独身と偽って交際・性交渉を行う「独身偽装交際」は、性的自己決定権や貞操権を侵害する不法行為(民法709条)に該当します。しかし、加害者の既婚者が責任逃れのために「あなたにも落ち度があった(過失相殺)」と主張してくるケースは少なくありません。
この記事では、相手から「気づけたはずだ」と過失を主張された場合の法的対応や反論のポイントについて詳しく解説します。
1. 独身偽装における「過失(落ち度)」とは何か
損害賠償請求において、被害者側にも不注意(過失)があった場合、賠償額が減額される「過失相殺」のルールが適用されることがあります(民法722条2項)。
独身偽装の文脈における過失とは、「通常の注意力を払っていれば、相手が既婚者であることに気づけたはずなのに、それを怠った」という状態を指します。
加害者がよく使う過失の主張パターン
- 「休日に会えなかったり連絡がつきにくかったりしたのだから、既婚者を疑うべきだった」
- 「家を教えてもらっていなかったのだから、おかしいと気づくはずだ」
- 「SNSを交換していなかったり、共通の知人がいなかったりした不自然さを放置していた」
相手はこれらの事情を盾に、「騙された側にも責任がある」と主張してきますが、巧妙に隠蔽工作を行っていた加害者側の責任を免責する理由にはなりません。
2. 嘘の理由を提示し「無過失」を立証するアプローチ
相手から過失を主張された場合、被害者側が「自分は騙されるだけの合理的な状況に置かれていた(=過失はない)」ことを反論・立証していく必要があります。
具体的な反論のポイントは以下の通りです。
連絡制限や密会傾向に対する巧妙な工作の指摘
相手が「土日は仕事や資格の勉強で忙しい」「平日の夜しか会えない」と説明していた場合、それが業務上の必然性やライフスタイルとして自然に聞こえるよう、巧妙に演出されていた事実を指摘します。
実家暮らしやプライベート非公開の正当化
「家族の介護をしている」「過去のトラウマでプライベートな詮索を嫌う」など、相手が巧妙に身元に関する追及をかわす口実を用意していた場合、誠実な交際相手としてそれを信じざるを得なかった事情を主張します。
メッセージ履歴やプレゼントなどの客観的証拠
LINEやメールのやり取りの中で、相手が「独身であること」を積極的にアピールしていた言葉や、将来の結婚を匂わせる発言の履歴を証拠として提示します。これにより、被害者が疑う契機を奪われていたことを客観的に裏付けます。
3. まとめ:独身偽装における過失主張への適切な法的対応
独身偽装や貞操権侵害のトラブルにおいて、相手が自己の責任を免れようと「気づけたはずだ」と過失を主張してくることは珍しくありません。しかし、相手の巧みな隠蔽工作や嘘を信じざるを得なかった客観的な事情を丁寧に立証できれば、不当な過失相殺を防ぎ、正当な慰謝料請求を行うことが可能です。
感情的な反論や個人間での交渉は言った言わないの平行線になりやすいため、LINEの履歴や交際の経緯を示す客観的証拠を整理し、必要に応じて法的な専門家のサポートを視野に入れながら冷静に対処していくことが重要です。