【法的措置の重要性と弁護士相談のメリット】自社で発信者情報開示請求や損害賠償請求を行うことは極めて困難であり、早期に専門知識を持つ弁護士へ依頼することで、悪質な書き込みの削除や加害者の特定、適正な損害賠償金の回収をスムーズに進めることが可能です。
転職口コミサイトやSNSの普及に伴い、企業にとって頭の痛い問題となっているのがネット上の風評被害です。特に、退職した元社員による悪意ある書き込みや、事実に反するブラック企業呼ばわりなどは、企業の社会的信用を大きく失墜させ、採用活動や業績に深刻な悪影響を及ぼします。
こうした被害に対して法的措置を検討する際、経営者や人事担当者の皆様が最も気になられるのが「かかった弁護士費用は、加害者である元社員に請求できるのか」という点でしょう。
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所の企業法務チームには、日々多くの風評被害に関するご相談が寄せられます。この記事では、元社員によるネット誹謗中傷に対して弁護士費用を請求するための法律上の仕組み、裁判所の判断基準、そして実務上知っておくべきポイントについて詳しく解説します。
1. ネット風評被害で弁護士費用を請求する法律的根拠
日本の民事訴訟においては、原則として「自分の裁判にかかる費用は自分で負担する(自己負担の原則)」という考え方が基本にあります。そのため、被害を受けた企業が自ら弁護士を代理人として選任した費用についても、本来は企業側が負担するのが建前です。
しかし、ネット上の誹謗中傷や風評被害の被害者が、専門知識を必要とする法的手続(発信者情報開示請求や損害賠償請求訴訟など)を弁護士の助けなしに行うことは極めて困難です。そのため、最高裁判所の判例においても、「不法行為と弁護士費用との間に相当因果関係がある」と認められる場合には、損害賠償請求の中に弁護士費用の一部を含めて加害者に請求できるとしています。
つまり、元社員による違法な書き込みが「不法行為」にあたると裁判所に認められれば、その紛争を解決するために必要不可欠であった弁護士費用の一部を、損害賠償金とは別枠(あるいは上乗せ)で相手に請求する道が開けるのです。
2. 相手に請求できる弁護士費用の「目安額」と注意点
「弁護士費用を請求できる」とはいえ、実際に支払った費用の全額を相手から回収できるわけではありません。ここには明確な実務上の制限があります。
裁判所が認めるのは「認容額の約10%」が相場
裁判所が加害者に支払いを命じる弁護士費用の額は、一般的に裁判所が認めた損害賠償額(認容額)の10%前後とされるのが現在の実務の傾向です。
- 具体例: 元社員の書き込みによる精神的苦痛や信用毀損に対する慰謝料・損害賠償として、裁判所が「100万円の支払いを命じる」と判断した場合、それに付随して相手に負担させることができる弁護士費用は、おおむね10万円前後となります。
したがって、実際に弁護士へ支払った着手金や報酬金の総額が50万円であったとしても、差額の40万円分は自社の持ち出し(実質的な赤字)になってしまう可能性があります。この点は、費用対効果を計算する上で非常に重要なポイントとなります。
なぜ全額請求できないのか
「加害者のせいで弁護士を頼まざるを得なかったのだから、全額払うべきだ」というお考えはごもっともですが、裁判所は以下の理由から制限を設けています。
- 訴訟の難易度や事件の規模に照らし、妥当な金額を超える費用を相手に負担させるのは酷であるという公平性の観点
- 弁護士報酬の取り決めは依頼者と弁護士の間の契約自由の領域であり、その全額を加害者の責任に帰すのは相当性を欠くという考え方
そのため、どれだけ高額な弁護士費用を契約していたとしても、裁判所が「この事件の規模であればこの程度が妥当」と判断する上限額が存在することをあらかじめ知っておく必要があります。
3. 元社員による風評被害で弁護士費用回収の可能性を高めるポイント
すべてのケースで弁護士費用が認められるわけではありません。また、相手から確実に回収できるかどうかも別の問題です。法的手続を進めるにあたり、以下のポイントを押さえておくことが重要です。
① 悪質性の高さを裏付ける証拠の確保
元社員による口コミサイトへの書き込みが、単なる個人的な不満の域を超え、名誉毀損や業務妨害にあたる「違法な不法行為」であることを客観的に立証しなければなりません。
- 社内機密情報の暴露や、売上に直結するような嘘の事実(「ハラスメントが常態化している」「給与が未払いである」など)が記載されている証拠
- 投稿者が元社員であることを特定できる情報(退職時期や担当業務に関する独自の記述など)
- 風評被害によって実際に採用見送りや取引停止などの実害が生じている場合は、その資料
これらを早期に保全し、法的根拠を固めておくことで、裁判所からも「弁護士に依頼して紛争解決を図る必要性が高かった」と認められやすくなります。
② 相手(元社員)の「支払い能力(資力)」の確認
どれだけ裁判で勝訴し、慰謝料や弁護士費用の一部負担が命じられたとしても、相手に支払い能力(財産や定職)がなければ、実際にお金回収することは困難です。
- 現時点で退職して無職である場合や、行方不明である場合
- すでに多重債務を抱えているような場合
このようなケースでは、裁判に勝って形式上の勝訴判決を得ても、実質的な金銭回収(弁護士費用の補填)ができないリスクがあります。そのため、弁護士と相談する段階で、相手の属性や資力についても見通しを立てておくことが実務上極めて大切です。
4. 示談交渉(裁判外の解決)における弁護士費用の扱い
裁判(訴訟)を起こさず、弁護士を通じた内容証明郵便の送付や、相手との示談交渉によって解決を図るケースもあります。この場合の弁護士費用請求については、少し仕組みが異なります。
裁判所を通さない任意の示談交渉においては、「法律上、自動的に相手が弁護士費用の10%を払わなければならない」という強制力はありません。あくまで、当事者間の合意(示談内容)によって決まります。
そのため、示談交渉の段階では、元社員側に対して「早期に名誉毀損コメントを削除し、謝罪および解決金を支払うこと。これに応じない場合は、弁護士費用も含めた損害賠償請求訴訟を直ちに提起する」というプレッシャーをかけることで、結果として弁護士費用の一部や解決金を相手に負担させる合意を取り付けるケースが多く見られます。
5. まとめ:企業風評被害の対策は弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所へ
ネット上の企業風評被害、とりわけ転職会議やOpenWorkといった口コミサイトにおける元社員の悪質な書き込みは、企業のブランド価値を深く傷つけます。
弁護士費用を相手に請求できるかという問題については、「裁判所の認容額の約10%程度であれば、不法行為の損害として認められて請求できる」というのが法的な結論となります。全額が戻ってくるわけではないため、費用対効果のバランスを考慮した戦略的なアプローチが求められます。
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所では、企業の風評被害対策および発信者情報開示請求、損害賠償請求について数多くの実績を有しております。自社に向けられた悪質な口コミや風評被害にお悩みの経営者様、人事ご担当者様は、泣き寝入りされる前に、まずは当事務所の初回法律相談をご利用ください。貴社の被害状況に応じた最適な解決プランをご提案いたします。