開示請求にかかった「弁護士費用・裁判実費」を加害者へ全額請求する

【本記事の監修者】
弁護士 井上 正人(大阪弁護士会所属 / 登録番号:第43449号 / 夕陽ヶ丘法律事務所 代表弁護士)
※本記事は、ネット上の誹謗中傷削除・発信者情報開示命令(IPアドレス特定)・仮処分裁判実務に基づき、プロバイダ責任制限法および最新の判例に沿ってわかりやすく解説しています。

Q ネットの誹謗中傷で発信者情報開示請求にかかった弁護士費用や裁判実費は、加害者に全額請求できますか?
A 【結論と請求の可否】発信者情報開示請求に要した弁護士費用や裁判所手数料などの裁判実費は、投稿者による名誉毀損などの不法行為と相当因果関係がある損害として、加害者に対して損害賠償請求することが法律上可能です。ただし、実務上は実費や弁護士費用の全額がそのまま認められるわけではなく、裁判所が事案の内容に応じて相当と認めた一部(一般的には認められた損害賠償額の1割程度が目安とされることが多いです)が加算される傾向にあります。
【弁護士に依頼するメリット】複雑なプロバイダ責任制限法に基づく仮処分申立てや訴訟手続きを弁護士に一任することで、法的に正確な損害賠償請求の構成が可能となり、加害者の特定率や最終的な費用回収の精度を最大化することができます。費用負担に関する疑問や具体的な請求見込み額については、ネット被害に精通した夕陽ヶ丘法律事務所の弁護士へご相談ください。

ネット誹謗中傷の開示請求で発生する費用負担の悩み

ネット上で根拠のない誹謗中傷や悪質な風評被害を受けた場合、被害を受けた個人や企業は、投稿者を特定するために「発信者情報開示請求」を行うことになります。この法的手続きには、裁判所の手数料や郵券代などの実費だけでなく、複雑な法的手続きを弁護士に依頼するための多額の弁護士費用が発生します。

被害者にとって、「加害者が勝手に書き込んだ悪口のせいで、なぜ多額の金銭的負担を強いられなければならないのか」という疑問や怒りは当然のものです。

夕陽ヶ丘法律事務所には、「開示請求にかかった費用は、あとから加害者に全額請求できるのか」というご相談が連日寄せられています。結論からお伝えすると、法律上は加害者に対してこれらの費用の賠償を求めることが可能です。しかし、実務上はいくつかのハードルや計算のルールが存在します。このページでは、開示請求における費用負担の仕組みと、加害者への求償(請求)のポイントについて詳しく解説します。

開示請求にかかる費用とは何か

発信者情報開示請求から投稿者の特定、そして最終的な損害賠償請求に至るまでには、主に以下のような費用が発生します。

  • 裁判所手数料・予納郵券代:発信者情報開示請求の仮処分申立てや訴訟提起、あるいは意見照会に伴う裁判所への納付金や切手代。
  • 戸籍謄本・住民票などの取得費用:相手方の特定や法的手続きに必要な公的証明書の取得実費。
  • 弁護士報酬(着手金・報酬金など):プロバイダに対する任意交渉、仮処分、訴訟、そしてその後の損害賠償請求訴訟に至るまでの一連の業務に対する代理人費用。

これらの費用の総額は、事案の複雑さや経由するプロバイダの数(ID発信者情報開示請求などを含む場合)によって大きく変動し、数十万円から場合によっては100万円を超えることも珍しくありません。

判決例における開示費用の「不法行為損害」としての認められ方

法律上、他人の権利を違法に侵害した者(加害者)は、それによって生じたすべての損害を賠償する責任を負います(民法709条)。

かつての裁判実務では、「発信者情報開示請求は、あくまで加害者を特定するための事前手続に過ぎない」として、弁護士費用や裁判実費の全額を不法行為の損害と認めることに慎重な傾向がありました。

しかし、近年の裁判例では、「インターネット上の匿名掲示板やSNSにおける誹謗中傷被害において、発信者情報開示請求を行うことは、加害者を特定して法的責任を追及するために必要不可欠なステップである」という考え方が定着しています。

