【弁護士による実務的解決】相手が慰謝料を支払わない場合、弁護士会照会や財産開示手続を活用して勤務先や金融機関口座を特定し、損害賠償金の回収を確実に実現するためのサポートを受けることができます。
ネット上の誹謗中傷や風評被害において、発信者情報開示請求によってようやく加害者を特定し、裁判で勝訴あるいは和解して損害賠償金の支払いが認められたとしても、相手が素直にお金を支払ってくるとは限りません。
「裁判に勝ったのに、加害者が慰謝料を払ってくれない」というケースは非常に多く、その場合の次のステップとして必要になるのが、加害者の財産を強制的に差し押さえる強制執行です。
なかでも、加害者の給与や銀行預金などの金銭債権を差し押さえる方法は、実効性が高くよく使われる手段ですが、ここで大きな疑問が生じます。
それは、「加害者の銀行口座を差し押さえるにあたって、肝心の口座番号が分からなくても本当に大丈夫なのか」という点です。
本記事では、夕陽ヶ丘法律事務所の弁護士が、口座番号が分からない状態からどのようにして銀行口座の差押えを実現するのか、その具体的な仕組みと実務的な解決策について詳しく解説します。
銀行口座の差押えに「口座番号」は絶対必要?
裁判所に「債権差押命令」の申し立てを行う際、差し押さえる財産を特定する必要があります。銀行預金を差し押さえる場合、一般的には以下の情報が必要となります。
- 金融機関名(例:〇〇銀行)
- 本支店名(例:〇〇支店)
- 預金の種類(普通預金、当座預金など)
- 口座番号
- 口座名義人
ここで、「口座番号が分からないと差押えの申し立てができないのではないか」と不安になる方が多いのですが、実は実務上、口座番号が不明であっても「支店名」まで特定されていれば、差押えの申し立てを受け付けてもらえるケースがほとんどです。
裁判所や金融機関によっては、同一支店内に名義人と一致する口座が1つであれば、番号が特定されていなくてもその口座に対して差押えの効果が及ぶ運用がなされているためです。
ただし、注意しなければならないのは、「どこの銀行の、どの支店に口座を持っているか」という最低限の情報(金融機関名と支店名)は絶対に必要不可欠であるという点です。
「日本のどこかの銀行に口座を持っているはずだ」という漠然とした状態では、特定の銀行に対して差押えを申し立てることはできません。
金融機関名や支店名が分からない場合の調べ方
「加害者の氏名や住所は分かったけれど、どこの銀行の口座を持っているかなんて分からない」という場合はどうすればよいでしょうか。
ここからは、発信者情報開示請求や裁判の過程、あるいはその後の調査において、加害者の銀行口座情報を突き止めるための主な方法を解説します。
発信者情報開示請求の過程で判明するケース
ネット上の誹謗中傷対策として、まずプロバイダ責任制限法に基づく発信者情報開示請求を行います。
この過程で、経由プロバイダや携帯キャリアなどに対して発信者の氏名、住所、メールアドレスだけでなく、料金引き落としのために登録されていたクレジットカード情報や銀行口座情報が開示されることがあります。
すべてのケースで金融機関情報まで開示されるわけではありませんが、任意開示や訴訟のなかで相手の支払情報が明らかになる場合があり、これが強力な手がかりとなります。
裁判の過程での「和解条項」や「陳述書」の活用
損害賠償請求訴訟を行う際、法廷や和解の話し合いの場で、加害者が自身の経済状況について言及したり、任意の分割払いに応じたりすることがあります。
その際、弁護士が交渉を通じて「給付金の振込先」や「支払い用口座」の情報を聞き出したり、財産状況に関する資料を出させたりすることが可能です。
財産開示手続の利用
相手の住所や氏名は分かっているものの、持っている口座が全く分からない場合の切り札として、民事執行法に基づく「財産開示手続」という制度があります。
これは、裁判で勝訴した債権者(被害者)が、裁判所を通じて債務者(加害者)を呼び出し、どのような財産を所有しているかについて強制的に陳述させる手続きです。
財産開示手続の期日に債務者が出頭し、自身の保有する銀行口座(金融機関名や支店名、口座番号)について陳述することを義務付けられます。ここで虚偽の陳述をしたり、正当な理由なく出頭しなかったりした場合には、刑事罰(罰則)の対象となるため、高い実効性が期待できます。
第三者からの情報提供手続(預貯金情報等の開示請求)
2020年の民事執行法改正により、新たに導入された非常に強力な制度が「第三者からの情報提供手続」です。
これは、財産開示手続と連動して利用できるもので、裁判所を通じて、市区町村や日本年金機構、そして銀行などの金融機関に対し、債務者の財産に関する情報の提供を命じてもらうよう申し立てる制度です。
この制度を利用すれば、例えば「全国の銀行に対して、この人物名義の口座があるかどうかを照会する」といったことが可能になります(※正確には、預貯金債権に関する情報を保有する金融機関等を特定するための手続を経る必要があります)。
これにより、口座番号はもちろん、どの金融機関のどの支店に預金があるのか分からない状態であっても、法的なアプローチによって隠された口座を割り出す道が開かれています。
口座差押えを成功させるための実務上の注意点
口座番号が分からなくても支店名が分かれば差押えができる、あるいは法的手続で口座を調べられるとはいえ、実際の強制執行にはいくつかのハードルやタイムリミットが存在します。
誹謗中傷被害の解決において、スムーズに賠償金を回収するために以下のポイントを押さえておくことが重要です。
- 残高がなければ回収できない(空振りリスク): 銀行口座の差押えは、命令がその金融機関に届いた瞬間に口座内にある残高に対してのみ効力を発揮します。もし差押えのタイミングで口座残高がゼロであれば、1円も回収できません(いわゆる「空振り」)。
- 事前のリサーチが重要: 加害者が普段使っていそうなメインバンクや、給与が振り込まれている可能性の高い勤務先近くの支店など、当たりをつけておくことが回収成功の確率を上げます。
- タイムリミット(時効): 損害賠償請求権の消滅時効(通常は損害および加害者を知った時から3年、判決確定後は10年)に注意し、迅速に強制執行の準備を進める必要があります。
まとめ:口座が不明でも諦めずに弁護士へご相談を
ネット誹謗中傷の加害者を特定し、損害賠償請求の判決を得た後、「口座番号が分からないから差押えは無理かもしれない」と諦めてしまう方は少なくありません。
しかし、解説してきた通り、「〇〇銀行〇〇支店」という支店名までの特定や、財産開示手続・第三者からの情報提供手続といった法的な調査手段を活用すれば、口座番号が不明な状態からでも預金口座を差し押さえて賠償金を回収することは十分に可能です。
相手の財産情報を個人で調査し、複雑な裁判所の申し立て手続きを一人で行うのは、精神的にも時間的にも大きな負担となります。
ネット誹謗中傷・風評被害対策や、その後の強制執行(金銭回収)の実績が豊富な弁護士法人に早めにご相談いただくことで、加害者の財産調査からスムーズな差押え実行までをワンストップでサポートいたします。
「加害者を特定したがお金を払ってもらえない」「相手の口座がどこにあるか分からない」とお悩みの方は、ぜひ当事務所の法律相談をご活用ください。