SNS上の「偽の採用募集・スカウトアカウント」による詐欺被害防衛

【本記事の監修者】
弁護士 井上 正人(大阪弁護士会所属 / 登録番号:第43449号 / 夕陽ヶ丘法律事務所 代表弁護士)
※本記事は、ネット上の誹謗中傷削除・発信者情報開示命令(IPアドレス特定)・仮処分裁判実務に基づき、プロバイダ責任制限法および最新の判例に沿ってわかりやすく解説しています。

Q SNSで自社名やロゴを勝手に使った偽の採用スカウトアカウントを発見した場合、企業としてどのような法的措置や削除請求ができますか?
A 【法的根拠と企業が被るリスク】実在する企業を騙る偽アカウントによる詐欺行為は、商標権侵害、パブリシティ権侵害、および民法上の不法行為に該当します。放置すると企業の採用ブランド失墜や顧客からの信用低下を招くため、発見次第の迅速な対応が不可欠です。
【弁護士による具体的な対処法】プラットフォーム運営会社に対する規約違反および権利侵害に基づく迅速なアカウント削除申請や凍結請求を行います。さらに、悪質ななりすまし犯に対しては、プロバイダ責任制限法に基づく発信者情報開示請求や、損害賠償請求の手続きを弁護士を通じて進めることが被害拡大の防止に最も効果的です。

近年、X(旧Twitter)やInstagram、TikTokなどのSNSプラットフォーム上で、実在する有名企業や急成長中のベンチャー企業を騙り、「高収入の在宅ワーク」「SNSマーケティングのスカウト」「簡単な作業で稼げる採用募集」などと謳って一般ユーザーを巧妙に誘導する詐欺アカウントが急増しています。

こうした偽アカウント(なりすましアカウント)は、単に個人が被害に遭うだけでなく、騙られた企業側にとっても「採用ブランドの失墜」「顧客からの信用低下」「サポート窓口へのクレーム対応の負担」など、計り知れない風害被害をもたらします。

本記事では、SNS上で自社を騙る偽スカウトアカウントを発見した際、企業としてどのように法的手段を講じ、被害を防衛すべきかについて、夕陽ヶ丘法律事務所の弁護士が実務的な観点から詳しく解説します。

SNSにおける偽スカウト・採用詐欺の手口と企業が被るリスク

偽スカウトアカウントの多くは、企業の公式サイトからロゴマーク、会社概要、さらには実在する人事担当者や経営者の写真を無断で転載し、本物の公式アカウントであるかのように巧妙に偽装しています。

彼らの主な目的は、DM(ダイレクトメッセージ)や外部のLINEオープンチャット等へ誘導し、「登録料」や「初期費用」、「教材費」といった名目で金銭をだまし取ること、あるいは一般のSNSユーザーを犯罪の実行犯(受け子や不正送金など)に仕立て上げることです。

このような詐欺行為に企業名が利用された場合、企業側には次のような重大なリスクが生じます。

  • 企業イメージ・ブランド価値の著しい低下: 「悪質な詐欺を行っている企業」という誤った認識が広がり、顧客や取引先からの信用が失われます。
  • 採用活動への深刻な悪影響: 求職者が警戒し、本来の採用応募者が激減するだけでなく、内定辞退や企業への不信感につながります。
  • カスタマーサポートの機能不全: 被害者からの問い合わせや抗議の電話・メールが殺到し、通常の業務が圧迫されます。

自社が無関係であることを証明し、ブランドを守るためには、「放置せず、迅速にアカウントの削除および凍結を行わせる」ことが不可欠となります。

偽スカウトアカウントに対する法律上のアプローチ

偽アカウントに対してプラットフォーム上で削除や凍結を求めても、一般ユーザーからの通報だけでは運営会社がすぐに対応してくれないケースが少なくありません。そのため、法律上の根拠を示した上で、毅然とした対応を行う必要があります。

主に活用される法的根拠としては、以下のものが挙げられます。

1. 商標権侵害に基づく主張

企業のロゴマークや登録商標が無断で使用されている場合、商標権侵害(商標法違反)に該当する可能性があります。商標権者は、自己の登録商標を使用する権利を独占しているため、無断で商標を使用しているアカウントに対しては、その使用差止や発信内容の停止を求める強い法的根拠となります。

