【実務上のポイントと弁護士相談のメリット】ただし、外国法人に対する法的書面の送達や、提出書類の英文翻訳など、国内企業を相手にする場合とは異なる特有の手続きと専門的なノウハウが必要となります。プラットフォームへの個別窓口からの削除依頼で対応してもらえない悪質な誹謗中傷や風評被害にお悩みの方は、国際的なITプラットフォーム関連の法務や削除請求に精通した弁護士へ早めにご相談ください。
インターネット上の誹謗中傷や風評被害において、X(旧Twitter)上で拡散される悪質なポストに悩まされる個人や企業は後を絶ちません。プラットフォーム側の窓口から削除依頼を行っても対応されない場合、法的手段として裁判所を通じた仮処分申立てを検討する必要があります。
しかし、Xの運営主体はアメリカ合衆国の法人である「X Corp.」です。「海外の企業を相手に、日本の裁判所で裁判ができるのか」「英語でのやり取りが必要になるのか」と不安を感じる方も少なくありません。
この記事では、X Corp.を相手方として日本国内の裁判所にポスト削除の仮処分を申し立てる際の手続きの流れ、必要となる準備、そして実務上の重要なポイントについて詳しく解説します。
なぜ海外法人であるX Corp.に対して日本で裁判ができるのか
日本国内に住所や拠点を持たない外国法人に対して、日本の裁判所で法的措置をとることは一見すると難しいように思えるかもしれません。しかし、日本の法律や国際裁判管轄のルールに基づき、一定の要件を満たせば、東京地方裁判所などの国内裁判所に申し立てを行うことができます。
不法行為地が日本国内にあること
インターネット上の誹謗中傷による権利侵害は、日本国内でその情報が閲覧され、名誉感情や社会的評価が低下したといえます。そのため、不法行為の結果が発生した地(不法行為地)は日本国内と認められ、日本の裁判所に管轄権が認められるのが一般的です。
東京地方裁判所の専門部における実績
実務上、X Corp.を相手方とする仮処分申立ての多くは、東京地方裁判所に対して行われます。東京地裁にはITや知的財産、人格権侵害に関する専門的な部署(部)が設置されており、これまでに数多くの外国IT企業を相手方とした審理実績があります。
X Corp.に対する仮処分申立ての主なステップ
外国法人に対する仮処分手続きは、通常の国内企業を相手にする場合と比較して、いくつかの特殊なプロセスを挟みます。大まかな流れは以下の通りです。
- ステップ1:権利侵害の証拠収集と保全 対象となるポストのURL、投稿内容、魚拓やスクショなどの証拠を確実に保全します。どの部分がどのような権利(名誉権、プライバシー権など)を侵害しているのかを法的観点から整理します。
- ステップ2:申立書の作成と英文翻訳 日本の裁判所に提出するための仮処分申立書や証拠説明書を作成します。相手方は米国法人であるため、原則として申立書や証拠書類には正確な英文翻訳を添付する必要があります。
- ステップ3:東京地方裁判所への申し立てと審尋(または書面審理) 東京地裁に申し立てを行います。裁判官による審理(非公開の期日や書面によるやり取り)を経て、要件を満たしていると判断されれば、削除を命ずる仮処分命令が発令されます。
- ステップ4:外国送達の実施 発令された仮処分命令をX Corp.(米国)に正式に届けるため、民事訴訟法等に基づく外国送達の手続きを行います。外務省やハーグ条約等を利用したルートを通じて書類が送達されます。
- ステップ5:任意の削除または執行手続き 送達を受けたX Corp.が任意にポストを削除するか、あるいはプラットフォーム側の法務部門を通じて対応が行われます。
実務上注意すべき3つの重要なポイント
X Corp.に対する仮処分を成功させるためには、法的な主張だけでなく、実務的なハードルをクリアするための綿密な準備が不可欠です。ここでは特に重要な3つのポイントを解説します。
1. 厳密な英文翻訳のクオリティ
裁判所に提出する書類の翻訳は、単に直訳すればよいというものではありません。法律用語(名誉毀損、人格権、差止請求など)に精通し、かつアメリカの法実務やIT用語にも理解のある翻訳者による、正確で法的に通用する翻訳文が求められます。翻訳の不備が原因で審理が遅れるリスクを避けるためにも、専門的な知見を持つ弁護士のサポートが不可欠です。
2. 外国送達にかかる時間とコスト
国内の会社であれば数日から数週間で書類が届くところ、米国法人に対する外国送達には、一定の期間(数ヶ月程度)を要することが少なくありません。緊急性が高い被害であっても、送達プロセスに要する時間を逆算し、迅速かつ正確に手続きを進める必要があります。また、翻訳費用や国際郵便費用などの実費が国内事案よりも多くかかる点も留意しておく必要があります。
3. 投稿者の特定(発信者情報開示請求)との並行検討
ポストの削除だけでなく、「誰が投稿したのか」を特定して損害賠償請求や刑事告訴を行いたい場合は、削除仮処分と並行して、あるいはその前段階として発信者情報開示請求(裁判手続・または新たな日本国内のプロバイダ責任制限法に基づく手続き)を検討する必要があります。X Corp.からのIPアドレスやタイムスタンプの開示を受け、さらに国内の接続プロバイダ(携帯キャリアやプロバイダ)を特定して情報を引き出すという、高度な連携作業が必要となります。
専門弁護士に依頼するメリット
X Corp.(米国法人)を相手方とする仮処分や開示請求は、一般的な民事事件に比べて国際私法、外国送達のルール、ITプラットフォームの特性など、多岐にわたる専門知識が要求されます。
当事務所では、数多くのネット誹謗中傷・風評被害対策を手がけており、外国IT企業を相手方とする法的手続きについても豊富な実績を有しています。
- 国際的な法的スキームに精通: 米国法人特有の送達ルールや英語書面の準備をスムーズに進行します。
- スピーディーな証拠保全と申し立て: 被害の拡大を防ぐため、一刻も早い証拠収集と裁判所へのアプローチを行います。
- 発信者特定から損害賠償までの一気通貫サポート: 削除にとどまらず、犯人の特定や責任追及までトータルで代理人として活動します。
まとめ
X Corp.(米国法人)に対するポスト削除の仮処分申立ては、東京地裁を通じて行うことが可能です。「海外企業だからどうせ無理だろう」と諦めてしまう必要はありません。
しかし、英文翻訳や外国送達といった特有のハードルが存在するため、個人で対応するのは極めて困難です。誹謗中傷や風評被害でお困りの際は、ネット上の権利侵害に強い弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所へお気軽にご相談ください。迅速かつ適切な法的手続きにより、お客様の権利と名誉を守り抜きます。