独身と偽って交際・性交渉を行う「独身偽装交際」や「貞操権侵害」の問題は、近年のマッチングアプリやSNSの普及に伴い急増しています。さらに悪質なケースでは、偽名や架空の勤務先を使い、関係がこじれると一方的に連絡を断って姿を消す加害者が後を絶ちません。
1. 独身偽装と「貞操権侵害」の法的責任
独身と偽り、結婚を期待させるような言動を取りながら性交渉に至る行為は、民法709条の不法行為を構成します。これは、相手の「誰とどのような関係を結ぶかを選ぶ権利(貞操権)」や人格的利益を違法に侵害するものと評価されます。
- 不貞行為(W不倫など)との違い:被害者自身が「相手は独身である」と信じ込まされていた場合、被害者側に不法行為責任(配偶者に対する賠償責任)は発生しません。むしろ、被害者自身が騙された被害者であり、既婚者側に対して精神的苦痛に対する慰謝料を請求できる立場となります。
- 詐欺罪との違い:金銭をだまし取られた場合の「詐欺罪(刑法246条)」とは異なり、身体的な関係を伴う恋愛感情の搾取は刑事事件化のハードルが高いケースが多いです。そのため、民事上の不法行為(貞操権侵害)に基づく損害賠償請求(慰謝料請求)が主な法的解決手段となります。
2. 偽名・偽身分を使われた場合の壁と突破口
「名前も仕事も偽られていた」「LINEのIDや電話番号しかわからない」という状況では、一般の方が自力で相手の本名を割り出し、内容証明郵便を送ったり裁判を起こしたりすることは極めて困難です。
しかし、弁護士が介入することで、以下のような法的手法(調査・照会制度)を利用できるようになります。
弁護士会照会(23条照会)の活用
弁護士法第23条の2に基づく照会制度を利用することで、弁護士会を通じて通信事業者や関連企業に対して情報の開示を求めることができます。
- 携帯電話番号からの特定:番号の契約者情報(氏名・住所)を調査するための足がかりとします。
- SNSやマッチングアプリの運営会社への開示請求:アカウントの登録情報やログイン時のIPアドレス等の開示を求め、発信者情報開示請求へとつなげます。
勤務先やクレジットカード情報の特定
過去のデート時の領収書、利用した店舗の履歴、SNSに残された写真の背景など、わずかな手がかりから勤務先や生活圏を割り出す法的なアプローチを検討します。
3. 弁護士による調査から法的責任追及までの流れ
偽名や架空のプロフィールを使う悪質な独身偽装者に対しては、客観的な証拠を集め、法的なアプローチで逃げ場をなくしていくことが不可欠です。
- 証拠の保全とデジタルデータの解析 やり取りのスクリーンショットや、相手が送ってきた写真のExifデータ(撮影日時や位置情報が残っている場合あり)などを精査し、偽りのプロフィールの矛盾点を洗い出します。
- 弁護士職権によるスピーディーな調査 個人では開示されない情報も、弁護士の職権を用いることで法的に正当な手続きとして取得に動きます。
- 居場所特定後の厳格な法的措置 相手の身元が判明した段階で、内容証明郵便による慰謝料請求を行い、誠実な対応が見られない場合は直ちに慰謝料請求訴訟(裁判)を提起します。
4. 泣き寝入りせず、まずは弁護士にご相談を
偽名や偽身分を使って遊ぶ既婚者の中には、「どうせ本名も分からないから逃げ切れるだろう」と高を括っている者が少なくありません。しかし、法律の専門家である弁護士が本気で調査を行えば、隠し通すことは不可能です。
相手の嘘に気づいたとき、精神的なショックや怒りから一人で抱え込んでしまいがちですが、法的手段によって責任を追及することは十分に可能です。泣き寝入りせず、まずは専門家である弁護士へご相談ください。