注意すべきポイント
X(旧Twitter)からの情報開示請求を検討する際、ログインIPと投稿IPのどちらを狙うべきか、あるいは両方請求すべきかについては、専門的な判断が求められます。
1. ログの保存期間の壁
Xをはじめとする海外SNS事業者は、日本国内の企業に比べてIPアドレスなどのアクセスログの保存期間が短い傾向にあります。一般的に、ログインIPや投稿IPの保存期間は数週間から数ヶ月程度と言われており、時間が経過するほどログが消去されてしまうリスクが高まります。 誹謗中傷を発見した場合は、一刻も早く弁護士に相談し、証拠保全や開示請求の手続きに着手することが不可欠です。2. どのIPが残っているかの見極め
実際の裁判手続き(または開示命令申立)では、X社に対して「どのようなログが残っているか」を的確に求釈明していく必要があります。投稿IPがすでに消去されている場合でも、ログインIPが残っていれば、そこから契約者特定へ繋げられる可能性を模索します。3. 発信者情報開示命令の活用
前述の通り、迅速な手続きが可能な新制度を利用することで、証拠隠滅を防ぎながらログインIPや投稿IPの開示を効率的に目指すことができます。個人の判断だけで海外企業であるX社とやり取りするのは極めて困難なため、SNSの仕様や最新の裁判実務に精通した弁護士のサポートが強く推奨されます。まとめ:投稿特定でお悩みなら夕陽ヶ丘法律事務所へご相談ください
X(旧Twitter)の投稿特定において、「ログインIP」と「投稿IP」のどちらが開示されるかは、投稿日時におけるログの保存状況や裁判所の判断によって変わります。原則としては確実性の高い「投稿IP」が重視されますが、状況に応じて「ログインIP」を活用した柔軟なアプローチも必要となります。
ネット上の誹謗中傷や風評被害を放置すると、被害が拡大するだけでなく、時間経過とともに決定的な証拠(IPアドレス)が消えてしまう恐れがあります。
夕陽ヶ丘法律事務所では、数多くのネット中傷・発信者情報開示請求を手掛けてきた実績があります。ログインIPや投稿IPの確保に関するスピード対応から、プロバイダを相手取った損害賠償請求まで、一貫してサポートいたします。Xの誹謗中傷でお困りの方は、ぜひ当事務所の初回相談をご活用ください。