留学やMBAを口実にする既婚者の手口と独身偽装
マッチングアプリや知人の紹介などで出会った男性から、「これから海外留学に行く」「国内・海外でMBAを取得するための準備期間中だ」「不定期で長期出張が入る」などと告げられ、連絡が取れない時期や会えない理由を納得させられた経験はないでしょうか。
ステータス性の高い理由を盾にされると、女性側は「彼のキャリアの邪魔をしてはいけない」「忙しいのだから仕方がない」と気を遣ってしまい、怪しいと感じつつも深く追及できなくなってしまいます。しかし、この「海外留学・MBA取得」というシナリオ自体が、実は日本国内で妻子と暮らす実態(本宅生活)を隠すための巧妙な嘘であるケースが後を絶ちません。
こうした「留学嘘・既婚隠し」に翻弄され、心身ともに深い傷を負った方からのご相談は数多く寄せられています。
独身偽装と貞操権侵害の法的構成
既婚者が独身であると偽って交際し、性交渉を行う行為は、性的な自己決定権や貞操権を侵害する違法な行為です。最高裁判所の判例等においても、婚姻関係にある者がこれを隠して独身者と偽り、異性と性的関係を持つことは、相手方の法的保護に値する利益を侵害するものとして不法行為(民法709条)を構成すると解されています。
特に、「海外留学」や「MBA取得」といった、長期間にわたって物理的な距離や多忙さを信じ込ませる手の込んだ嘘は、被害者を長期にわたって欺き続ける点で精神的苦痛の程度が非常に大きいと評価されます。
貞操権侵害が認められやすい要素
- 独身であると積極的に、または巧妙に偽っていた事実
- 連絡が取れない期間の言い訳として「留学」「出張」などの虚偽のストーリーを利用していたこと
- 虚偽が発覚した際の不誠実な対応や、精神的ショックによる影響
日本国内での「本宅生活」を暴くための調査アプローチ
「留学中」と聞かされていた相手が、実際には日本国内の自宅から通勤し、週末は家族と過ごしていたという事実を立証するためには、感情的な追及ではなく客観的な証拠の積み重ねが不可欠です。
実務上重視される証拠の例として、以下のようなものが挙げられます。
- 相手の実際の生活拠点(本宅)を特定する住民票情報や不動産登記情報(法的手続きの過程で取得)
- クレジットカードの利用履歴や交通機関の利用記録(国内にいた動かぬ証拠)
- LINEやメール等のやり取りの中で「留学先」と称していた時期の国内からの発信・行動記録
- 探偵事務所等による調査報告書(国内の自宅に出入りしている写真や動画)
相手が「自分は海外にいる」と主張している場合であっても、SNSの裏アカウントやデジタルフットプリント、あるいは第三者の証言などから、日本国内に生活基盤があったことを論理的に突き詰めていくことが可能です。
既婚者からの不当な不貞慰謝料請求(ダブルトラブル)への備え
こうした「独身偽装交際」のトラブルにおいて、さらに深刻な問題となるのが、後から相手の妻(配偶者)が発覚し、今度は妻側からあなたに対して不貞慰謝料が請求されるという「ダブルトラブル」の発生です。
「騙されていただけなのに、なぜこちらが妻に慰謝料を払わなければならないのか」と理不尽に思われるのは当然です。最高裁判所の判例では、既婚者であることを知らず、かつ知らなかったことについて過失がない(=完全に独身だと信じ込むだけの相当な理由があった)場合には、妻からの慰謝料請求を拒絶できるとされています。
しかし、妻側は「既婚者であると気づくべき事情があったはずだ(過失がある)」と主張してくることが多いため、相手の巧妙な「留学・MBA詐称工作」がいかに周到であったかを客観的な証拠をもって証明し、ご自身の「無過失」を法的に主張・立証していく必要があります。
まとめ:「海外留学・MBA」の嘘に直面したときに行うべきこと
「海外留学」や「MBA取得」という聞こえの良い嘘に騙され、貴重な時間を奪われた上に、精神的な苦痛を受けた被害者の皆様は、決して泣き寝入りする必要はありません。
独身偽装による貞操権侵害に対する損害賠償請求だけでなく、予期せぬ配偶者からの不当な慰謝料請求(ダブルトラブル)に対する防御も含め、客観的な証拠を揃えて適切に対処することが重要です。一人で抱え込まず、早めに法的視点を取り入れた対策を検討することをお勧めします。