そのため、裁判所は、開示請求のために必要となった弁護士費用や実費の一部を、不法行為と相当因果関係のある「損害」として認める判決を多数下すようになっています。

加害者へ「全額」を請求するためのハードルと実務の現実

「弁護士費用や裁判実費を加害者に全額請求できるのか」という点については、実務上非常に重要なポイントがあります。それは、「実際に支払った費用の全額がそのまま認められるわけではない」という点です。

裁判所が加害者に支払いを命じる損害賠償額(慰謝料+弁護士費用等)の算定には、以下のような特徴があります。

  • 裁判所が認める弁護士費用の相場:一般的に、裁判所が不法行為の損害として認める弁護士費用は、認められた慰謝料(損害元本)の「10%程度」が目安とされることが多い傾向にあります。
  • 実際の弁護士費用との乖離:被害者が実際に法律事務所に支払った着手金や報酬金の総額と、裁判所が「相当因果関係がある」と判断する金額の間には、どうしても差額が生じることがあります。
  • 全額回収の難しさ:仮に判決で「弁護士費用〇万円を含めて支払え」という命が下されたとしても、加害者自身に支払い能力(資力)がない場合や、行方不明になってしまった場合には、強制執行を行っても実質的に回収できないリスク(いわゆる「ない袖は振れない」問題)が残ります。

したがって、厳密な意味での「実費・弁護士費用の100%全額」を加害者から確実に取り戻せるとは限らないのが、法的な実務の現実です。

加害者から最大限の費用回収を実現するための対策

では、開示請求にかかる経済的負担を少しでも軽減し、加害者から最大限の金銭的回収を行うためには、どのような点に注意すればよいのでしょうか。

1. 開示請求と損害賠償請求を一体的・戦略的に進める

開示請求の手続き単体で終わらせるのではなく、特定された加害者に対して速やかに慰謝料請求および開示費用請求の訴訟(または示談交渉)を起こすことが重要です。一連の手続きをスムーズに行うことで、無駄なコストの発生を防ぎます。

2. 示談交渉による早期解決と合意書への明記

裁判を起こさず、任意の示談交渉で解決する場合でも、合意書(示談書)の中に「慰謝料のほかに、本件開示請求に要した弁護士費用および実費として金〇〇万円を支払う」という条項を明確に盛り込むことが不可欠です。専門の弁護士が代理人として交渉することで、相手方から納得のいく金額を引き出しやすくなります。

3. 証拠の保全と早期相談

誹謗中傷の書き込みは、時間が経つと削除されたり、プロバイダのログが消失したりするリスクがあります。費用対効果を最大化し、確実な特定と請求を行うためには、被害を受けたら一刻も早く弁護士に相談し、適切な証拠保全を行うことが最大の防御策となります。

まとめ:開示請求・費用請求は夕陽ヶ丘法律事務所にご相談ください

開示請求にかかった弁護士費用や裁判実費は、法的な要件を満たすことで加害者に対して損害賠償として請求することが可能です。しかし、裁判所における認容額の相場や、実際の回収に向けた実務的な判断には高度な専門知識が求められます。

夕陽ヶ丘法律事務所では、ネット誹謗中傷・風評被害対策に特化した弁護士が、発信者情報開示請求から加害者への損害賠償請求、費用回収の交渉までをトータルでサポートいたします。経済的なご負担や費用対効果についても丁寧にご説明いたしますので、一人で悩まずに、まずは当事務所の初回相談をご利用ください。

弁護士 井上正人

この記事の監修

弁護士 井上 正人
(いのうえ まさと)

大阪弁護士会所属(登録番号:43449)
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

相続や遺産分割、借金問題、既婚者との男女トラブルなど、日常の不測の事態に直面した皆様の心理的なご負担を少しでも和らげ、円満な解決を導くためのサポートを徹底して行っています。どんな小さなお悩みでも、まずは当事務所の事務スタッフがLINEのチャットにて丁寧にお話をお伺いいたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。

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