X Corp.に対する開示命令手続きにかかる期間(約2ヶ月〜4ヶ月)

【本記事の監修者】
弁護士 井上 正人(大阪弁護士会所属 / 登録番号:第43449号 / 夕陽ヶ丘法律事務所 代表弁護士)
※本記事は、ネット上の誹謗中傷削除・発信者情報開示命令(IPアドレス特定)・仮処分裁判実務に基づき、プロバイダ責任制限法および最新の判例に沿ってわかりやすく解説しています。

Q X(旧Twitter)の運営会社であるX Corp.に対して発信者情報開示命令を申し立てた場合、IPアドレスやタイムスタンプなどのデータが手元に届くまでにどれくらいの期間がかかりますか?
A 【開示命令の期間の目安】X Corp.に対する発信者情報開示命令の申立てからIPアドレス等のデータ受領までの期間は、おおむね2ヶ月から4ヶ月程度が目安となります。X Corp.はアメリカ合衆国に本社を置く外国法人であるため、国内の事業者に対する手続きとは異なり海外送達手続きや翻訳作業が必要となり、事案の複雑さや裁判所の進行状況によってはさらに期間を要する場合があります。
【弁護士への相談と早期着手の重要性】誹謗中傷や名誉毀損による投稿のログ保存期間は限られており、対応が遅れると証拠が消失して投稿者を特定できなくなるリスクが高まります。そのため、証拠保全の段階からネット上の風評被害や発信者情報開示請求に精通した弁護士に速やかに相談し、迅速かつ正確な法的手続きを進めることが極めて重要です。

X Corp.に対する開示請求の手続きと期間の全体像

SNS上で誹謗中傷や名誉毀損にあたる投稿をされた場合、投稿者を特定して法的責任を追及するためには、プラットフォーム事業者に対して発信者情報の開示を求める必要があります。

特に、日本国内でも利用者の多いX(旧Twitter)を運営する「X Corp.」はアメリカ合衆国に本社を置く外国法人です。そのため、国内の事業者に対する手続きとは異なる独自の法的ステップを踏むことになり、全体の期間や手続の進行においても専門的な知識が求められます。

裁判所への申立てから、実際に投稿者のIPアドレスやタイムスタンプといったログデータを受領するまでの期間は、おおむね2ヶ月から4ヶ月程度を見込んでおく必要があります。この期間はあくまで一般的な目安であり、裁判所の混雑具合やX Corp.側の対応状況、さらには翻訳手続きのボリュームなどによって前後します。

期間の大部分を占める具体的なステップとタイムライン

X Corp.に対して開示命令を申し立て、無事にデータを受け取るまでのプロセスは、いくつかの段階に分かれています。それぞれの段階でどのような作業が行われ、どれくらいの時間がかかるのかを把握しておくことが重要です。

  • 証拠保全と弁護士による受任・準備(約2週間〜1ヶ月):まずは問題となる投稿のスクショやURLなどの証拠を確保し、発信者情報開示請求を行うための法的要件を満たしているか精査します。
  • 裁判所への開示命令申立て(約1週間〜2週間):請求の正当性を証明する陳述書や証拠書類をまとめ、管轄の裁判所に発信者情報開示命令の申立てを行います。
  • 外国法人に対する裁判所からの通知・送達(約1ヶ月〜2ヶ月):X Corp.は海外法人であるため、日本の裁判所からアメリカの本社へ書類を正式に送達(または特別送達)する手続きが発生します。これが期間全体の中で最も時間を要する要因の一つです。
  • 審尋(意見聴取)と裁判所の判断(約2週間〜1ヶ月):X Corp.側からの意見書提出などを経て、裁判所が開示を命じるべきかどうかの判断を下します。
  • IPアドレス等のデータ受領(数日〜1週間):裁判所から開示命令が発令され、それがX Corp.に送達された後、データが開示・提供されます。

外国法人(X Corp.)を相手取る独自の手続き上の注意点

国内の企業であれば比較的スムーズに進む手続きであっても、アメリカに拠点を置くX Corp.を相手にする場合は、いくつかの特有のハードルが存在します。これらが期間に影響を与える原因ともなります。

  • 外国文書の翻訳費用と時間:裁判所に提出する申立書や証拠資料の多くを英語に翻訳する必要があり、正確な翻訳作業には専門的な法務知識と一定の時間がかかります。
  • 国際送達手続きの厳格さ:日本の裁判所から海外の企業に対して公式に書類を届けるためには、外交ルートや条約に基づいた厳格な手続きを経る必要があり、数週間のタイムラグが生じます。
  • 任意開示の限界と裁判手続きの必須性:かつては弁護士会を通じた任意の照会(28条照会)で対応してくれるケースもありましたが、現在は原則として裁判所を通じた法的な開示命令手続きを踏まなければデータが得られない仕様となっています。

IPアドレス取得後に待ち受ける次のステップ

X Corp.から無事にIPアドレスやタイムスタンプの開示を受け取ったら、それで全ての procedimento が完了するわけではありません。これは投稿者特定の「前半戦」に過ぎません。

IPアドレスが判明した後は、その情報をもとにプロバイダ(ドコモ、ソフトバンク、光回線事業者など)を特定し、契約者の氏名や住所といった個人情報を特定するための「発信者情報開示請求訴訟」や「送信防止措置請求」を改めて行う必要があります。

プロバイダ側のログ保存期間は、一般的に3ヶ月から半年程度と非常に短いため、X Corp.からのデータ開示に時間がかかりすぎると、次の段階であるプロバイダのログが消えてしまうリスク(いわゆる「ログの消失」)が生じます。だからこそ、最初のX Corp.に対する申立てをいかに迅速かつ確実に行うかが、全体の成否を分ける鍵となります。

迅速な対応と専門家への相談の重要性

ネット上の誹謗中傷や風評被害において、時間は最も重要なリソースの一つです。先述した通り、プロバイダのアクセスログ保存期間には限度があるため、X Corp.に対する開示命令手続きで無駄に時間を費やしている余裕はありません。

個人で外国法人を相手に裁判手続きを進めようとすると、複雑な英語の書類作成や国際送達のルール、裁判所とのやり取りにおいて致命的な遅れや不備が生じるリスクが高まります。

夕陽ヶ丘法律事務所では、SNS上の誹謗中傷対策や国内外のプラットフォームに対する発信者情報開示請求において豊富な実績を有しております。ログが消滅してしまう最悪の事態を防ぎ、最短期間で投稿者を特定するために、誹謗中傷の被害に気づいた段階で、できるだけ早期に弁護士へご相談ください。

弁護士 井上正人

この記事の監修

弁護士 井上 正人
(いのうえ まさと)

大阪弁護士会所属(登録番号:43449)
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

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