ネット中傷加害者が「執行猶予付き有罪判決」を受けた場合の裁判

【本記事の監修者】
弁護士 井上 正人(大阪弁護士会所属 / 登録番号:第43449号 / 夕陽ヶ丘法律事務所 代表弁護士)
※本記事は、ネット上の誹謗中傷削除・発信者情報開示命令(IPアドレス特定)・仮処分裁判実務に基づき、プロバイダ責任制限法および最新の判例に沿ってわかりやすく解説しています。

Q ネット中傷の加害者に執行猶予付き有罪判決が出た後、慰謝料を請求するための民事裁判はどう進めるべきですか?
A 【民事上の損害賠償請求の必要性と刑事裁判との違い】刑事裁判で執行猶予付き有罪判決が確定しても、それだけで被害者に自動的に慰謝料が支払われるわけではありません。刑事罰は国家が加害者の責任を問う手続きであるため、受けた精神的苦痛に対する金銭的補償を得るには、刑事裁判とは別に民事上の損害賠償請求を起こす必要があります。
【民事裁判を有利に進めるポイントと弁護士相談のメリット】刑事裁判で認定された犯罪事実や証拠は、民事裁判でも強力な証拠として活用できます。これにより慰謝料請求を極めて有利に進めることが可能です。夕陽ヶ丘法律事務所では、刑事告訴から民事の損害賠償請求まで一貫してサポートし、被害回復を最大限に追求します。

インターネット上の掲示板やSNSへの誹謗中傷、プライバシーの暴露、脅迫行為などは、単なるマナー違反にとどまらず、立派な犯罪行為となり得ます。警察や検察による捜査が進み、最終的に加害者が刑事裁判で執行猶予付き有罪判決を受けた場合、被害者としては「これで事件が一段落した」と感じるかもしれません。

しかし、刑事裁判はあくまで「国が加害者の社会的責任(刑罰)を問う手続き」であり、被害受けた精神的苦痛に対する金銭的な補償(慰謝料)が自動的に支払われるわけではありません。加害者に対して損害賠償を支払わせるためには、刑事裁判とは別に民事上の損害賠償請求の裁判を起こす必要があります。

夕陽ヶ丘法律事務所には、ネット中傷の刑事告訴から民事の損害賠償請求まで、一貫したサポートを求めるご相談が数多く寄せられています。この記事では、加害者が執行猶予付き有罪判決を受けた後に展開される民事裁判の流れや、被害者が知るべき重要なポイントについて詳しく解説します。

1. 刑事裁判と民事裁判の根本的な違い

ネット中傷の被害に遭った際、多くの被害者は「犯人を処罰してほしい」という思いと「受けた傷に対して金銭的な償いをしてほしい」という両方の願いを持っています。この2つは混同されやすいのですが、法律上は全く別個の手続きとして扱われます。

  • 刑事裁判(刑事手続): 警察や検察が捜査を行い、名誉毀損罪や侮辱罪、脅迫罪などの罪に問う手続きです。目的は加害者の処罰(罰金刑や懲役刑など)であり、被害者への直接的な金銭賠償を命じるものではありません。
  • 民事裁判(民事手続): 被害者が原告となり、加害者に対して不法行為に基づく損害賠償請求(慰謝料、弁護士費用、発信者情報開示請求にかかった費用など)を求める手続きです。目的は被害の回復と金銭的な補償です。

したがって、加害者が刑事裁判で執行猶予付き有罪判決を受けたとしても、それだけで自動的にお金が振り込まれてくるわけではありません。加害者が任意の示談に応じない限り、被害者は民事裁判を起こすか、あるいは刑事手続きの終盤を利用した特殊な賠償命令の申し立てなどを検討する必要があります。

2. 執行猶予付き有罪判決が民事裁判に与える絶大な効果

「刑事で有罪になったのなら、民事裁判も簡単に勝てるのではないか」と思われるかもしれません。結論から言えば、その通りであり、刑事判決の結果は民事裁判において非常に強力な武器となります。

民事裁判では、原則として「権利を主張する側(被害者)」が、加害者の違法行為や損害の発生を立証しなければなりません。しかし、加害者が刑事裁判で有罪判決(それが執行猶予付きであっても)を受けて確定した場合、その判決の中で認定された事実関係は、民事裁判においても極めて高い証明力を持ちます。

  • 加害者がネット上でどのような投稿をしたかという「事実」
  • その投稿が悪質な名誉毀損や侮辱にあたるという「違法性」
  • 加害者に故意または過失があったという「責任」

これらが刑事裁判の判決文や調書によって裏付けられるため、加害者が民事裁判で「自分はそんな書き込みをしていない」「正当な批判だ」などと言い逃れをすることは極めて難しくなります。夕陽ヶ丘法律事務所の弁護士が代理人として民事訴訟を提起する場合も、この刑事事件の記録(捜査記録や判決書等)を証拠として活用することで、裁判を非常に有利かつスピーディーに進めることが可能です。

