結婚相談所という、真剣に結婚を考える場を利用して活動していたにもかかわらず、相手が実は既婚者だったというトラブルは、被害者にとって人生を揺るがすほどの大きな衝撃と実害をもたらします。
特に、数か月あるいは数年にわたる活動費(入会金・月会費)に加え、晴れて成婚退会した際に支払う高額な成婚料まで騙し取られた状態であれば、その怒りと絶望感は計り知れません。
1. 結婚相談所における「既婚者発覚」の絶望と法的責任
結婚相談所は、厳格な本人確認書類(独身証明書や戸籍謄本など)の提出を義務付けていることが一般的ですが、中には偽造書類を用いるなどして巧妙に身分を隠し、入会・活動する悪質な既婚者が存在します。
このような相手と真面目に交際し、将来を誓い合って成婚料を支払った場合、法律上どのような問題が生じるのでしょうか。
貞操権侵害と不法行為責任
独身であると偽って交際関係を結び、性交渉などに及んだ場合、相手の性的な自己決定権や人格的利益を侵害したとして、民法709条の「不法行為」が成立します。これを一般に貞操権侵害と呼びます。
経済的損害(成婚料・会費等)の賠償
単なる交際関係にとどまらず、結婚相談所という有料のサービスを通じて「結婚を前提とした騙し討ち」に遭った場合、被害者が被った金銭的損失は明確な損害となります。 具体的には、以下の費用が法律上の損害賠償請求の対象となり得ます。
- 相手を信じ込まされたことによって支払った成婚料
- 結婚相談所の入会金および活動期間中の月会費
- デート費用や婚約指輪の購入費用など
2. 支払った「成婚料」は全額取り戻せるのか?
結婚相談所の成婚料は、数十万円にのぼる高額なケースも少なくありません。この費用を相手に請求するにあたっては、法的な因果関係を明確に主張する必要があります。
因果関係の証明
「もし相手が最初から既婚者であると知っていれば、結婚相談所に入会することも、成婚料を支払うこともなかった」という因果関係(不法行為と損害の間の因果関係)が認められます。 したがって、加害者である既婚者に対し、支払った成婚料全額を損害賠償として請求することは法的理論として十分に成り立ちます。
結婚相談所からの返金は受けられるか?
原則として、結婚相談所自体は本人確認書類の提出を受けるなど規約に則った運営を行っており、相談所側に故意・過失がない限り、相談所から成婚料の返金を受けることは困難なケースが多いです。 そのため、「結婚相談所に支払った成婚料等の全額」を、加害者である既婚者本人に対して損害賠償請求するのが一般的な法的解決のルートとなります。
3. 泣き寝入り厳禁!被害回復に向けた具体的なステップ
独身偽装交際の被害に遭った場合、感情的に連絡を取るだけでは、証拠を隠滅されたり、連絡を断絶されたりするリスクがあります。冷静かつ法的なアプローチで対応を進めることが重要です。
ステップ1:決定的な証拠の確保
法的な請求を有利に進めるため、以下の証拠を可能な限り集めましょう。
- 結婚相談所の契約書、規約、および成婚料・会費の領収書やクレジット決済の控え
- 相手が独身であると偽っていたやり取り(マッチングアプリのプロフィール画面、チャットアプリの履歴、SNS等)
- 既婚者であることを自認した発言の音声データやメッセージ
- 本物の配偶者や家族の存在を示す客観的な証拠
ステップ2:内容証明郵便による請求
証拠が揃ったら、弁護士名義で内容証明郵便を作成し、相手に対して「貞操権侵害に基づく慰謝料」および「結婚相談所の成婚料・活動費等の損害賠償金」の支払いを請求します。弁護士からの通知書を送ることで、相手にプレッシャーを与え、真剣な話し合いのテーブルにつかせることができます。
ステップ3:示談交渉または法的手続(訴訟)
相手が誠実に応じない場合や、理不尽な減額を求めてくる場合は、損害賠償請求訴訟(民事裁判)の提起を視野に入れ、裁判所において独身偽装の悪質性と経済的被害を立証し、裁判上の和解や判決による回収を目指します。
4. ダブルトラブル(配偶者からの逆・慰謝料請求)への警戒
既婚者と知らずに交際していた被害者にとって、もう一つの大きな恐怖が、「相手の配偶者から不貞慰謝料を請求される」というダブルトラブルです。
法律上、相手が「既婚者であることを知らなかった(過失もない)」場合、原則として配偶者に対する不貞慰謝料の支払義務は負いません。しかし、現実には相手の配偶者が事実を誤解し、怒りに任せてこちらの職場や自宅に連絡してきたり、高額な慰謝料を請求してきたりするケースが後を絶ちません。
このような状況において、自分自身が被害者であるにもかかわらず加害者扱いされる理不尽な事態を防ぐためにも、早い段階で専門家に相談することが不可欠です。
5. まとめ:既婚者による独身偽装の被害は法的手段で毅然とした対応を
結婚相談所という信頼を前提とした場所で、独身を偽られて成婚料まで支払わされた被害は、精神的苦痛と経済的損失の双方において極めて悪質な不法行為です。相手の身勝手な欺瞞によって奪われた時間や金銭を取り戻すためには、感情的な対立を避け、客観的な証拠に基づく法的アプローチが不可欠となります。
泣き寝入りすることなく、弁護士等の専門家の力を借りて適切な損害賠償請求や慰謝料請求を行い、正当な被害回復を目指しましょう。