ITエンジニア・プログラマーによる「デジタル偽装工作」の手口
マッチングアプリやSNSの普及に伴い、職業やステータスを偽った悪質な交際トラブルが増加しています。特に、IT企業に勤めるエンジニアやプログラマーといった専門知識を持つ人物の場合、一般人には見抜けない巧妙な情報隠蔽工作を行うケースが少なくありません。
彼らは単に「独身と嘘をつく」だけでなく、デジタル領域における高度な技術や知識を用いて、配偶者の存在を徹底的に隠蔽します。
よく見られる偽装工作の特徴
- 複数のSNSアカウントを使い分け、特定のプライベート用アカウントには家族の影を一切出さない
- 検索エンジンや過去のWeb上の足跡(キャッシュやアーカイブなど)を消去・管理する
- メッセージアプリにおいて、自動消去機能やサードパーティ製の秘匿性の高いツールを使用する
- 自宅の場所や実家、勤務先の情報を偽り、週末の連絡に制限を設ける
このような巧妙な手口により、被害に遭われた方は「まさか既婚者だとは思いもしなかった」という状況に追い込まれます。
貞操権侵害としての法的責任(民法709条)
結婚を希望している、あるいは独身であると偽って性交渉や親密な交際を迫る行為は、性的な自己決定権や人格的利益を侵害するものとして、民法709条の不法行為(貞操権侵害)に該当します。
ITスキルを駆使して計画的かつ組織的に既婚であることを隠していた場合、その悪質性は裁判実務においても高く評価される要素となります。単なる嘘による交際とは異なり、「欺くための周到な工作」が存在するため、精神的苦痛の慰謝料請求において有利に働く場合があります。
「ダブルトラブル」への法的防衛
既婚者であることを知らずに交際していた女性にとって、さらに深刻な問題となるのが、相手の配偶者から突然届く「不貞慰謝料請求の通知(内容証明郵便など)」です。これを法務業界では「ダブルトラブル」と呼びます。
ダブルトラブルの典型例
- 独身と信じ込まされて交際・性交渉を持っていた
- 相手の配偶者から「夫(妻)を奪った」として高額な慰謝料を請求される
- 騙されていた被害者であるにもかかわらず、加害者扱いされる精神的重圧を受ける
最高裁判所の判例および一般的な法理において、既婚者であることを知らず、かつ「知らなかったことについて過失(不注意)がない」場合には、配偶者に対する不貞慰謝料の支払義務は発生しません。
ITエンジニアによる高度な偽装工作が存在していた場合、「過失がなかった(騙されてもやむを得なかった)」という主張を法的かつ論理的に立証することが非常に重要となります。
デジタル証拠の保全と弁護士交渉のアプローチ
ITを駆使した既婚隠しに対抗するためには、感情的な反論ではなく、客観的な「デジタル証拠の保全」が不可欠です。
弁護士が介入するメリットと証拠保全の流れ
- マッチングアプリのプロフィール画面、やり取りのログ、位置情報の履歴などを法的観点から記録・保存する
- 相手男性に対する「独身と告げて交際を誘導した事実」に関する証拠を固める
- 配偶者からの不当な慰謝料請求に対し、貞操権侵害の被害者である実態を主張し、示談交渉や法的防御を行う
まとめ:ITエンジニアの既婚隠し・デジタル偽装にお悩みのときは
高度なIT知識やデジタルツールを用いた既婚隠しに直面した際、個人の力で相手の虚偽を暴き、法的な正当性を主張することは極めて困難です。アプリでのやり取りやSNSのログなど、消去される前に適切なデジタル証拠を確保し、貞操権侵害の慰謝料請求や予期せぬ配偶者からの慰謝料請求(ダブルトラブル)に備える必要があります。泣き寝入りせず、早い段階でITトラブルや男女問題に精通した弁護士へ相談し、法的根拠に基づいた適切な解決を目指しましょう。