「結婚しよう」という言葉を信じ、相手の借金を代わりに返済した。しかし、後になって相手が既婚者であることが発覚し、自分は騙されて利用されていた――。
このような悪質な独身偽装交際(貞操権侵害)と、それに伴う金銭トラブルに直面される方は少なくありません。
本記事では、嘘の結婚を前提として消費者金融の借金を肩代わりさせられた場合の法的解決アプローチについて、法的観点から詳しく解説します。
1. 独身偽装と借金肩代わりの悪質な手口
マッチングアプリや職場、友人関係などをを通じて出会った人物が、実際には配偶者がいるにもかかわらず「独身である」と偽り、親密な関係になるケースが後を絶ちません。
さらに悪質なケースでは、交際が深まった段階で次のような嘘をつき、金銭をだまし取ります。
- 「結婚式や新居の資金が必要だから、一時的に貸してほしい」
- 「過去の消費者金融の借金を一本化して綺麗にしたいが、自分の名義では審査に通らない。結婚する仲なのだから助けてほしい」
- 「仕事のトラブルで今すぐお金を払わないと会社をクビになる。そうなると結婚生活が始められない」
被害者の方は、「愛する人のため」「未来の結婚生活を守るため」という善意や期待から、自分の貯金を切り崩したり、場合によってはご自身が借入をしてまで相手の負債を肩代わりしてしまいます。しかし、これらはすべて相手の欺瞞(ぎまん)に基づくものであり、法的に見ても極めて悪質な行為です。
2. 騙されて支払った借金を取り戻すための法的手段
相手が独身であると偽り、結婚をエサにして金銭を給付させた場合、民法上の制度を利用して返金を求めることができます。主な法的根拠は以下の2点です。
不当利得返還請求(民法703条)
法律上の原因なく他人の財産によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者は、その利益を返還する義務を負います。 「結婚する」という前提(法律上の目的)があったからこそお金を渡したのであり、その前提が相手の嘘(既婚者であること)によって根本から覆された以上、相手が受け取ったお金は「法律上の原因がない利得」となります。
不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)
故意または過失によって他人の権利や法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負います。 最高裁判所の判例においても、独身と偽って性交渉や交際を継続する行為は、性的な自己決定権や貞操権を侵害する不法行為にあたるとされています。借金の肩代わりによって被った経済的損害も、この不法行為と因果関係のある損害として賠償請求の対象に含まれます。
3. 泣き寝入りしないための重要ポイントと証拠の集め方
「自分が勝手に払ったのだから証拠がないのでは」「相手と連絡が取れなくなった」と不安になられる方も多いですが、証拠を整理・保全することで請求の可能性を高めることができます。
確保すべき重要な証拠の例:
- 金銭のやり取りを示す証拠:消費者金融への振込明細書、ATMの利用明細、自身のクレジットカードの利用履歴、銀行の送金記録
- 借金を肩代わりさせられた経緯を示す証拠:LINEやメールのやり取り(「結婚するために返済を手伝ってほしい」という旨が記載されたメッセージ)
- 独身偽装の証拠:独身と称していた発言の記録、マッチングアプリのプロフィール画面(保存していれば)、婚約指輪のやり取りなど
これらの証拠を揃えることで、相手に対して法的なプレッシャーをかけることが可能になります。
4. 既婚者トラブルにおける「ダブルトラブル」への注意
こうした事案では、被害者であるご自身が、逆に「不貞行為の相手方」として相手の配偶者から高額な慰謝料請求を受けるという、いわゆるダブルトラブル(二次被害)に発展する危険性があります。
「既婚者とは知らなかった(過失がない)」場合、配偶者からの慰謝料請求に対して法的責任を負わずに済むケースが一般的です。しかし、相手の男性(女性)は自身の不貞隠しや借金逃れのために、あなたを言いくるめようとしたり、責任を転嫁してきたりすることが少なくありません。
そのため、ご自身一人で相手やその配偶者と直接交渉するのは非常にリスクが高くなります。
5. まとめ:泣き寝入りせず弁護士等の専門家への相談を
「結婚を前提に利用されたうえ、借金まで背負わされた」という被害は、個人の努力だけで解決しようとすると精神的にも大きな負担がかかります。
不当利得返還請求や不法行為に基づく損害賠償請求を効果的に進め、さらに配偶者からの理不尽な請求を防ぐためには、早い段階で男女トラブルや金銭回収に強い弁護士などの専門家に相談し、適切な法的アプローチをとることが問題解決への確実な第一歩となります。