独身と偽って交際・性交渉を行う「独身偽装(貞操権侵害)」のトラブルにおいて、相手の男性が「自分は副業をしている」「個人事業主として独立している」などと称し、本名や本当の居住地、勤務先を煙に巻く事例が後を絶ちません。
既婚男性が「個人事業主」を隠れ蓑にする手口と問題点
交際相手に対して自身を独身に見せかける際、「本業は会社員だが副業で個人事業主をしている」「フリーランスで働いている」と説明する既婚男性は少なくありません。
会社名や勤務先を明確にせず、連絡手段も個人のチャットアプリや特定の時間帯に限定される場合、相手の本当の社会的信用や生活基盤を把握することが極めて困難になります。
身元を隠す背景にあるリスク
- 自宅への郵便や突撃を防ぎ、妻や家族に不貞行為が発覚するのを徹底的に回避するため
- 慰謝料請求や貞操権侵害による損害賠償請求を受けた際、所在をくらまして逃げるため
- 自身の資産や収入状況を偽り、慰謝料の支払能力がないように見せかけるため
このように、身元を秘匿した上での独身偽装は、被害に遭われた方の精神的・経済的負担をさらに増大させる悪質な行為と言えます。
屋号やネット上の情報から「個人事業主」を特定する手がかり
相手が個人事業主や副業を行っている場合、完全に足跡を消しているつもりでも、ビジネス上の義務や手続きの過程で微細な痕跡が残されているケースが多々あります。
1. 特定商取引法に基づく表記(WEBサイト・SNS)
相手が何らかのサービス、コンテンツ、物販などの副業・個人ビジネスを展開している場合、ランディングページやブログ、SNSのプロフィール等に「特定商取引法に基づく表記」を掲載する義務があります。
- ここには原則として、運営者の氏名、住所、電話番号の記載が法律で義務付けられています(※バーチャルオフィスやレンタルオフィスの住所であっても、そこから管理会社を辿ることで本人の実住所に近づくことが可能です)。
2. 名刺、振込先口座、請求書等の記録
交際期間中に受け取った名刺の屋号、請求書、あるいはビジネス用の銀行口座(振込先の名義や口座番号)を手がかりに、金融機関や決済代行会社に対する調査を行うための足がかりを得ることができます。
3. 税務署への申告・事業実態
個人事業主として活動している以上、税務署への開業届や確定申告を行っているはずです。私的な調査では税務情報を直接見ることはできませんが、裁判所を通じた手続きや弁護士会照会を活用することで、事業実態や所在を法的権限に基づいて確認していく道が開けます。
弁護士の権限と裁判手続きによる住所・資産特定のステップ
相手の正確な住所や本名が割れていない段階でも、弁護士が介入することで合法的な特定ルートを進めることができます。
弁護士会照会(弁護士法第23条の2に基づく照会)
弁護士会を通じて、関係する企業や団体、通信事業者、金融機関等に対して必要な事項の報告を求める制度です。
- 例えば、相手が利用していた決済サービスやドメイン登録情報、事業用口座の履歴などから、契約者情報や実態に迫ることが可能です。
訴訟提起における「就業先・財産の調査」と送達
相手の本名や大体の居所(あるいは事業所の所在地)が判明した段階で、慰謝料請求訴訟を提起します。
- 訴状の送達先が不明確な場合でも、裁判所の調査手法や弁護士の職務上請求等を用いることで、住民票上の住所や実態に即した送達先を突き止め、裁判手続きを進行させることができます。
給与以外の「事業用資産」に対する差押え(強制執行)
裁判や示談によって慰謝料の支払いが確定したにもかかわらず、相手が支払いに応じない場合、強制執行(差押え)を行うことになります。
通常の会社員であれば給与の差押え(給与債権の執行)が有効ですが、相手が「個人事業主」や「副業オーナー」である場合、給与以外の資産に目を向ける必要があります。
個人事業主・副業男性に対する主な差押え対象
- 事業用銀行口座の預貯金: 取引先から売上の入金がある事業用口座を特定できれば、預貯金債権に対する差押えが極めて効果的です。
- 売掛金債権: 相手が外部の企業やクライアントに対して有している「売掛金(報酬請求権)」を差し押さえることで、クライアントから直接お金を回収することが可能です。
- 事業用動産やその他の資産: 自宅や事務所等に価値のある動産(PC、機材、在庫等)が存在する場合、執行官の同行による動産執行を検討することもあります。
独身偽装によるトラブルを解決するためのまとめ
副業や個人事業主という肩書を隠れ蓑にして既婚者であることを隠し、さらに自身の身元さえも曖昧にして責任逃れを図る既婚男性の態度は、被害者の尊厳を踏みにじる許されざる行為です。特に行政やビジネス上の公的情報、WEB上の特商法表記、金融・決済の履歴といった微細な手がかりは、プロフェッショナルな視点から十分に法的追求の足がかりとなり得ます。相手の正確な居所や本名が割れていない段階であっても、法律上の権限を適切に行使することで居場所を割り出し、慰謝料や損害賠償の請求、さらには事業用資産の差し押えへとつなげていくことは十分に可能です。一人で証拠集めに行き詰まってしまう前に、専門的な法的サポートを活用し、正当な権利を取り戻すための第一歩を踏み出してください。