マッチングアプリを利用して出会った相手と交際に発展したものの、後になって相手が既婚者であることが発覚するトラブルが後を絶ちません。それだけでなく、相手の配偶者から「あなたにも不貞の責任がある」として高額な慰謝料を請求される「ダブルトラブル」に巻き込まれるケースも増えています。
今回は、その中でも特に議論になりやすい「マッチングアプリのサブ写真に子供の写真が写っていた場合の過失判定」について、法律上の考え方と具体的な反論のポイントを詳しく解説します。
1. 既婚者トラブルにおける「過失(注意義務)」の基本原則
不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)において、他人の配偶者と肉体関係等を持つ不貞行為を行った場合、原則として慰謝料を支払う義務を負います。
しかし、自分が「相手は独身である」と信じ込んでおり、そう信じたことについてやむを得ない事情(過失がないこと)が認められる場合には、慰謝料の支払いを免れる(または減額される)ことがあります。
反対に、配偶者側から「相手は既婚者であると気づくべきだった(過失があった)」と主張される典型例として、以下のような要素が挙げられます。
- 土日や夜間に連絡が取れなくなる
- 自宅に絶対に呼んでくれない・教えてくれない
- プロフィールや写真に不自然な点があった
今回問題となる「子供の写真の写り込み」は、最後の「プロフィールや写真の不自然さ」に該当するかどうかの判断が争点となります。
2. 「子供の写真」が写っていた場合の法的評価
マッチングアプリのメイン写真やサブ写真に子供が写っている、あるいは子供に関する言及がある場合、裁判実務ではどのように評価されるのでしょうか。
サブ写真に子供が写っている場合の主な争点
- 写真の明確性: その写真が「明らかに自分の子供」と分かるものだったのか、単に小さな子供や赤ちゃんの写真が風景の一部として紛れていた程度なのか。
- 相手からの説明(言い訳): 相手から「親戚の子供」「友達の子どものお世話をしたときのもの」「甥っ子・姪っ子」などと説明されていたか否か。
- アプリの信頼性・規約: 独身証明書の提出が必須のアプリであったり、プロフィール欄に「未既婚:独身」「子供:なし(または同居していない等)」と明確に虚偽記載がなされていたりしたか。
単に「子供っぽい写真があった」という事実だけをもって、直ちに「既婚者であると見抜けなかったのは過失である」と結論づけられるわけではありません。
3. 配偶者からの主張に対する効果的な反論アプローチ
相手の配偶者側から「子供の写真があったのだから既婚者と知っていたはずだ、あるいは過失がある」と主張された場合、以下のような事実を整理して反論を行うことが重要です。
① 相手による偽装工作と巧みな言い訳の立証
既婚者の中には、マッチングアプリで独身を装うために、あえて他人の子供の写真や、自身の過去の写真、あるいは親族の子供をダシにして「子供好きアピール」を行う悪質なケースも存在します。 交際期間中に相手から「子供が好きだから」「姪の面倒をよく見ているんだ」といった説明を受けていた場合、その旨を詳細に主張・立証することで、過失がなかったことを裏付ける材料になります。
② アプリのプロフィール等の客観的状況
利用していたマッチングアプリ上で、相手が「独身」を選択し、プロフィールやメッセージのやり取りの中で独身であることを強く強調していた場合、一般の利用者がそれを信じることは自然であり、不審に思うべき特段の事情があったとは言えません。
③ 独身偽装交際における被害者としての側面
このようなケースでは、相談者自身も「独身だと騙されて貴重な時間を奪われた、精神的苦痛を受けた」という貞操権侵害の被害者である側面が強くあります。 不当な請求に対しては、安易に謝罪や支払いに応じるのではなく、法的な根拠に基づいた毅然とした対応が求められます。
4. マッチングアプリでの独身偽装・慰謝料請求でお悩みの方へ
マッチングアプリにおける独身偽装や、それに伴う予期せぬ慰謝料請求トラブルは、個人の主観的な認識やアプリ内のやり取りの証明など、法的な立証ハードルが複雑に絡み合う問題です。
「サブ写真の存在を理由に過失があると一方的に追及されている」「相手が既婚者と隠していたにもかかわらず、高額な支払いを要求されて困惑している」といった状況に直面した際は、感情的な対立を避け、客観的な証拠をもとに冷静に対処していく必要があります。不貞の過失有無や慰謝料減額の可能性について正確な見極めを行いたい場合は、早めに専門的な知識を持つ弁護士などの法的専門家に相談し、自身の権利を守るための適切なサポートを受けることを視野に入れましょう。