既婚男性が「自分の年齢を10歳若く偽っていた」場合の貞操権侵害

【本記事の監修者】
弁護士 井上 正人(大阪弁護士会所属 / 登録番号:第43449号 / 夕陽ヶ丘法律事務所 代表弁護士)
※本記事は、貞操権侵害(独身偽装被害)における不法行為責任(民法709条)、裁判例の慰謝料算定基準、および相手の妻からの不貞請求防御実務に基づきわかりやすく解説しています。

Q 独身だと騙されて交際していた相手が、既婚者であるだけでなく年齢も10歳若く偽っていました。この場合、年齢を偽られたこと自体も慰謝料請求の理由になりますか?
A はい、既婚隠し(独身偽装)とあわせて年齢を大幅に偽る行為は、婚姻適齢期の女性の意思決定を歪める悪質な不法行為(民法709条)にあたります。貞操権侵害および自己決定権の侵害として、慰謝料請求の重要な法的根拠になります。

マッチングアプリや職場、友人関係などで知り合った男性から「独身」と聞かされていただけでなく、実際よりも「10歳若く」年齢を偽られていた――。このような悪質なケースが後を絶ちません。

特に結婚を視野に入れている女性にとって、相手の年齢や婚姻歴は、交際を続けるか、将来のパートナーとして選ぶかを決めるための極めて重要な要素です。

1. 既婚隠しと「年齢偽装」がもたらす法的問題

単に年齢をサバを読む行為は、日常会話の範疇であれば法的な問題に発展しないこともあります。しかし、恋愛関係や結婚を前提とした交際において、年齢や婚姻の有無を偽ることは、相手の性的自己決定権や結婚生活設計の自由を著しく害する行為となります。

民法709条は、故意または過失によって他人の権利や法律上保護される利益を侵害した者に損害賠償責任を課しています。

結婚適齢期における年齢の重要性

特に女性側が結婚や出産を強く意識している年齢層である場合、年齢の詐称は致命的な被害をもたらします。

  • 時間の搾取:出産適齢期の限られた時間を、既婚者との無意味な交際に費やされてしまった。
  • 意思決定の歪曲:もし本当の年齢や既婚者であることを最初から知っていれば、絶対に交際・性的関係を持たなかった。

これらはすべて、法的に保護されるべき「性や婚姻に関する自己決定権(貞操権)」の侵害に該当します。

2. 貞操権侵害としての慰謝料請求のポイント

既婚者が独身と偽って関係を持つ行為は、裁判実務においても不法行為として慰謝料請求が認められるケースが多く存在します。これに「10歳もの年齢詐称」が加わることで、以下の要素が加味され、慰謝料額の算定において加重要素として働くことがあります。

  • 欺瞞性の高さ:単に既婚を隠すだけでなく、年齢まで大幅に偽ることで、より巧妙に被害者を信じ込ませている点。
  • 精神的苦痛の大きさ:発覚した際の絶望感や、将来設計を根底から破壊されたことに対する精神的損害。

請求にあたって集めるべき証拠

法的措置を検討するにあたっては、以下の事実を証明する証拠が不可欠となります。

  • 相手が「独身である」と偽っていたことを示すメッセージ(LINEやメール、アプリのやり取り)
  • 年齢を偽っていたことを示す客観的資料(運転免許証や戸籍事項証明書などで判明した本当の年齢と、相手が主張していた年齢の乖離)
  • 肉体関係があったことを推認させる客観的証拠
  • 精神科や心療内科を受診した場合はその診断書(精神的損害の証明)

3. 相手の配偶者からの「ダブルトラブル」への警戒

独身偽装交際の被害に遭った女性が直面する大きなリスクの一つに、いわゆる「ダブルトラブル」があります。

これは、既婚であることを隠していた男性の妻から、あなたに対して「夫と不貞行為をした」として高額な慰謝料請求がなされるケースです。

被害者であるはずのあなたが、加害者である既婚男性の嘘のせいで、妻からの法的追及を受けるという理不尽な状況に陥るおそれがあります。

ダブルトラブルに対する防御策

このような状況を防ぐ、あるいは対抗するためには、以下のスタンスが重要になります。

  • 不貞の故意・過失の欠如:交際開始時から現在に至るまで、相手が独身であると信じ込んでおり、信じるにつき相当な理由(過失がないこと)があったことを主張する。
  • 男性への求償権行使:万が一、妻に対して慰謝料を支払わざるを得なくなった場合でも、そもそもそれは男性が独身を偽ったことが原因であるため、支払った全額(または一部)を男性に対して「求償権」として請求することができます。

4. 年齢偽装と独身偽装による精神的・時間的損害を泣き寝入りしないために

既婚隠しや大幅な年齢詐称を伴う悪質な交際は、被害者のこれからの人生設計や尊厳を深く傷つける不法行為です。相手の身勝手な嘘によって奪われた時間や精神的苦痛は、法的手段を通じて適正な慰謝料という形で償わせるべきものです。また、配偶者からの予期せぬ請求といった二次被害に直面した際も、正しい法的知識と証拠をもって適切に対処することが重要となります。ひとりで抱え込まず、法的観点から適切な解決策を検討することをお勧めします。

弁護士 井上正人

この記事の監修

弁護士 井上 正人
(いのうえ まさと)

大阪弁護士会所属(登録番号:43449)
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

相続や遺産分割、借金問題、既婚者との男女トラブルなど、日常の不測の事態に直面した皆様の心理的なご負担を少しでも和らげ、円満な解決を導くためのサポートを徹底して行っています。どんな小さなお悩みでも、まずは当事務所の事務スタッフがLINEのチャットにて丁寧にお話をお伺いいたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。

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