【弁護士による回収サポート】財産調査や裁判所への強制執行手続は専門的な知識と厳格な書類作成が必要となるため、誹謗中傷問題や損害賠償請求に強い弁護士に依頼することで、確実かつスムーズな慰謝料回収を実現できます。
X(旧Twitter)上で執拗な誹謗中傷を受けた被害者にとって、発信者情報開示請求によって加害者を特定し、損害賠償請求を行うことは法的正義を実現する上で極めて重要なステップです。
しかし、裁判で勝訴したり、示談書を取り交わしたりしたにもかかわらず、加害者が「お金がない」などと言って一向に支払いに応じないケースは決して少なくありません。
もし特定された加害者が「会社員」であれば、勤務先を突き止めることで給与の差押え(債権執行)という強力な法的手段に移行することができます。
この記事では、Xの誹謗中傷トラブルにおける、会社員である加害者に対する給与差押えの仕組みと具体的な実務手順について詳しく解説します。
1. 示談金や賠償金が支払われない場合の強制執行
発信者情報開示請求によって加害者の氏名や住所が判明した後は、慰謝料などの損害賠償請求を行います。話し合いによる示談がまとまれば示談書(公正証書にすることもあります)を作成し、折り合いがつかなければ損害賠償請求訴訟を提起します。
裁判で勝訴判決を得るか、法的効力のある調停調書や和解調書、あるいは強制執行認諾文言付きの公正証書があれば、加害者が任意に支払わない場合に強制執行(財産の差押え)を申し立てる権利が与えられます。
強制執行の対象となる主な財産には以下のようなものがあります。
- 預貯金口座(どこの銀行にあるか分かっていれば強力)
- 自宅などの不動産(持ち家の場合)
- 自動車などの動産
- 勤務先から支給される給与や賞与
この中で、一般的な会社員である加害者に対して最も現実的かつ効果的なのが給与の差押えです。
2. なぜ会社員の給与差押えが有効なのか
預貯金口座の差押えも有効な手段ですが、口座内の残高が少なくなっていれば回収できる金額も限定されてしまいます。また、どの金融機関のどこの支店に口座を持っているか特定しなければならないというハードルもあります。
一方、会社員である加害者は、毎月必ず会社から給与(および賞与)を受け取っています。給与は生活の基盤であるため、ここを差し押さえられることは加害者にとって非常に大きなプレッシャーとなります。
さらに、会社に差押えの通知が届くため、加害者にとっては職場にネットでの誹謗中傷行為が発覚するという心理的ダメージも伴います。そのため、給与差押えの手続を進めると知った途端、慌てて一括で支払いに応じる加害者も少なくありません。
3. 給与差押えを行うための前提条件
会社員の給与を差し押さえるためには、大前提として「債務名義(さいむめいぎ)」と呼ばれる公的な文書が必要です。
具体的には、以下のいずれかを取得している必要があります。
- 損害賠償請求訴訟における勝訴判決(または和解調書、労働審判調書など)
- 法的効力のある合意が記載された公正証書(強制執行認諾文言付き)
- 支払督促(異議申し立てがなかった場合)
「相手がSNSで謝罪して支払うと言ったから口約束だけで済ませた」「個人的なLINEのやり取りで『払います』と書いてあるだけ」という状態では、裁判所を通した強制執行を行うことはできません。必ず法的な裏付けとなる書類が必要になります。
4. 加害者の勤務先を特定する方法
給与を差し押さえるためには、裁判所に提出する申立書に「加害者の勤務先(会社名・所在地・代表者名)」を正確に記載しなければなりません。
Xでの開示請求の段階では、通常は自宅住所と氏名、連絡先の電話番号までしか判明しません。勤務先まで判明していないケースが多いため、以下の方法で勤務先を特定する必要があります。
- 開示請求の過程や裁判の答弁書・準備書面で勤務先が言及されていないか確認する
