元社員が「海外サーバー・海外ブログ」を使って会社を叩いている場合

【本記事の監修者】
弁護士 井上 正人(大阪弁護士会所属 / 登録番号:第43449号 / 夕陽ヶ丘法律事務所 代表弁護士)
※本記事は、ネット上の誹謗中傷削除・発信者情報開示命令(IPアドレス特定)・仮処分裁判実務に基づき、プロバイダ責任制限法および最新の判例に沿ってわかりやすく解説しています。

Q 退職した元社員が海外サーバーや海外ブログを使って会社の悪口や誹謗中傷を書いています。日本の法律が届かないと泣き寝入りするしかないのでしょうか?
A 【結論と法的判断基準】海外サーバーや海外ブログを用いた誹謗中傷であっても、泣き寝入りする必要はありません。日本のプロバイダ責任制限法だけでなく、相手が利用しているプラットフォームの利用規約違反や、米国法(DMCAなど)に基づく著作権侵害・権利侵害の申し立て等を行うことで、削除や発信者情報開示が実現できる可能性は十分にあります。
【弁護士による対応のメリット】現地の法律や国際的な法的手続きに精通した弁護士が代理人として介入することで、海外プロバイダへの英文による的確な削除要請や、国際的な法的アプローチをスムーズに進めることができます。企業や経営者への悪質な攻撃に対して迅速かつ確実な解決を図り、法的責任を追及して損害賠償請求を行うことが可能です。

はじめに:海外サーバーを使った誹謗中傷の新手法と企業の悩み

退職した元社員や労働トラブルを抱えた元関係者が、会社の評判を貶めるために海外の無料ブログサービス海外に拠点を置くレンタルサーバーを利用して、社内の機密情報や経営者への誹謗中傷を書き込むケースが近年急増しています。

国内のサイトであれば、日本のプロバイダ責任制限法に基づいた削除請求や発信者情報開示請求が比較的スムーズに行えます。しかし、相手が「海外サーバー」を盾にしている場合、「日本の法律は通用しないのではないか」「どこに相談すればいいのか分からない」と頭を抱えてしまう経営者や人事担当者様が少なくありません。

結論から申し上げますと、海外サーバーを利用しているからといって、企業側が泣き寝入りする必要はありません。確かに国内の手続きだけでは対応が難しい場面もありますが、現地の法律やプラットフォームの利用規約、国際的な法制度を熟知した専門家が介入することで、確実な解決への道筋を描くことができます。

本記事では、海外サーバー・海外ブログを用いた悪質な企業攻撃に対して、弁護士がどのような実務的アプローチで対応しているのか、具体的な解決手法を詳しく解説します。

海外サーバーを使ったブログやサイトが厄介視される理由

なぜ元社員はわざわざ海外のサーバーやブログサービスを選ぶのでしょうか。そこには、日本の法律の管轄外に身を置こうという明確な意図があります。

  • 日本の裁判所の判決や削除仮処分命令がそのままでは効力を発揮しにくい
  • 国内のプロバイダのように、日本の法律に基づく開示請求に対して協力的ではないケースが多い
  • 運営者の連絡先や所在地が非公開(Whois情報の代理公開など)になっており、特定が極めて困難
  • 海外の法律や英語でのやり取りが必須となるため、一般企業では対応のハードルが高い

こうした障壁があるため、放置すれば企業の社会的信用が失墜し、採用活動への悪影響や取引先からの信用不安を招く恐れがあります。そのため、迅速かつ戦略的なアプローチが必要となります。

海外サーバー上の誹謗中傷に対抗する3つの実務的アプローチ

海外に拠点があるブログやサーバーに対しては、日本の裁判所手続きとは異なる国際的な実務知識が求められます。当事務所では主に以下の3つの手法を組み合わせて解決を図ります。

1. 海外プロバイダやプラットフォームへの「英文による権利侵害通知」

多くの海外ブログサービス(WordPress.com、Blogger、Mediumなど)や海外のホスティング会社は、著作権侵害や名誉毀損などの権利侵害に対して非常に厳格な規約を設けています。

