独身偽装交際と貞操権侵害:失われた時間は取り戻せるか
独身であると嘘をつかれ、結婚を前提に交際を重ねた末に、相手が既婚者であったことが発覚する――。このような独身偽装交際の被害に遭う方が後を絶ちません。特に結婚適齢期とされる30代前半の貴重な数年間を騙されて過ごした女性にとって、その精神的ショックと喪失感は計り知れないものがあります。
法律上、婚姻適齢期における時間や婚期を奪われたこと、そして意に反して不貞関係の当事者にさせられたことなどは、貞操権侵害や不法行為(民法709条)として慰謝料請求の対象となります。
理不尽なトラブルに直面した方々からは、日々多くの深刻なご相談が寄せられています。今回は、弁護士の力を借りて人生の再スタートを切った実際の解決モデルをもとに、法的なアプローチと解決までのプロセスを解説します。
【解決モデル】30代前半の女性が直面した独身偽装の悲劇
ここでは、実際の事案をベースにした、婚期喪失 解決モデルをご紹介します。
相談者であるA子さん(30代前半・会社員)は、マッチングアプリで知り合った男性(B氏・30代後半)と交際をスタートさせました。B氏は「独身で、将来は家庭を持って落ち着きたい」と語り、A子さんも結婚を強く意識するようになりました。
しかし、交際から約2年が経過した頃、B氏の態度の不自然さから不審に思ったA子さんが調査を行ったところ、B氏には妻子がいることが発覚しました。問い詰められたB氏は既婚者であることを認め、「妻とは別居中で離婚協議中だ」と言い逃れを図ったものの、実際には円満な家庭生活を送っていたのです。
A子さんは激しいショックと怒りを受け、心身の不調をきたして法律相談の門を叩きました。
相談から弁護士介入までの流れ
A子さんは当初、「自分が不倫相手になってしまったのではないか」「相手の奥さんから慰謝料を請求されるのではないか」という不安(ダブルトラブルの恐怖)に怯えていました。
- A子さんはB氏から「独身である」と積極的に欺かれており、既婚者であることを知らなかった(過失もない)。
- したがって、A子さんはB氏の妻に対して不貞慰謝料を支払う義務はないこと。
- 逆に、B氏の行為はA子さんの貞操権および結婚生活への期待権を著しく侵害する違法なものであること。
この法的整理に基づき、A子さんはB氏に対して慰謝料請求を行うことを決意しました。
弁護士交渉による解決:250万円の獲得と和解成立
弁護士が受任通知を発送した当初、B氏は「金銭を支払う余裕はない」「遊びだったわけではない」と減額や引き延ばしを図りました。しかし、以下の点を強固に主張しました。
- 30代前半という人生設計において極めて重要な期間を、欺瞞によって奪った罪の重さ
- 妊娠や出産のリミットも意識せざるを得ない状況下での精神的苦痛の大きさ
- 裁判に移行した場合、より高額な賠償命令や社会的信用失墜のリスクがあること
交渉の結果、最終的にB氏側が一括で250万円の慰謝料を支払うことで和解が成立しました。また、今後一切の接触を断つ旨の誓約書も取り交わし、A子さんは精神的な平穏と、次の人生へ進むための資金を手に入れることができました。
独身偽装・貞操権侵害で泣き寝入りしないためのポイント
もしあなたが同様の被害に遭われている場合、冷静に証拠を収集し、法的手段を検討することが重要です。
1. 証拠の確保が最優先
交際の事実、独身であると偽っていたやり取り(メッセージやメール、婚約指輪のやり取り、両親への紹介の有無など)の証拠を保存してください。相手が「独身だと偽っていない」と主張を変えるリスクを防ぐためです。
2. 配偶者からの請求(ダブルトラブル)への備え
既婚者と知らずに交際していた場合、原則として相手の配偶者に対して慰謝料を支払う責任はありません。ただし、既婚者であると薄々気づきながら放置していた場合は責任を問われるリスクがあるため、早い段階で専門家に相談し、自身の立場を明確にすることが不可欠です。
3. 早めの専門家への相談
一人で相手と交渉しようとすると、丸め込まれたり、さらなる精神的ストレスを抱え込んだりする原因になります。代理人弁護士を立てることで、相手と直接連絡を取る必要がなくなり、精神的な負担を大幅に軽減できます。
人生の再スタートを切るために:適切な法的アプローチの重要性
失われた時間や傷ついた心を完全に元通りにすることは難しいかもしれません。しかし、適切な法的アプローチを行うことで、相手に責任を認めさせ、適正な賠償金を得ることは可能です。それは単なる金銭の獲得にとどまらず、ご自身の尊厳を取り戻し、新たな未来へ踏み出すための大きな力となります。
独身偽装や貞操権侵害、不当な慰謝料請求でお悩みの際は、一人で抱え込まずに、専門の弁護士へお気軽にご相談ください。