投稿特定後に加害者が「引っ越し・夜逃げ」して逃亡した場合の追跡

【本記事の監修者】
弁護士 井上 正人(大阪弁護士会所属 / 登録番号:第43449号 / 夕陽ヶ丘法律事務所 代表弁護士)
※本記事は、ネット上の誹謗中傷削除・発信者情報開示命令(IPアドレス特定)・仮処分裁判実務に基づき、プロバイダ責任制限法および最新の判例に沿ってわかりやすく解説しています。

Q 誹謗中傷の加害者を特定した後に引っ越しや夜逃げをされて行方不明になった場合、損害賠償金の請求や居場所の特定は諦めるしかないのでしょうか?
A 【弁護士職権を利用した新住所の追跡と法的回収】弁護士会照会(弁護士法23条の2)などの法的手続を用いることで、加害者が住民票を異動させて逃亡した場合でも新住所や住民票の動向を追跡することが可能です。
【逃得を許さない勤務先・財産の差し押さえ】判決や和解を経ていれば、追跡した新住所への訴状送達や、勤務先情報・預貯金口座を特定した上での強制執行(財産差し押さえ)へと移行できるため、泣き寝入りせずに損害賠償金を回収するための法的手段が確実確保されています。

ネット誹謗中傷の特定後に加害者が逃亡するトラブルとは

インターネット上の誹謗中傷や風評被害において、時間と費用をかけて裁判手続きを行い、ようやく発信者情報開示請求が認められて加害者の身元が判明するケースは少なくありません。

しかし、いざ損害賠償請求の訴訟を起こそうとした段階や、慰謝料の支払いを求めようとした矢先に、加害者が音信不通になったり、急に引っ越しをして行方不明になったりするトラブルが発生しています。

「弁護士を通じて特定したのに、夜逃げされてしまったら泣き寝入りするしかないのだろうか」と不安に思われる方も多いですが、決してそのようなことはありません。法律上の正当な手続きを踏めば、逃亡した加害者の居場所を突き止め、最終的に損害賠償金を回収することは十分に可能です。

夕陽ヶ丘法律事務所には、このような悪質な逃亡事案に関するご相談が数多く寄せられています。本記事では、特定後に加害者が引っ越しや夜逃げをした場合の具体的な追跡手法と、実効性のある回収手段について詳しく解説します。

加害者の新住所を割り出す「弁護士職権」の活用

裁判を提起するためには、原則として相手の正確な住所と氏名が必要です。加害者が連絡先を変えたり、住民票を異動させずに夜逃げ同然で姿を消したりした場合、一般の方が居場所を特定するのは極めて困難です。

こうした場面で強力な武器となるのが、弁護士法に基づく調査権、いわゆる弁護士会照会(23条照会)です。

  • 住民票の除票や戸籍の附票の調査:弁護士会を通じて市区町村や関係機関に照会をかけることで、加害者が元の住所からどこへ転出していったのか、その履歴(住民票の除票や戸籍の附票)を追跡することができます。
  • 携帯電話会社やプロバイダからの情報再取得:通信記録や契約情報に残された手掛かりを基に、最新の連絡先や関連情報を法的な権限に基づいて確認することが可能です。

なお、裁判を起こした後に相手が引っ越しをした場合でも、裁判所に「住所補正」や「戸籍の附票の取り寄せ」を行うことで、訴訟書類を新住所に確実に送達させることができます。相手が裁判所からの通知を意図的に無視して受け取らない場合でも、一定の要件を満たせば「公示送達」という手続きを利用して、不在のまま裁判を進行させ勝訴判決を得ることが可能です。

勤務先や保有財産の特定と差し押さえ手続き

住所を突き止めて裁判で勝訴判決を得た、あるいは示談が成立したとしても、肝心の加害者が「お金がない」「払わない」と居直るケースがあります。特に夜逃げをするような人物は、自己の財産を隠そうとすることが多いため、迅速かつ確実な財産の特定が不可欠です。

勤務先情報の特定と給与差し押さえ

加害者がどこかの会社に勤務している場合、その給与債権を差し押さえることが非常に有効です。給与の差し押さえは、毎月の給料から直接お金を回収できるため、回収の確実性が高い方法といえます。

  • 裁判所の第三者からの情報提供手続を利用することで、加害者が勤務している会社(給与支払者)の情報を公的に取得することが可能になります。
  • 勤務先が判明すれば、裁判所に債権差し押さえ命令の申し立てを行い、会社の給与から直接賠償金を回収します。

預貯金口座の特定と強制執行

勤務先だけでなく、加害者が過去に利用していた銀行口座や、現在保有している可能性のある金融機関を特定して差し押さえることも可能です。

  • 判決などの債務名義を取得していれば、金融機関に対する照会手続きを通じて、加害者が口座を持っている支店を特定することができます。
  • 口座が特定できれば、即座に預貯金の差し押さえを実行し、残高から損害賠償金を回収することが可能です。

夜逃げや逃亡を企てる加害者の心理と法的リスク

加害者のなかには、開示請求や損害賠償請求の通知が届いたことで恐怖心を抱き、すべてを投げ出して逃げれば支払わなくて済むと安易に考える人がいます。

しかし、現代の法制度においては、住民票の追跡や財産の強制執行の網が整備されており、一時的に身を隠したとしても法的責任が消滅することはありません。

むしろ、逃げ回ることで以下のような重大なデメリットが加害者側に発生します。

  • 遅延損害金の加算:支払いが遅れれば遅れるほど、本来の慰謝料に加えて遅延損害金が膨らみ、最終的な負担額が大幅に増加します。
  • 財産開示手続への違反ペナルティ:裁判所の呼び出しに応じず財産を隠し続けた場合、刑事罰(罰金や懲役)の対象となるリスクが生じます。
  • 社会的信用の完全な喪失:勤務先への差し押さえが行われることで、職場にトラブルが発覚し、結果的に職を失う原因にもなります。

このように、逃亡は加害者にとって何一つ有利にならないばかりか、事態をより悪化させる愚行にすぎません。被害者側としても、毅然とした態度で法的措置を継続することが重要です。

泣き寝入りせず、専門の弁護士へ早期相談を

ネットの誹謗中傷を行った加害者が特定後に引っ越しをしたり、夜逃げをしたりした場合、個人で追跡するのは時間的にも精神的にも限界があります。プロバイダ責任制限法に基づく開示請求から、その後の住民票追跡、さらには強制執行による回収までをワンストップで遂行するには、高度な専門知識と実務経験が必要です。

夕陽ヶ丘法律事務所では、数多くのネット風評被害・誹謗中傷案件を取り扱っており、相手が行方不明になったり逃亡を試みたりした複雑な事案の解決実績も豊富にございます。

「相手が引っ越してしまい、今の居場所が分からない」「判決は取ったものの、どうやってお金を回収すればいいか悩んでいる」といったお悩みを抱えている方は、どうぞお早めに当事務所の弁護士までご相談ください。あなたの権利と平穏な日常を取り戻すため、全力でサポートいたします。

弁護士 井上正人

この記事の監修

弁護士 井上 正人
(いのうえ まさと)

大阪弁護士会所属(登録番号:43449)
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

相続や遺産分割、借金問題、既婚者との男女トラブルなど、日常の不測の事態に直面した皆様の心理的なご負担を少しでも和らげ、円満な解決を導くためのサポートを徹底して行っています。どんな小さなお悩みでも、まずは当事務所の事務スタッフがLINEのチャットにて丁寧にお話をお伺いいたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。

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