米国に拠点を持つ企業であれば、DMCA(デジタルミレニアム著作権法)に基づいた削除要請フォームや通知制度が整備されていることが一般的です。会社のロゴが無断で使用されている場合や、社内報・マニュアルなどの著作物が勝手に転載されている場合は、著作権侵害を理由に削除を申し立てることで、比較的短期間でページが削除されるケースが多くあります。

名誉毀損やプライバシー侵害を主張する場合でも、現地の言語(主に英語)で法的根拠を明確に示し、当該コンテンツがいかに違法であるかを論理的に説明した通知文を送付することで、プロバイダ側の判断による自主削除を引き出すことが可能です。

2. 国際的な発信者情報開示請求(裁判手続き)

投稿者を特定し、損害賠償請求や刑事告訴を行いたい場合、サーバー運営者に対して発信者情報(IPアドレスや登録メールアドレスなど)の開示を求める必要があります。

この場合、相手企業の所在地国の法律に基づき、現地の弁護士と連携して現地の裁判所に開示命令を申し立てる(いわゆる国際訴訟やディスカバリー手続きなど)検討が必要になります。国や地域によっては法制度や費用対効果の検証が不可欠ですが、元社員が特定できる確証がある場合には、非常に強力な法的手段となります。

3. 検索エンジン(Google等)からの非表示化(デリステリング)

サーバー自体の削除や運営者の特定がすぐに叶わない場合であっても、日本のユーザーがその悪質なブログにたどり着かないようにする有効な手段があります。

それが、Googleなどの主要検索エンジンに対する検索結果からの削除要請(デリステリング)です。検索エンジン運営会社は、名誉毀損やプライバシー侵害が明らかなコンテンツについて、日本国内の法執行機関や権利者からの申し立てに基づき、検索結果から該当URLを非表示にする措置を行っています。検索流入の大部分を占めるGoogle上で記事が見えなくなれば、実質的に風評被害を最小限に抑えることが可能です。

元社員による犯行と特定できた場合の法的責任追及

退職時のトラブルや労働審判の腹いせとして、このような誹謗中傷ブログを立ち上げる元社員は少なくありません。文面の特徴、使用されている専門用語、社内事情の詳しさなどから、発信者が元社員であると強く推認できるケースは多々あります。

もし投稿者が元社員であると特定できれば、以下のような重い法的責任を追及することができます。

  • 損害賠償請求(民事): 企業の社会的評価を低下させたことによる営業損害や、弁護士費用を含めた損害賠償の請求
  • 刑事告訴: 刑法上の名誉毀損罪(第230条)や業務妨害罪(第233条)に基づく警察への刑事告訴
  • 雇用契約上のペナルティ: 就業規則違反に基づく退職金の一部不支給や、悪質な場合の懲戒解雇事由の適用(既に退職している場合は損害賠償請求の大きな根拠となります)

感情的な報復として安易に海外ブログを開設したとしても、法律の網をかいくぐることはできません。毅然とした法的対応を行うことが、同様の社内不正や悪質行為を抑止する最大の防衛策となります。

まとめ:海外サーバーの風評被害は国際実務に強い弁護士へご相談を

元社員が海外サーバーや海外ブログを利用して会社を叩いている場合、国内の一般的な削除手続きだけでは限界があります。しかし、英語によるプロバイダ交渉、DMCA等の海外法制度の活用、検索エンジンの非表示化、そして国際的な発信者情報開示の手続きを適切に組み合わせることで、確実に対処することは十分に可能です。

夕陽ヶ丘法律事務所では、国内外のネット誹謗中傷・風評被害対策に精通し、英文による権利侵害通知や複雑なプラットフォーム対策の実績を多数有しております。「海外のサイトだから仕方ない」と諦めてしまう前に、まずは当事務所の法律相談をご活用ください。貴社のビジネスとブランドを守るため、最適な解決プランをご提案いたします。

弁護士 井上正人

この記事の監修

弁護士 井上 正人
(いのうえ まさと)

大阪弁護士会所属(登録番号:43449)
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

相続や遺産分割、借金問題、既婚者との男女トラブルなど、日常の不測の事態に直面した皆様の心理的なご負担を少しでも和らげ、円満な解決を導くためのサポートを徹底して行っています。どんな小さなお悩みでも、まずは当事務所の事務スタッフがLINEのチャットにて丁寧にお話をお伺いいたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。

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