【弁護士に依頼するメリット】投稿者を特定して法的責任を追及することにより、悪質な風評被害の拡大を防ぎ、失墜したブランドイメージの回復を図ることができます。さらに、特定した投稿者に対して損害賠償請求や刑事告訴を行うことで、同様の誹謗中傷を抑止し企業のビジネスと権利を守ることができます。
ネット上に書き込まれた根拠のない噂や悪意あるデマは、企業のブランド価値を失墜させ、売上の急減や優秀な人材の採用難といった深刻な実害をもたらします。こうしたネット上の風評被害に対して、ただ耐え忍ぶ必要はありません。
近年の法改正により導入された新しい裁判手続を活用すれば、法人に対する信用毀損や営業権侵害を理由として、匿名の投稿者を法的に特定することができます。この記事では、企業が直面する誹謗中傷に対し、どのように発信者情報開示命令を申し立て、権利を守るべきその実務上のポイントを詳しく解説します。
企業が受ける「営業権侵害・信用毀損」とはどのようなものか
インターネット掲示板、口コミサイト、SNSなどの普及に伴い、企業に関する真偽不明の情報が瞬く間に拡散されるケースが後を絶ちません。これらが企業のビジネスに与える打撃は計り知れず、法律上は明確な権利侵害として扱われます。
法人が保護されるべき「信用」と「営業権」の法的性質
私人と同様に、企業などの法人も法的に保護される権利を持っています。
- 信用毀損(しんようきそん):企業の経済的な評価や社会的な信頼を低下させる虚偽の情報を流布されること。例えば、「製品に危険な異物が混入している」「反社会的勢力と裏で繋がっている」といった事実無根の書き込みが該当します。
- 営業権侵害(えいぎょうけんしんがい):顧客を吸引する力や、円滑に営業活動を行うための権利が侵害されること。業務妨害的なレビューや、競合他社による悪質なデマ拡散などがこれに当たります。
これらの侵害行為は、民法上の不法行為(民法709条)を構成し、企業は加害者に対して損害賠償を請求する権利を有します。しかし、インターネット上の書き込みは匿名で行われることがほとんどであるため、まずは投稿者を特定する作業が必要となります。
発信者情報開示命令とは何か
インターネット上で権利を侵害された場合、従来は複数の裁判や交渉を経る必要があり、投稿者の特定までに膨大な時間がかかっていました。しかし、プロバイダ責任制限法が改正され、2022年10月から「発信者情報開示命令」という新しい裁判手続がスタートしました。
この新しい制度の最大のメリットは、従来の「裁判」とは異なり、裁判所の手続の中で迅速に開示を受けられる仕組みが整えられた点にあります。
- 非訟手続(ひしょうてつづき)の導入:通常の民事訴訟よりも簡易かつ迅速に審理が進められるため、証拠隠滅のリスクを抑えやすくなりました。
- 発信者情報開示に係る提供命令:裁判所がコンテンツプロバイダ(SNS運営会社など)に対し、アクセスプロバイダ(通信会社)に関する情報を勝手に消去しないよう命じる暫定的な措置が取り入れられました。
- 一括の手続進行:従来は別々に行う必要があった複数のステップを、よりスムーズに連携させることが可能となりました。
企業がビジネス上の信用を守るためには、この新しい法制度の仕組みを正しく理解し、スピーディーに動くことが極めて重要です。
企業が発信者情報開示命令を申し立てる際の流れ
法人名義で誹謗中傷や営業妨害に対する開示請求を行う場合、どのようなステップで手続を進めるのか、その具体的な流れを解説します。
1. 証拠の保全と権利侵害の該当性判断
まずは、問題となる書き込みの証拠を確実に保存します。画面のスクリーンショット(URLやタイムスタンプが含まれるもの)を撮影するほか、必要に応じて証拠保全の法的措置を検討します。 その後、その書き込みが単なる批判や意見の域を超え、客観的な事実無根の虚偽によって企業の営業権や信用を不当に害しているかを弁護士が慎重に精査します。
