TikTokで「店舗の料理に髪の毛が入っていた」と動画を投稿されました。

【本記事の監修者】
弁護士 井上 正人(大阪弁護士会所属 / 登録番号:第43449号 / 夕陽ヶ丘法律事務所 代表弁護士)
※本記事は、ネット上の誹謗中傷削除・発信者情報開示命令(IPアドレス特定)・仮処分裁判実務に基づき、プロバイダ責任制限法および最新の判例に沿ってわかりやすく解説しています。

Q TikTokに飲食店で髪の毛が入っていたという嘘の動画を投稿され売上が激減しています。動画の削除や投稿者の特定はできますか?
A 【法的判断と削除申請のポイント】事実無根の動画による風評被害は刑法上の名誉毀損罪や業務妨害罪に該当する可能性が高く、TikTok(ByteDance社)に対し、店舗の衛生管理が適正であることを証明する保健所の調査結果を添えて迅速に削除申請を行うことが効果的です。
【弁護士による開示請求と損害賠償】放置すると被害が拡大するため、動画データやアカウント情報を保全した上で弁護士に依頼し、プロバイダ責任制限法に基づく発信者情報開示請求(IP・氏名特定)や、損害賠償請求を行うことで法的責任を追及することが可能です。

TikTokでの飲食店に関するデマ・悪質動画の脅威

近年、ショート動画プラットフォームであるTikTokにおいて、飲食店に関する不衛生な事実をねつ造した動画が投稿されるトラブルが急増しています。

「注文した料理に髪の毛が入っていた」「店員の態度が著しく悪かった」といった事実無根の動画は、エンターテインメントやバズ(拡散)を目的として面白半分に投稿されるケースが少なくありません。

しかし、飲食店を経営する事業者にとって、こうした悪質な風評被害は文字通り死活問題です。

動画を見たユーザーが真実であると誤認し、店舗の評価が急落するだけでなく、予約のキャンセルや売上の激減、さらには従業員のモチベーション低下といった深刻なダメージをもたらします。

感情的に反論したり放置したりするだけでは、被害は拡大する一方です。

このような状況に直面した際、店舗側は冷静かつ迅速に法的・実務的な対抗措置を講じる必要があります。

初動対応:証拠の保全と保健所の活用

悪質な投稿を発見した場合、まず行うべきなのは決定的な証拠の保全と、公的機関の客観的な事実証明の獲得です。

動画データの確実な保全

投稿された動画は、いつ削除されたり非公開にされたりするか分かりません。

動画のURLを控えることはもちろん、動画ファイルそのもののダウンロード、投稿者のアカウント名、ID、投稿日時、該当するコメント欄の状況などをスクリーンショットや画面録画で残しておきましょう。

万が一、投稿者がアカウントを削除して逃亡した場合でも、これらの証拠があれば後からの特定作業がスムーズになります。

保健所による衛生調査の受検

料理に髪の毛が入っていたというクレームや動画投稿があった場合、店舗として最も強力な武器となるのが保健所による衛生調査の結果です。

デマ動画を投稿された直後に自ら所轄の保健所に連絡し、事情を説明した上で店舗の衛生管理状況についての臨検(調査)を依頼してください。

「店舗側に衛生上の不備は認められなかった」「適切な管理が行われている」という旨の公的な見解や記録を得ることができれば、それがTikTok運営会社に対する強力な削除要請の根拠となります。

TikTok(ByteDance社)に対する動画削除申請の実務

証拠と保健所の記録が揃ったら、次はTikTokの運営会社であるByteDance社に対して動画の削除を求めます。

個人や店舗の判断だけで「削除してください」と訴えても、プラットフォーム側が動いてくれないケースは珍しくありません。

しかし、以下のようなアプローチをとることで削除の成功率を飛躍的に高めることができます。

  • 権利侵害の法的根拠(名誉権侵害、業務妨害など)を明確に記載した削除要請書の提出
  • 店舗が保有する客観的な証拠(当日他の客からの苦情が一切なかったこと、調理場の衛生管理体制の記録など)の提示
  • 保健所の衛生調査において問題がなかったという公式な結果・回答の添付

弁護士名義で正式な削除申し立てを行うことで、運営側に対するプレッシャーとなり、迅速な対応を引き出しやすくなります。

投稿者の特定と損害賠償請求・刑事告訴

動画の削除だけで被害が収まらない場合や、悪質な営業妨害に対して責任を追及したい場合は、発信者情報開示請求を行って投稿者を特定し、法的責任を追及することを検討します。

発信者情報開示請求の流れ

投稿者の特定には、大きく分けて二段階の法的手続が必要となります。

  1. TikTok運営会社(海外法人)に対するIPアドレス等の開示請求:動画を投稿した際のIPアドレスやタイムスタンプを開示させます。
  2. プロバイダに対する発信者情報開示請求(または発信者情報開示命令の申し立て):判明したIPアドレスから契約しているインターネットプロバイダ(ドコモ、ソフトバンク、各光回線事業者など)を割り出し、投稿者の氏名や住所の開示を求めます。

近年では「発信者情報開示命令」という比較的新しい裁判手続も整備されており、従来よりもスピーディーに特定が進むケースが増えています。

投稿者に対して追及できる責任

投稿者の身元が判明した後は、以下のような責任を厳しく追及することが可能です。

  • 損害賠償請求(民事責任):売上の減少分、風評被害の払拭にかかった広告宣伝費、弁護士費用など、実損害に対する賠償を求めます。
  • 刑事告訴(刑事責任):悪質なデマによって営業を妨害された場合、威力業務妨害罪や名誉毀損罪として警察に刑事告訴を行います。

特に、昨今ではネット上の誹謗中傷や営業妨害に対する社会的・法的な処罰感情が高まっており、警察が捜査に動くケースも増えています。

まとめ:店舗のブランドと信頼を守るために

TikTokにおける「料理に髪の毛が入っていた」といったデマ動画は、放っておくと企業の信用を根底から揺るがす深刻な事態に発展します。

「動画を消してほしいけれど、どうすればいいか分からない」「保健所対応や海外企業であるTikTokへの英語でのアプローチに不安がある」という経営者の方は、一人で悩まずにネット風評被害に強い弁護士へご相談ください。

夕陽ヶ丘法律事務所では、保健所の調査結果の活用サポートから、プラットフォームへの削除申請、発信者情報開示請求、そして損害賠償請求に至るまで、店舗の尊厳とビジネスを守るための総合的な法的サポートを提供しています。

弁護士 井上正人

この記事の監修

弁護士 井上 正人
(いのうえ まさと)

大阪弁護士会所属(登録番号:43449)
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

相続や遺産分割、借金問題、既婚者との男女トラブルなど、日常の不測の事態に直面した皆様の心理的なご負担を少しでも和らげ、円満な解決を導くためのサポートを徹底して行っています。どんな小さなお悩みでも、まずは当事務所の事務スタッフがLINEのチャットにて丁寧にお話をお伺いいたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。

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