Q:相手が「示談金を振り込んだ後に返還を求めてきた」場合の拒絶

【本記事の監修者】
弁護士 井上 正人(大阪弁護士会所属 / 登録番号:第43449号 / 夕陽ヶ丘法律事務所 代表弁護士)
※本記事は、貞操権侵害(独身偽装被害)における不法行為責任(民法709条)、裁判例の慰謝料算定基準、および相手の妻からの不貞請求防御実務に基づきわかりやすく解説しています。

Q 一度支払った示談金を、後になって相手が「返してほしい」と要求してきた場合、応じる義務はあるのか?
A 民法上の和解契約(民法696条)として有効に成立し、清算条項が含まれている場合、一度支払った示談金の返還義務はありません。相手の「やっぱり納得いかない」といった主観的な理由による返還請求は、法的に完全に拒絶することができます。

不倫問題や独身偽装交際において、一度は合意して示談金を支払ったにもかかわらず、後から相手方が「やっぱり納得がいかない」「お金を返してほしい」と返還を求めてくるケースがあります。

示談契約の法的な効力

示談とは、民法上の「和解」契約に該当します。当事者が互いに譲歩をして、その間に存在していた争いをやめることを約束することで成立するものです。

民法第696条(和解の効力)では、和解によって当事者がその権利を有することが確定したとみなされる旨が定められています。つまり、示談書を取り交わし、金銭の支払いまで完了している場合、その時点で紛争は「解決済み」として法的に確定しているのが原則です。

相手からの返還請求を拒絶できる理由

一度成立した示談契約の効力を覆すことは、法的には極めて困難です。以下の理由から、相手方の不当な返還請求を拒絶できる可能性が高いといえます。

  • 確定的効力:民法696条により、和解契約には争いを終了させる確定的な効力があります。
  • 合意の成立:双方の合意に基づいて支払いが完了している以上、契約は履行済みであり、取り消す正当な理由(錯誤や詐欺・強迫など)がない限り、返還義務は生じません。
  • 紛争の蒸し返し防止:法的な安定性を守るため、一度解決した事案を後から翻すことは原則として認められません。

返還請求を受けた際の対応手順

もし相手から返還を求められた場合、感情的に反応せず、以下の手順で冷静に対応することが重要です。

  1. 示談書の確認:手元にある示談書に、清算条項(「本件に関し、今後一切の債権債務がないことを確認する」といった条項)が含まれているか確認してください。
  2. 証拠の保全:示談の経緯、合意内容、送金記録などを整理・保存してください。
  3. 書面による拒絶:電話やSNSでの応対は避け、弁護士名義などで「示談は有効に成立しており、返還には応じない」旨を記した書面を送付することが有効です。
  4. 専門家への相談:相手が強硬な態度をとる場合は、さらなるトラブルを避けるため、早急に専門家へ介入を依頼してください。

まとめ

「一度払ったお金を取り戻したい」という相手の主張は、法的根拠がなければ単なる不当な要求に過ぎません。しかし、個人間でやり取りを続けていると、思わぬ言質を取られたり、精神的に追い詰められたりするリスクがあります。示談後の不当な返還請求でお困りの際は、法的な盾となる正確な文書対応や交渉を専門家に任せることで、平穏な日常を確実に守ることができます。

弁護士 井上正人

この記事の監修

弁護士 井上 正人
(いのうえ まさと)

大阪弁護士会所属(登録番号:43449)
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

相続や遺産分割、借金問題、既婚者との男女トラブルなど、日常の不測の事態に直面した皆様の心理的なご負担を少しでも和らげ、円満な解決を導くためのサポートを徹底して行っています。どんな小さなお悩みでも、まずは当事務所の事務スタッフがLINEのチャットにて丁寧にお話をお伺いいたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。

TOP