2. パブリシティ権および肖像権の侵害

実在する役員や従業員の写真、あるいは著名な所属タレントの画像などが無断使用されている場合、肖像権やパブリシティ権(経済的な利益や顧客吸引力を有する人格的利益)の侵害となります。これらも民法上の不法行為(民法第709条)を構成するため、削除請求の正当な根拠となります。

3. 不正競争防止法違反(商品等表示混同惹起行為)

偽アカウントが、あたかも本物の公式企業であるかのように誤認させ、顧客や求職者を誘引している場合、不正競争防止法に違反する可能性があります。これにより、他人の商品や営業表示と混同を生じさせる行為として、差し止めの請求が可能になります。

実務的な削除・凍結のステップ

企業が偽スカウトアカウントによる被害を防衛するために踏むべき具体的なステップは以下の通りです。

  1. 証拠の保全(スクショ撮影とURLの保存): アカウントが強制削除や逃亡する前に、プロフィール画面、問題のある投稿、DMのやり取りなどのスクリーンショットを漏れなく撮影し、アカウントのURLやIDを正確に記録します。
  2. プラットフォームの窓口からの削除申請: 各SNSが用意している「なりすまし報告窓口」や「商標権侵害の申告フォーム」を使用し、証拠を添えて削除を要請します。
  3. 弁護士名義による削除・凍結要請の送付: プラットフォームの通常窓口で対応されない場合や、迅速な対応が必要な場合は、弁護士名義で法的な根拠を示した削除要請書(警告書)を運営会社やホスティング事業者に対して送付します。弁護士が介入することで、運営側の優先的な対応を引き出しやすくなります。
  4. 発信者情報開示請求および刑事告訴の検討: 詐欺被害が甚大な場合や、組織的な犯罪グループによる犯行であると推測される場合は、プロバイダ責任制限法に基づく発信者情報開示請求を行い、発信者の特定(IPアドレスや通信記録の取得)を進めます。さらに、警察への被害届の提出や刑事告訴を行い、刑事責任の追及を視野に入れます。

企業の二次被害を防ぐための広報・防衛策

法的措置と並行して、一般ユーザーや求職者に対して迅速に注意喚起を行うことも、二次被害の拡大を防ぐために極めて重要です。

  • 公式サイトおよび公式SNSでの注意喚起の掲出: トップページや採用ページ等に「当社を騙った偽アカウント・スカウトにご注意ください」といった警告文を分かりやすく掲載し、公式アカウントの正しいIDや連絡先を明記します。
  • 採用チャネルの明確化: 「当社からのご連絡は必ず公式ドメインのメールアドレス、または認証マークの付いた公式アカウントからのみ行います」といったルールをあらかじめ周知徹底します。
  • 定期的なSNS上のモニタリング体制の構築: 自社名やブランド名、主要な役員名などがSNS上でどのように言及されているかを定期的に監視し、不審なアカウントを発見した際は初期段階で対処できる体制を整えます。

まとめ:偽スカウト対策はスピードが命。専門弁護士へご相談を

SNS上の偽の採用募集・スカウトアカウントを放置することは、企業の信頼を失うだけでなく、思わぬ二次被害や法的トラブルに巻き込まれるリスクを高めます。

偽アカウントを発見した際は、自社だけで対応に苦慮するのではなく、ネット上の風評被害や誹謗中傷、知的財産権侵害に精通した弁護士に速やかにご相談ください。夕陽ヶ丘法律事務所では、迅速な証拠保全からプラットフォームへの削除交渉、発信者特定に至るまで、企業ブランドを守るためのトータルな法的サポートを提供しております。被害が深刻化する前に、ぜひ一度当事務所へお問い合わせください。

弁護士 井上正人

この記事の監修

弁護士 井上 正人
(いのうえ まさと)

大阪弁護士会所属(登録番号:43449)
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

相続や遺産分割、借金問題、既婚者との男女トラブルなど、日常の不測の事態に直面した皆様の心理的なご負担を少しでも和らげ、円満な解決を導くためのサポートを徹底して行っています。どんな小さなお悩みでも、まずは当事務所の事務スタッフがLINEのチャットにて丁寧にお話をお伺いいたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。

TOP