在宅勤務(テレワーク)と業場外みなし労働時間制
2023/05/24 更新
在宅勤務(テレワーク)と時間管理
(1)社員を出社させずに、自宅で仕事させることを、在宅勤務といいます。
(2)在宅勤務(テレワーク)のリスクとして、時間管理が難しく、未払い残業代が発生するリスクや、従業員の健康被害のリスクがあります。
時間管理の難しさ
(1)自宅で働く社員の労働時間を管理することは困難です。
(2)自宅では作業効率が下がるために、長時間残業になりがちです。
(3)仮に、会社に出勤を命じていたときと同じ仕事量をお願いしていたら、在宅勤務では倍の時間がかかったとして、パソコンの履歴を理由に残業代請求をされたらどうなるのか、社員の健康管理に問題が生じないのか、これらがリスクとなります。
社員の自己申告による労働時間の管理
(1)在宅勤務(テレワーク)については、社員に日報を提出させ、自己申告で労働時間を申告させた方がよいと思います。
(2)出社する日と出勤しない日を作り、出勤した日についても日報を導入し、出勤日と見比べることで、自宅での仕事量やこれにかかる時間についてある程度把握可能な状態にすることをお勧めします。
(3)管理職には、日報等を使って部下の仕事量を把握し、部下とコミュニケーションを取る能力が必要になります。
業場外みなし労働時間制
(1)事業場外見なし労働時間制は、①社外で社員に仕事をさせて、②その社員の労働時間の算定が困難であると認められるときには、③(実際の労働時間ではなく)その業務を遂行するのに通常必要な時間を労働時間として計算する、制度です。
(2)つまり、労働時間の算定が困難であるときに、労働者の行った業務を特定し、その業務を遂行するのに通常必要な時間を労働時間として計算する方法です。
(3)業場外みなし労働時間制だからといって、残業代が発生しない制度ではありません。例えば、仕事量からして、残業が発生すべき場合には残業代の支払い義務が発生します。
(4)具体的な要件については、「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」等を参考にしてしてください。
https://www.mhlw.go.jp/content/000766329.pdf
(5)自宅で社員に仕事をさせて、1日の仕事のスケジュールを社員に任せます。例えば、「電話で折り返してすぐに返事をさせる」等の即時対応を迫ったりすることは許されません。例えば、社員が子供を幼稚園に迎えに行き、その後自分のペースで仕事をすることを認める必要があります。
「テレワークでの業場外みなし労働時間制」は、社員に仕事をする時間の自由を認める制度です。社員に仕事をする時間を認めるからこそ、「労働時間の算定が困難である」という認定がされることになります。
(6)業務外みなし労働時間制の要件を満たさない場合には、実際にかかった労働時間を計算することになります。しかし、例えば、先ほどのように、社員が子供を幼稚園に迎えに行く等の時間があれば、始業時刻と終業時刻だけでは労働時間を把握できません。その場合には、仕事を特定した上でその仕事にかかる時間を把握するしかなく、結局、同様の結論になります。
在宅勤務(テレワーク)の労働時間の管理
(1)先ほど、「テレワークにおいては、日報を提出させ、自己申告で労働時間を申告させた」方がよいと思いと述べました。これはテレワークの良さを活かす方法での時間管理方法です。
(2)上記の方法については、「自己申告での労働時間の把握は認められており、通常の時間把握の方法である。」とも理解できますし、「事業場外みなし労働時間制の時間把握の方法である。」とも理解できます。どちらも、適正な労働時間の把握の方法として、時間で把握するのかそれとも、仕事を特定した上でその仕事にかかる時間を把握するものかの違いでしかなく、結論(計算される労働時間)は同じになるはずです。
つまり、業務外みなし労働時間制の要件を満たすどうかについて難しく考える必要はありません。あくまで「労働時間を適正に把握する方法を採用する」ことが大事です。
(4)結論として、テレワークの時間管理ついては、「日報を提出させ、自己申告で労働時間を申告させる」方法でもよいですし、「クラウドソフト等を使って機械的に労働時間を管理する」方法もどちらでもよいですが、会社としてはしっかりとした時間管理が必要となります。