3. 民事裁判で請求できる損害賠償の項目

執行猶予付き有罪判決を受けた加害者に対する民事裁判では、具体的にどのような費用を請求できるのでしょうか。主に以下の項目が挙げられます。

  • 精神的苦痛に対する慰謝料: ネット中傷によって受けた精神的損害に対する賠償金です。投稿の内容、拡散の度合い、被害の深刻さ、加害者の反省の有無などによって金額が変動します。刑事事件に発展するような悪質な事案では、慰謝料が高額化する傾向があります。
  • 弁護士費用: 加害者を特定するための発信者情報開示請求や、その後の損害賠償請求を弁護士に依頼した際にかかった費用です。裁判所は、認められた慰謝料等の一定割合(一般的には10%程度)を弁護士費用として加害者に負担させることが多いです。
  • 調査費用・実費: 投稿者を特定するために要した発信者情報開示請求の裁判費用や、内容証明郵便の郵送代などが含まれます。

これらの合計額を請求し、裁判所の判決または裁判上の和解によって加害者に支払いを命じてもらうことになります。

4. 執行猶予中の加害者から確実に賠償金を回収するための実務

刑事裁判で執行猶予付き有罪判決を受けた加害者は、「刑務所に行かなくて済んだ」という安堵感を抱きつつも、前科がついた状態で社会復帰を模索することになります。ここで被害者が直面する最大の課題は、「本当に加害者からお金を回収できるのか」という点です。

裁判で勝訴判決を得たり、和解が成立したりしても、加害者が「お金がない」「支払わない」と言って無視し続けるケースは珍しくありません。特に経済的な基盤が不安定な加害者の場合、任意の支払いを期待できないこともあります。

このような場合、弁護士を通じて以下の強制執行(差し押さえ)手続を検討・実行する必要があります。

  1. 財産開示手続の利用: 加害者の預貯金口座や勤務先などが分からない場合、裁判所を通じて加害者に財産の開示を命じさせる手続きです。
  2. 給与や預貯金の差押え: 加害者の勤務先が判明すれば、毎月の給与の一部を差し押さえて回収することができます。また、銀行口座が特定できれば、預貯金を直接差し押さえることが可能です。

執行猶予付き判決を受けた加害者は、社会生活を送る中で再びトラブルを起こすこと(執行猶予の取り消し)を非常に恐れる傾向があります。そのため、民事の強制執行や給与差し押さえのプレッシャーが、任意の支払いを引き出す上で有効に働くケースも少なくありません。

5. ネット中傷の裁判を弁護士に依頼するメリット

ネット中傷の加害者が刑事事件として立件され、執行猶予付き有罪判決に至った場合、次のステップである民事の損害賠償請求は、被害者ご本人だけで進めるには大きな負担が伴います。

  • 刑事記録の取り寄せと活用: 刑事裁判の記録や証拠を適切に取り寄せ、民事裁判で効果的な証拠として組み立てるには専門的な法知識が必要です。
  • 適正な慰謝料額の算定: 過去の裁判例に基づき、その事案において最も妥当で最高水準の慰謝料額を算定し、主張することができます。
  • 精神的負担の軽減: 加害者と直接連絡を取る必要がなくなり、示談交渉から裁判手続き、強制執行に至るまで弁護士が全て代理人として対応します。

夕陽ヶ丘法律事務所では、ネット誹謗中傷・風評被害に関する豊富な解決実績を有しており、刑事告訴のサポートから民事裁判での高額賠償獲得、そして確実な回収に至るまで、ワンストップで被害者の方をサポートいたします。

まとめ

ネット中傷の加害者が執行猶予付き有罪判決を受けたとしても、それだけで被害回復が完了したわけではありません。真の解決に向けては、刑事裁判の結果を強力な証拠として活用し、民事上の損害賠償請求裁判を起こすことが極めて重要です。

泣き寝入りせず、適正な慰謝料の支払いと責任を追及するために、まずはネット中傷問題に強い弁護士へご相談ください。夕陽ヶ丘法律事務所では、被害者の方が平穏な日常を取り戻せるよう、全力でお手伝いいたします。

弁護士 井上正人

この記事の監修

弁護士 井上 正人
(いのうえ まさと)

大阪弁護士会所属(登録番号:43449)
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

相続や遺産分割、借金問題、既婚者との男女トラブルなど、日常の不測の事態に直面した皆様の心理的なご負担を少しでも和らげ、円満な解決を導くためのサポートを徹底して行っています。どんな小さなお悩みでも、まずは当事務所の事務スタッフがLINEのチャットにて丁寧にお話をお伺いいたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。

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