【弁護士に依頼するメリット】専門知識を持つ弁護士に依頼することで、複雑なプロバイダ責任制限法に基づく仮処分申請や訴訟手続きをスムーズに進められ、権利侵害の立証から損害賠償請求までを一貫して有利に行うことができます。
インターネット上の誹謗中傷や悪質な風評被害に直面した際、投稿者を特定して法的責任を追及するために欠かせないのが「発信者情報開示請求」です。しかし、実際に手続きを進めるにあたって、多くの方が不安を抱えるのが裁判費用が総額でいくらかかるのかという点でしょう。
この記事では、発信者情報開示請求を行ってから判決(またはそれに準ずる決定)が出るまでに、どのような名目で、どれくらいの費用がかかるのかを詳しく解説します。
発信者情報開示請求の基本的な仕組みと費用の全体像
インターネット上で名誉毀損やプライバシー侵害などの権利侵害を受けた場合、いきなり投稿者の住所や氏名が分かるわけではありません。まずは投稿に使われたIPアドレスやタイムスタンプを保有するコンテンツ事業者(SNS運営会社やプロバイダなど)に対して開示を求め、その後、判明したIPアドレスから契約者を特定するために接続プロバイダを相手取って裁判を起こすという、二段階のステップを踏むのが原則です。
このプロセスにおいて発生する費用は、大きく分けて以下の2つに分類されます。
- 裁判所へ納める実費(収入印紙代、郵便切手代、謄写費用など)
- 弁護士費用(法律相談料、着手金、報酬金、実費の日当など)
それぞれの詳細について、具体的な内訳を見ていきましょう。
裁判所に納める「実費」の内訳と目安
裁判手続きを行うためには、国(裁判所)に対して所定の費用を納付する必要があります。これらは事件の規模や相手方(被告)の人数によって変動しますが、おおよその目安は以下の通りです。
1. 収入印紙代(訴訟手数料)
裁判を起こす際、裁判所に申し立てる手数料として収入印紙を納めます。発信者情報開示請求は、金銭の支払いを求める通常の民事裁判とは異なり、「非財産権上の請求」として扱われることが多く、一律で13,000円の収入印紙が必要となるのが一般的です。ただし、複数の投稿や複数の事業者に対して同時に請求を行う場合は、事件の数に応じて印紙代が増加します。
2. 予納切手代(郵便切手代)
裁判所が被告に対して訴状や期日呼出状を送付するための郵送料として、あらかじめ切手を予納します。相手方の企業の本社所在地や数によって異なりますが、おおよそ5,000円〜15,000円程度を郵便切手として裁判所に預けます。手続きが終了した時点で余った切手は返還されます。
3. その他の実費
- 資格証明書等の取得費:相手方が法人の場合、商業登記簿謄本(履歴事項全部証明書)を取得するための手数料(数百円程度)がかかります。
- 証拠保全・通信費:問題の書き込み画面を保存するための費用や、裁判所に提出する書類のコピー代、通信費などが発生します。
- 外国法人に対する送達費用:相手方の運営会社が海外企業(X社やMeta社など)である場合、国際郵便(EMS)や外国での送達にかかる翻訳費用や特殊な郵送費として、数万円から十数万円程度が別途上乗せされるケースがあります。
弁護士に依頼する場合の費用と内訳
発信者情報開示請求は、法律上の要件が非常に複雑であり、IT技術やプロバイダの仕組みに関する高度な専門知識が求められます。そのため、多くの被害者は弁護士に代理人を依頼します。弁護士費用は法律事務所ごとに自由化されていますが、一般的な相場観は以下のようになります。
- 法律相談料:初回30分〜1時間あたり5,000円〜10,000円程度(無料としている事務所もあります)
- 着手金:仮処分や裁判の段階ごとに、1事業者あたり10万円〜30万円程度がかかるのが一般的です。複数の段階(発信者情報仮処分、プロバイダに対する訴訟など)を経るため、トータルでの着手金は高くなる傾向があります。
- 報酬金:無事に情報が開示されたり、相手方から損害賠償金を回収できた場合に発生する成功報酬です。相場としては、開示成功1件につき15万円〜30万円程度、あるいは回収額の何パーセントといった形で設定されます。
総額として、弁護士費用と裁判所への実費を合わせると、1つのアカウントや投稿の特定につき、おおよそ30万円から70万円程度を見込んでおく必要があります。海外SNS事業者に対する請求や、裁判が長期化した場合は100万円近くになることもあります。
近年の法改正による費用の変化と「非訟手続」
従来の発信者情報開示請求は、仮処分の手続きを経てから本訴訟を起こすという「二度手間」が必要であり、期間も費用もかさむという大きな課題がありました。
しかし、近年のプロバイダ責任制限法の改正(令和4年10月施行)により、新たに「発信者情報開示命令事件(非訟手続)」という裁判手続きが新設されました。
この新しい制度を利用すると、従来の複雑な裁判手続きに比べて、以下のようなメリットが期待できます。
- 審理の迅速化:書面中心の迅速な手続きとなり、解決までの期間が短縮される傾向にあります。
- 負担の軽減:一つの手続きの中で裁判所が事業者に対して開示を命じることができるため、実費や弁護士の稼働負担が全体として軽減されるケースが増えています。
ただし、新しい制度であっても裁判所を利用する以上は一定の印紙代や切手代等の実費が発生し、弁護士費用が不要になるわけではありません。事案の性質に応じて、通常の訴訟とどちらの手段を選択すべきかは、ネット中傷に強い弁護士と綿密に相談して決定することが重要です。
裁判費用は相手方に請求できるのか?
「せっかく多額の費用を払って裁判に勝っても、赤字になってしまうのではないか」と心配される方も少なくありません。
結論から申し上げますと、判決によって相手方(特定された発信者)に対して、弁護士費用や裁判費用の一部を請求することが法的に可能です。
裁判に勝訴した場合、裁判所は「訴訟費用の〇分の一を被告の負担とする」という判決を下します。ここでいう「訴訟費用」には、裁判所に納めた収入印紙代や切手代などの実費が含まれます。
また、近年の実務では、誹謗中傷の悪質性が高く裁判を起こさざるを得なかったケースにおいて、弁護士費用の一部(一般的には認容額の1割程度)についても損害賠償の一部として加算して請求することが認められる傾向にあります。
しかし、実務上最も大きな壁となるのが、「特定された相手方に支払い能力があるかどうか」という問題です。どれだけ裁判で勝訴し、相手方に損害賠償や裁判費用の支払いが命じられたとしても、相手が無職であったり行方不明であったりする場合、実際には回収が困難であるケースも存在します。そのため、費用対効果や経済的リスクについては、依頼前の段階で弁護士から十分な見通しを聞いておくことが不可欠です。
まとめ:正確な費用見積もりは専門の弁護士へご相談を
発信者情報開示請求で判決が出るまでにかかる費用は、裁判所に納める実費(印紙代・切手代など)が数万円程度、弁護士に依頼する場合の費用が数十万円以上となります。
ネットの誹謗中傷被害は、放置すればするほど風評被害が拡大し、精神的にも金銭的にも大きなダメージを受けてしまいます。まずは正確な費用の見積もりや、相手を特定できる可能性の有無について、ネット誹謗中傷対策に精通した弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所までお気軽にご相談ください。あなたの権利を守り、平穏な日常を取り戻すための最適なサポートをご提案いたします。