- 加害者のSNSアカウント(Xの別アカウントやInstagram、Facebook、LinkedInなど)の投稿から勤務先を推測する
- 探偵社や調査会社による素行調査・勤務先特定調査を利用する
近年の法改正により、裁判の判決等を持っている債権者は、弁護士会照会(23条照会)や裁判所の制度を利用して、一定の条件下で相手の財産情報に近づくための調査がしやすくなっています。勤務先がどうしても分からない場合は、一人で悩まずに弁護士にご相談ください。
5. 給与差押えの具体的な仕組みと上限額
給与の差押え(債権執行)は、勝訴判決などを得た後に、加害者の住所地を管轄する地方裁判所に申し立てを行います。
申し立てが受理されると、裁判所から加害者の勤務先(会社)に対して「債権差押命令」が送達されます。この通知が会社に届くと、会社は加害者に給与を全額支払うことが禁止され、差し押さえられた金額分を被害者(債権者)に直接支払う義務が生じます。
ただし、加害者の生活権を完全に奪うことは法律で禁止されているため、給与の全額を差し押さえることはできません。原則として以下のルールが定められています。
- 給与の手取り額(税金等を控除した額)が40万円以下の場合:手取り額の4泊分の1(25%)までが差押えの対象
- 給与の手取り額が40万円を超える場合:手取り額から40万円を控除した残額に、全額を加えた額が差押えの対象
たとえば、加害者の月々の手取り額が30万円であれば、その4分の1にあたる7万5,000円を毎月差し押さえて回収していくことになります。損害賠償金の総額(慰謝料や弁護士費用など)が完済されるまで、毎月継続的に給与から天引きされる仕組みです。
6. 給与差押えに関するよくある懸念点
給与差押えを進めるにあたり、被害者側からよくいただくご質問や懸念点について解説します。
会社にバレることで加害者から逆恨みされないか?
裁判所からの差押え通知は、会社の総務部や人事部に直接郵送されます。これにより、会社側は従業員がネット上でトラブルを起こし、損害賠償命令を受けていることを知ることになります。
加害者が会社に居づらくなる可能性は高いですが、そもそも悪質な誹謗中傷を行って賠償金を踏み倒そうとしたのは加害者自身です。被害者が正当な権利行使を行うことに対して遠慮する必要はありません。逆恨みや接触禁止命令違反などの脅威を感じる場合は、弁護士が代理人としてすべての交渉・手続窓口となるため安心です。
会社が差押えを無視したり、解雇したりすることはあるか?
裁判所の差押命令を会社が無視して加害者に給与を全額支払い続けた場合、会社自身が損害賠償責任を負うリスクがあるため、通常の企業であれば適切に対応します。
また、「借金や差押えを理由に社員を解雇してよいか」という点については、法律上、正当な理由のない解雇は厳しく制限されています。ただし、社内での信用失墜や懲戒処分を受ける可能性は加害者側の問題となります。
7. 悪質な加害者の踏み倒しを防ぐために弁護士ができること
Xでの誹謗中傷トラブルは、発信者情報開示請求によって加害者を特定し、示談や裁判で勝訴して終わりではありません。「お金を実際に回収するまで」が法的闘争です。
加害者が任意の支払いに応じない場合、財産の調査や強制執行の手続は専門的な知識と裁判所への厳格な書類提出が必要となり、被害者ご本人だけで遂行するのは大きな負担となります。
夕陽ヶ丘法律事務所では、XなどのSNSにおける誹謗中傷の特定から、損害賠償請求、そして任意の支払いに応じない加害者に対する給与差押えをはじめとした強制執行手続まで、ワンストップでサポートしております。
「裁判に勝ったのに相手が払わない」「勤務先が分かっているので給与を差し押さえたい」とお悩みの方は、ぜひ当事務所の弁護士までご相談ください。あなたの権利と平穏な日常を取り戻すため、徹底的にサポートいたします。