独身と偽って交際や性交渉を迫られた「独身偽装交際(貞操権侵害の問題)」において、SNSのやり取りは重要な証拠の一つとなります。しかし、「感情的になって自分の送信メッセージを削除してしまった」「機種変更の際にトーク履歴が消えてしまった」というご相談をいただくことは少なくありません。
1. 自分のLINEメッセージを消しても「相手側の画面」に残っている可能性
まず確認すべきなのは、LINEの「送信取消」機能を使ったのか、単にご自身の端末でトークルームを非表示・削除しただけなのかという点です。
もし「送信取消」を行ってご自身の画面からメッセージを消した場合でも、相手がすでにそのメッセージを確認しており、スマートフォンに通知が残っていたり、スクリーンショットを保存されていたりするケースがあります。
また、ご自身の端末から単にトーク履歴を削除した場合でも、相手側のトークルームにはそのままメッセージが残っていることが大半です。この場合、相手に協力してもらう、あるいは法的手段(弁護士会照会や証拠保全など)を検討する余地が生まれます。
2. LINE以外の周辺証拠で「独身偽装交際・貞操権侵害」を立証する方法
民法709条に基づく不法行為(貞操権侵害)の損害賠償請求を行うにあたっては、相手が「独身であると偽っていたこと」や「それによって肉体関係を持つに至ったこと」を証明する必要があります。
仮に自身のLINE送信履歴が一部欠損していたとしても、以下の周辺証拠を集めることで、十分に立証活動を進めることが可能です。
- 相手からの返信メッセージ
- デート時の写真や動画、位置情報(GPS履歴)
- クレジットカードや電子マネーの利用明細、ホテルや飲食店の領収書
- 手紙、メモ、プレゼントに添えられたカード
相手からの返信履歴を活用する
ご自身が送信した内容が消えていても、それに対する相手からの返信(例:「休日はいつも一人の部屋で過ごしているよ」「まだ独身だから結婚は急いでいないんだ」といった文面)が残っていれば、相手が既婚者であることを隠して交際していた強力な間接証拠となります。
クレジットカード明細やホテル等の記録
デートで利用した飲食店のレシートや、宿泊施設の利用明細、交通系ICカードの履歴などは、交際していた事実や密会していた事実を客観的に示す動かぬ証拠となります。これらはデジタルデータだけでなく、紙の控えとして手元に残っていることが多いため、丹念に探すことが重要です。
3. 既婚者からの不当なダブルトラブル(慰謝料請求)にも注意
独身偽装交際の被害に遭われた方の中には、後になって相手の配偶者から「不貞行為の慰謝料」を請求されるという、いわゆるダブルトラブルに巻き込まれるケースが少なくありません。
相手が独身だと信じ込まされていた場合(過失がない場合)、法的には不貞行為に基づく損害賠償責任(共同不法行為)を負わないのが原則です。しかし、相手の配偶者から理不尽な請求を受けた際にも、ご自身が「独身だと信じざるを得なかった状況」を立証することが求められます。
LINEの履歴だけでなく、相手とのやり取り全体を客観的に示す証拠の保全が、ご自身の身を守るための盾となります。
4. 独身偽装交際・貞操権侵害でお悩みの方へ
ご自身で「どのような証拠が法的に有効か」「消してしまったデータをどのように補完すべきか」を判断するのは容易ではありません。また、相手と直接連絡を取ることで証拠を隠滅されるリスクもあります。
LINE履歴の消失や貞操権侵害の立証でお困りの場合は、男女トラブルや慰謝料請求に精通した弁護士などの専門家に相談し、法的な観点から適切なサポートを受けることを検討してください。