2. コンテンツプロバイダに対する開示請求(第1段階)
X(旧Twitter)、Instagram、各種掲示板の運営会社などの「コンテンツプロバイダ」に対し、投稿者のIPアドレスやタイムスタンプの開示を求めます。 新制度における「発信者情報開示命令の申し立て」を裁判所に行い、運営会社に対して開示を命じてもらいます。これと同時に、通信記録が消去されないよう「提供命令」の活用を申し立てるのが実務上の定石です。
3. アクセスプロバイダに対する発信者情報消去禁止命令・開示請求(第2段階)
IPアドレスとタイムスタンプが判明したら、次はドコモ、ソフトバンク、KDDI、あるいは各種光回線業者などの「アクセスプロバイダ」を特定します。 アクセスプロバイダが保有するログデータは保存期間が短く(通常は3ヶ月から半年程度)、期間が過ぎると自動的に消去されてしまいます。そのため、裁判所に発信者情報消去禁止命令を申し立ててログを保全しつつ、契約者の氏名や住所の開示を求める訴訟または非訟手続を進めます。
4. 投稿者の特定と法的な責任追及
裁判所により開示命令が出されると、アクセスプロバイダから投稿者の氏名、住所、メールアドレスなどの情報が任意に開示されます(または命令に基づいて開示されます)。 投稿者が特定できれば、企業は以下のような法的アクションを起こすことが可能になります。
- 損害賠償請求:企業イメージの失墜や弁護士費用など、被った経済的・精神的損害に対する金銭賠償の請求。
- 刑事告訴:名誉毀損罪(刑法230条)や信用毀損罪・業務妨害罪(刑法233条)に基づき、警察へ刑事告訴を行う。
- 示談交渉:将来の同種行為の禁止や謝罪広告、示談金の支払いに関する合意書の締結。
企業が営業権侵害の開示請求を成功させるための重要なポイント
法人に対する風評被害や信用毀損において、裁判所に「権利侵害の明白性」を認めさせるためには、いくつかの専門的なポイントを押さえる必要があります。
「正当な批判」と「違法な信用毀損」の境界線
企業に対する意見やクレームの中には、消費者の正当な意見表明や、表現の自由の範囲内と評価されるものも含まれます。例えば、サービスに対する客観的な不満や改善を求める意見であれば、直ちに違法とはなりません。 一方で、「客観的な事実と異なる嘘の情報を拡散して企業の社会的評価を貶める行為」や、「営業を妨害する目的であえて悪質なデマを流す行為」は、明確に違法と判断されます。主張の際には、その書き込みが「真実ではないこと」、そして「企業の経済活動に具体的な不利益を与えていること」を論理的に立証しなければなりません。
専門的な証拠の収集と迅速な対応の必要性
企業の法務担当者様だけで誹謗中傷への対応を行う場合、ログの保存期間の壁に阻まれて手遅れになるケースが少なくありません。特にアクセスプロバイダの通信ログは、時間が経つにつれて消滅してしまうため、「一刻も早い証拠保全と法的手続の開始」が生死を分けます。
夕陽ヶ丘法律事務所では、ネット誹謗中傷や企業法務に精通した弁護士が、被害の拡大を防ぎながら迅速に発信者情報開示命令の申し立てをサポートいたします。
まとめ:企業の信用を守るために、泣き寝入りせずに専門家へご相談を
ネット上の悪質なデマや信用毀損の放置は、企業のブランド価値低下やビジネスチャンスの損失を拡大させるリスクをはらんでいます。 新「発信者情報開示命令」の登場により、企業が誹謗中傷の投稿者を特定し、責任を追及するためのハードルは以前よりも低くなりました。しかし、法的な要件の充足や複雑な裁判手続を自社のみで遂行することは容易ではありません。
夕陽ヶ丘法律事務所では、企業の営業権や信用を守るための発信者情報開示請求、削除請求、損害賠償請求において豊富な実績を有しております。風評被害やネット上のデマにお悩みの企業様は、どうぞお気軽にご相談ください。