交際相手から「性病など持っていない」と虚偽の説明を受け、結果として性病に感染させられた場合、相手に対して不法行為に基づく損害賠償請求を検討される方は少なくありません。しかし、多くのケースで相手は「自分から感染したとは限らない」「自分は無症状だった」と責任を否定します。
感染の事実を立証するための3つの柱
法的責任を追及するためには、相手の過失と損害の因果関係を証明しなければなりません。実務上、以下の要素を組み合わせて立証を試みます。
- 医療機関での菌種特定
医師の診断書や検査結果に基づき、感染した菌の種類や型を特定します。相手から検出された菌と同一であることは、因果関係を証明する強力な証拠となります。 - 潜伏期間の医学的データ
性病にはそれぞれ特有の潜伏期間があります。感染が発覚した時期から逆算し、相手と性交渉を持った時期と医学的な潜伏期間が合致していることを専門家の意見書等で補強します。 - 相手以外の交際不在の証言
対象期間中に、相手以外との性交渉が一切なかったことを主張します。ご自身の過去の検査履歴や、他の交際相手の有無を明確にすることで、感染源が特定相手に絞られることを証明します。
「性病の嘘」がもたらす法的リスク
相手が「自分は性病ではない」と嘘をついて性交渉に及んだ場合、これは単なる感染の問題にとどまらず、貞操権侵害や重大な注意義務違反とみなされる可能性があります。
もし相手が既婚者であった場合、不貞行為の慰謝料請求に加え、健康被害に対する損害賠償請求が併せて発生します。特に、相手が自身の感染を知りながら隠蔽していた場合には、悪質性が高いと判断され、慰謝料額にも影響を与えることがあります。
証拠集めの注意点
性病の感染被害を立証する際、感情的なやり取りだけで解決しようとすると、相手に証拠を隠滅されたり、言質を覆されたりするリスクがあります。
- 相手とのやり取りは、メールやSNSのスクリーンショットとして必ず保存してください。
- 医療機関を受診する際は、医師に「いつから症状が出たか」「どのような経緯で感染の可能性があるか」を正確に伝え、カルテに記録を残してもらうことが重要です。
まとめ
相手の虚偽の申告によって性病に感染した場合、感情論にとどまらず、客観的な医学的データや通信の記録といった法的根拠に基づく立証が不可欠です。感染というデリケートな問題であるからこそ、確実な証拠を揃えて早期に対策を講じることが、自身の権利と平穏を取り戻すための重要な一歩となります。