【例外的に損害として認められるケースと専門家への相談】事案の悪質性や告訴の必要性、さらには民事上の請求との密接な関連性が認められる場合、弁護士費用の一部が損害賠償額の算定において考慮されることがあります。泣き寝入りせず適切な法的回収を行うためには、誹謗中傷問題や損害賠償請求に強い弁護士への早期相談が不可欠です。
ネット上の悪質な誹謗中傷、名誉毀損、脅迫、あるいはプライバシー侵害などの被害に遭った際、警察に対して刑事告訴を行う被害者が増えています。警察を動かして犯罪として処罰を求めるためには、専門的な法的知識が不可欠であるため、弁護士に代理を依頼して告訴状を作成・提出するケースが一般的です。
そこで被害者の方から多く寄せられるのが、「刑事告訴にかかった弁護士費用も、のちの民事訴訟で加害者に全額請求できるのか」という疑問です。
この記事では、刑事告訴における弁護士費用の性質と、民事訴訟における損害賠償請求のルールについて、夕陽ヶ丘法律事務所の弁護士が詳しく解説します。
刑事告訴の弁護士費用は民事の損害賠償に含まれるか
結論から申し上げますと、刑事手続と民事手続は本来別の法的手続であるため、刑事告訴の代理人弁護士として支払った費用すべてが、自動的に民事訴訟での損害賠償請求の対象(全額請求)になるわけではありません。
日本の民事訴訟法および不法行為の損害賠償制度においては、被害者が加害者に請求できる弁護士費用について、以下のような原則があります。
- 民事訴訟を提起するために必要となった弁護士費用については、請求認容額(勝ち取った賠償金の額)の「10パーセント程度」が相当因果関係のある損害として認められるのが裁判所の一般的な実務慣行です。
- 一方で、刑事手続(捜査段階や告訴段階)における弁護士費用は、原則として刑事事件の手続内での費用とみなされ、民事上の不法行為による損害として直ちに全額が認められる性質のものではありません。
しかし、被害の性質や事案の特殊性によっては、刑事告訴を行うことが事実上、被害者の権利を守るために不可欠であったと評価されるケースも存在します。
裁判所が「弁護士費用」の損害性を認める判断基準
民事裁判において、告訴に要した弁護士費用が損害として認められるかどうかは、いくつかの要素を総合的に考慮して判断されます。
1. 犯罪の悪質性と告訴の必要性
ネットの誹謗中傷や脅迫などが極めて悪質であり、被害者が自力では到底警察を動かすことができず、弁護士の専門的サポートなしには刑事手続を進めることが不可能であったといえる事情があるかどうかが重要視されます。2. 民事請求と刑事告訴の密接な関連性
例えば、加害者が特定されており、民事上の損害賠償請求を行う前提として、あるいは一体の紛争解決のプロセスとして刑事告訴が行われたような場合です。実務上は、刑事告訴と民事訴訟の依頼が同一の弁護士に対して一括して行われることも多く、業務の切り分けが難しいケースもあります。3. 判例における考え方
最高裁判所の判例においても、不法行為と弁護士費用との間の因果関係については、被害者が訴訟を遂行するために弁護士を委任せざるを得なかった状況や、事件の難易度、請求認容額などを総合的に考慮して「相当と認められる額」を損害とすることが認められています。ただし、これはあくまで民事訴訟を追行するための弁護士費用についての基準であり、刑事告訴費用がそのまま全額上乗せされるという意味ではありません。実務上、加害者から回収できる費用の現実
「全額請求できるか」という点に焦点を当てた場合、法的なハードルが存在することは事実です。では、実際のネット中傷トラブルの現場ではどのように処理されているのでしょうか。
- 示談交渉での合意: 刑事告訴を進める中で、加害者側から「刑事処分を軽くしてほしい(起訴猶予や減刑を求めたい)」という意向から、示談の申し入れがなされるケースが多くあります。この示談交渉の場において、慰謝料や損害賠償金だけでなく、「弁護士費用の一部または全部」を加害者側に負担させる合意(示談条項)を締結することが実務上は最も確実な回収方法となります。
- 民事訴訟での請求額の工夫: 訴訟提起にあたっては、慰謝料請求額の中に、弁護士費用相当額を含めた総合的な損害額を算出・主張し、裁判所の判断を仰ぐことになります。
つまり、判決によって「刑事告訴の費用全額」を機械的に勝ち取ることは難しいものの、示談交渉のカードとして刑事告訴を活用し、結果的にトータルの費用を相手に負担させる形で解決に導くことは十分に可能です。
ネット誹謗中傷で弁護士に依頼するメリットと費用対効果
ネット上の誹謗中傷や風評被害において、被害者が個人で警察や加害者に対処しようとすると、以下のような大きな壁にぶつかります。
- 警察に相談に行っても、法的な構成が整っていない告訴状では受理されにくい。
- 発信者情報開示請求から刑事告訴、民事賠償請求までのトータルな法的手続を個人で並行して進めるのは極めて困難である。
- 加害者との示談交渉において、感情的になり失敗するリスクがある。
弁護士に依頼することで、刑事と民事の両面から最適な法的アプローチを選択でき、結果として精神的・時間的な負担を大幅に軽減しながら、適正な損害賠償や費用回収の可能性を高めることができます。
まとめ:刑事告訴と弁護士費用の請求でお悩みなら夕陽ヶ丘法律事務所へ
刑事告訴にかかった弁護士費用を民事訴訟で「全額」請求することは、法律上の原則として容易ではありません。しかし、事案の悪質性や、その後の示談交渉・民事請求の進め方次第で、実質的に費用を回収できる道は十分に開かれています。
夕陽ヶ丘法律事務所では、ネット誹謗中傷・風評被害対策における発信者情報開示請求、刑事告訴のサポート、そして民事での損害賠償請求までを一気通貫で代理しております。
「この誹謗中傷に対して刑事告訴はできるか」「かかった費用は相手に請求できるのか」など、ご自身のケースでお悩みの方は、ぜひ当事務所の初回相談をご利用ください。専門の弁護士が具体的な見通しと最適な解決プランをご提案いたします。