大学教授、准教授、研究員、あるいは大学院の博士課程に在籍する研究者や学者という立場は、社会的な信用が非常に高く、多くの人が「誠実で嘘をつかない人物」という印象を抱きがちです。
しかし、その高い社会的地位や専門的なスケジュールを悪用し、巧妙に既婚であることを隠して交際を迫る悪質なケースが後を絶ちません。特に「海外学会への出席」「地方の国立大学での共同研究」「泊まり込みのフィールドワーク」などを言い訳に使われた場合、被害に遭われた方は「本当に仕事が忙しいのだ」と信じ込まされてしまいます。
研究者・学者を装う既婚男性の巧妙な手口と「出張」の言い訳
アカデミアの世界は、一般企業とは異なる独特のスケジュールや閉鎖的な環境を持っています。既婚男性がこの環境を利用して独身を偽る際、以下のような特徴的な言い訳が使われることが多くあります。
1. 海外学会・国際カンファレンスを口実にした連絡遮断
「数日間、時差のある地域で大きな学会の発表や座長を務める」「現地の研究者とディスカッションがある」といった理由を使い、連絡が取れない時間や数日間の音信不通を正当化します。実際には、この期間は自宅で家族と過ごしているケースが少なくありません。
2. 地方出張や研究合宿を利用した不定期な密会
「大学の実験が深夜まで及ぶ」「地方の研究所へ泊まり込みでデータ解析を行う」などと言い、週末や連休、年末年始といった本来なら家族と過ごすべき時期にパートナーと会う時間を作ります。
3. 社会的ステータスを利用した心理的誘導
「自分は研究者として多忙であり、私生活で面倒な駆け引きをする時間はない」「真面目な人間である」というイメージを巧妙に植え付け、疑う余地を与えない心理的トリックを用います。
既婚を隠して性交渉を持った場合の法的責任:貞操権侵害とは
日本の民法上、独身と偽って結婚の期待を持たせたり、性交渉を重ねたりする行為は、相手の自己決定権や人格的利益を侵害するものとして、不法行為(民法709条)に該当します。
最高裁判例の法理に照らしても、婚姻関係にあることを秘して交際関係を結ぶことは、相手が本来持っている「相手が独身であるならば交際や性交渉を持たなかった」という自由な意思決定を奪うものであり、重大な権利侵害(貞操権侵害)と評価されます。
研究者という立場であるからといって、法的責任が免除されることは一切ありません。むしろ、社会的地位や信用を利用して相手を深く信じ込ませた行為は、精神的苦痛の大きさを考慮する上で、慰謝料の増額要素として働かせることが可能です。
被害に直面した際に行うべき事実確認と証拠の保全
泣き寝入りせず、適正な慰謝料請求や法的措置を行うためには、客観的な証拠の収集が不可欠です。
- 相手から送られてきた「学会のスケジュール」「出張の連絡」に関するメール、チャットアプリの履歴、フライトの予約画面などの記録
- 交際期間中に撮影された写真や、デートの領収書、宿泊を証明するもの
- 既婚者であることを証明する証拠(戸籍謄本の取得や、配偶者の存在を示す客観的資料)
これらを整理し、個人で無理に大学や研究室へ押し掛けるのではなく、弁護士を通じた法的なアプローチを検討することが重要です。
大学・研究機関への照会と弁護士による法的請求のアプローチ
「彼が本当にその大学に所属しているのか分からない」「学会や出張が嘘だったのか確かめたい」とお悩みの場合、弁護士会照会(弁護士法第23条の2に基づく照会)や、受任通知の送付、内容証明郵便を用いた請求手続きが有効な手段となります。
大学・研究機関へのアプローチ
弁護士が代理人として介入する場合、必要に応じて勤務先である大学や研究機関に対して正式な通知や照会を行うことがあります(※事案の性質や目的に応じて慎重に判断されます)。これにより、相手男性に対して逃げ場のない状況を作り出し、真摯な話し合いのテーブルにつかせることが可能です。
示談交渉および慰謝料請求
内容証明郵便によって、独身偽装による貞操権侵害の慰謝料を請求します。相手が社会的地位や大学での立場を失うことを恐れ、早期の示談解決に応じるケースも多く見られます。
まとめ:研究者の嘘に直面したときは法的アプローチの検討を
研究者や学者という高い知性や社会的信用を持つ人物から裏切られたショック、そして「海外出張や学会の予定はすべて偽りだったのではないか」という絶望感は、心身に大きなダメージを与えます。
独身と偽って不誠実な交際を続けられた事実に対しては、貞操権侵害に基づく慰謝料請求という形で法的責任を追及することが可能です。泣き寝入りせず、確実な証拠を集めた上で、男女トラブルや貞操権侵害に精通した弁護士へ早めにご相談ください。