【弁護士による回収のメリット】加害者が任意の支払いに応じない場合でも、勤務先を通じて確実に損害賠償金を回収できるほか、勤務先にトラブルが知られることで心理的なプレッシャーを与え、早期解決を促すことができます。回収を確実に行うためには、弁護士へ強制執行の手続きを依頼することをおすすめします。
ネット上の誹謗中傷や風評被害について、裁判を起こし、損害賠償請求が認められたとします。しかし、勝訴判決や和解調書を得ても、加害者が自発的に慰謝料や弁護士費用を支払ってこないケースは少なくありません。
そのような場合に有効な最終手段が、裁判所を通じた強制執行(財産差し押さえ)です。
なかでも、加害者の勤務先(会社)から支払われる給与を差し押さえる手続きは、非常に強力な回収方法として知られています。本記事では、夕陽ヶ丘法律事務所の弁護士が、給与差し押さえの仕組みや具体的な手順、メリット、注意点について詳しく解説します。
1. 損害賠償金を払わない加害者からお金を回収する「給与差押え」とは
裁判で勝訴したにもかかわらず加害者がお金を支払わない場合、被害者は泣き寝入りする必要はありません。法律に基づいて加害者の財産を差し押さえ、強制的に回収する権利が認められています。
差押えの対象となる財産には、預貯金や不動産、自動車などがありますが、中でも会社員や公務員である加害者の「給与(月給・賞与など)」は、毎月継続的に収入が入るため、回収の確実性が高い財産の一つです。
法律上、給与の差し押さえは「債権執行」という手続きに分類され、裁判所に対して「給与債権差押命令」の申し立てを行うことで実行されます。
2. 差し押さえられる給与の金額(原則は手取りの4分の1)
加害者の生活権や家族の生活を守る配慮から、給与の全額を差し押さえることは法律で禁止されています。
原則として、差し押さえることができる上限は「手取り給与(所得税や住民税、社会保険料などを控除した残額)の4分の1まで」と定められています。
- 月給の手取りが40万円の場合: 最大10万円(4分の1)を毎月差し押さえることができます。
- 月給の手取りが80万円を超える場合: 生活保護費の水準などを考慮し、4分の1を超える部分(66万円を超える部分)については全額差し押さえが可能になる特例があります。
なお、賞与(ボーナス)や退職金についても同様に差し押さえの対象とすることが可能です。
3. 給与差し押さえ手続きの具体的な流れ
給与を差し押さえるためには、いくつかの厳格なステップを踏む必要があります。弁護士のサポートを受けながら進めることで、スムーズに手続きを進めることができます。
ステップ1:債務名義の取得
給与の差し押さえを行う大前提として、「債務名義(さいむめいぎ)」と呼ばれる公的な文書が必要です。これには、裁判での「勝訴判決の正本」、和解が成立したときの「調解調書」や「和解調書」、あるいは公正証書(執行認諾文言付)などが該当します。これらがなければ、裁判所に差し押さえを申し立てることはできません。
ステップ2:加害者の勤務先を特定する
給与を差し押さえるためには、加害者が現在どこで働いているのか(正確な会社名、所在地、代表者名)を特定しなければなりません。 インターネット上の誹謗中傷の裁判では、発信者情報開示請求の過程で加害者の勤務先情報が判明しているケースもありますが、分からない場合は「財産開示手続」や「第三者からの情報取得手続」といった法的手続きを活用して勤務先を特定することになります。
ステップ3:裁判所へ「債権差押命令」を申し立てる
加害者の勤務先が判明したら、加害者の住所地を管轄する地方裁判所に「給与債権差押命令の申し立て」を行います。必要書類(申し立て書、債務名義の正本、資格証明書、住民票など)と、裁判所費用(収入印紙や予納郵券)を準備して提出します。
ステップ4:裁判所から勤務先へ命令書が送達される
裁判所が申し立てを認めると、加害者の勤務先(法律上の呼称は「第三債務者」)と加害者本人に対して、それぞれ「債権差押命令」が送達されます。
ステップ5:勤務先からの支払い(取り立て)
命令書が届くと、勤務先は加害者に給与を全額支払うことができなくなります。勤務先は、本来加害者に支払うはずだった給与のうち、差押えられた金額(手取りの4分の1など)を、被害者(債権者)の指定する口座に直接振り込む義務が生じます。
4. 会社にバレる? 給与差し押さえのメリットと影響
給与差し押さえ手続きを行うことには、被害者にとって非常に大きなメリットがあります。
メリット1:確実かつ強制的な回収ができる
自発的な支払いを期待できない加害者であっても、裁判所の命令であれば、勤務先が自動的に給与から天引きして支払わざるを得ません。相手が無視し続けることができない実効性の高い方法です。
メリット2:加害者に強い心理的プレッシャーを与えられる
給与の差し押さえ命令が届くと、加害者の勤務先の人事部や経理部に、「その従業員(加害者)がネット上で悪質な誹謗中傷を行い、裁判で負って賠償金を支払わなかった」という事実が必ず知られます。 会社に知られることで、加害者は社会的信用を失うリスクや、職場にいづらくなるプレッシャーを感じるため、これを機に一括での支払いに応じてくるケースも少なくありません。
5. 給与差し押さえを行う際の注意点と限界
強力な手段である一方、実務上知っておくべき注意点や限界もあります。
- 勤務先が分からないと進められない: 前述のとおり、加害者の勤務先が特定できていない場合、差し押さえの申し立て自体ができません。
- 退職してしまうリスク: 給与差押えの通知が届いたことで、加害者が会社を勝手に辞めてしまうリスクがゼロではありません。会社を辞めて無職になってしまうと、その時点から給与からの差し押さえができなくなってしまいます(ただし、未回収分については、転職先の再特定や別の財産への差し押さえを検討することになります)。
- 原則として「毎月の取り立て」になる: 預貯金口座の差し押さえとは異なり、給与は毎月発生するものであるため、原則として数ヶ月にわたって毎月給与から天引きされる分を回収していくことになります。全額回収し終わるまでに時間がかかる場合があります。
6. 誹謗中傷の損害賠償・回収は夕陽ヶ丘法律事務所にご相談ください
ネットの誹謗中傷や風評被害において、加害者の特定や裁判での勝訴はゴールではありません。被害回復の本当のゴールは、「確定した損害賠償金をしっかりと回収し、実質的な経済的・精神的ダメージを補填すること」です。
しかし、判決が出たあとの強制執行手続きや財産の調査、勤務先の特定には専門的な法律知識とノウハウが必要です。
夕陽ヶ丘法律事務所では、発信者情報開示請求による加害者の特定から、損害賠償請求訴訟、そして判決後の給与差し押さえ・財産執行に至るまで、ワンストップでサポートを行っております。
「裁判に勝ったのに相手が支払ってこない」「加害者の勤務先を調べて給与を差し押さえたい」とお悩みの被害者様は、ぜひ当事務所までお気軽にご相談ください。あなたの権利を守り、最後までしっかりとサポートいたします。